初めてアナーキーシャツに出会った方へ。:ヴィヴィアンとマルコムが仕掛けた、表現としての「服」。
アナーキーシャツとは何か
ボクは、t.n.A.f.t.というブランドで「アナーキーシャツ」を制作しています。これまで、このシャツを愛し、コレクションする方々には説明など不要だと考え、あえて詳しく語ることはありませんでした。しかし、初めてこのシャツに出会う方のために、その背景を少し紐解いてみたいと思います。
アナーキーシャツとは、1976年にヴィヴィアン・ウエストウッド、マルコム・マクラーレン、ジョーダン・ムーニーらが、セックス・ピストルズの楽曲「Anarchy in the UK」のプロモーションのために制作したシャツのことです。ベースとなったのは、当時"Wemblex"社で作られていたデッドストックのラウンドカラーシャツでした。

凝縮されたディテールと象徴
その作り込みは凄まじく、すべてがハンドメイドで仕上げられた一点ものです。
染色とブリーチ:ナチスの強制収容所の服に見立て、主にグレーなどに染色。その上から縦縞模様のブリーチラインが施されています。
ペイントとステンシル:黒・赤・青などの鮮烈なペイントに加え、「ONLY ANARCHYSTS ARE PRITTY」といった剥き出しの言葉がステンシルプリントされています。
パッチの象徴:カール・マルクスの肖像パッチ、上下逆さまに付けられたナチスのイーグルワッペン、そして「パリの5月革命」などの落書きから引用された手書きのスローガンパッチが縫い付けられています。
マルコム・マクラーレンは後年のインタビューで「3〜4着しか作れなかった」と回想していますが、実際には少なくとも10〜15着ほどは存在していたのではないかとボクは考えています。とはいえ、たった10〜15着。それほどまでに手間暇がかかる、熱量の高い一着なのです。

t.n.A.f.t.による再構築
t.n.A.f.t.では、当時のヴィンテージシャツの画像から詳細な寸法を割り出し、独自にパターンを起こすところからスタートしています。
シャツの仕立て:腕の立つプロの縫製士に依頼し、ベースとなるシャツを1〜3ヶ月かけて作り上げます。(スケジュールが詰まっている時は半年近くかかる場合もあります。)
手作業による魂入れ:シャツが上がってきたら、そこからボクの手作業が始まります。仕様にもよりますが、10〜14日間をかけて染色、ブリーチ、パッチの制作と縫い付けなどを行います。
ヴィヴィアンやマルコムたちが作り上げた伝説的なディテールを忠実に踏襲しつつ、t.n.A.f.t.としてのエッセンスを宿していく。これは単なる衣服ではなく、後世に伝えるべき「服飾文化」のひとつだと自負しています。

二度と同じものは作れない、文字通り「唯一無二」の存在。
このシャツの深淵に触れるきっかけとなれば幸いです。
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