第2回 これだけ!行列の演算法則 (線形代数)
前回は行列とその計算方法についておさらいしました。
今回は、4つの特殊な行列を学んだうえで、行列計算をする際の法則を11個(難しくないよ)だけ身につけましょう。
1.特殊な行列たち
・正方行列
その名の通り「正方形の行列」です。行数と列数が等しい、つまり$${n\times n}$$の行列です。例として$${3\times 3}$$(3次の)行列を示します。

・対角行列
$${n\times n}$$の行列である正方行列の内、対角成分(左上から右下にかけての対角線)以外の要素がすべてゼロである行列を対角行列といいます。例えば以下の行列は3次の対角行列です。

・単位行列
単位行列は対角成分がすべて1で、それ以外の要素がすべて0の対角行列です。単位行列は$${\bold I}$$で表されます。例えば以下は3次の単位行列です。

・ゼロ行列
ゼロ行列はすべての要素がゼロである行列です。ゼロ行列は アルファベットで$${\bold O}$$または数字の$${\bold 0}$$などで表されます。例えば以下は3次のゼロ行列です。

これらの行列は工学分野ではまれによく出てくるので、まずはこの4つだけでも覚えておきましょう。
2.足し算にまつわる法則
行列の和において以下の法則が成り立ちます。
①$${\bold A+\bold B=\bold B+\bold A}$$
②$${(\bold A+\bold B)+\bold C=\bold A+(\bold B+\bold C)}$$
③$${\bold A+\bold O=\bold O+\bold A=\bold A}$$
この辺は説明するまでもないですかね?行列の和はスカラー(実数)の和と同じように、つまり$${1+2=2+1=3}$$と同じようなノリで計算できるわけですね。
3.スカラー×行列の掛け算の法則
前の節でフライングしましたが、スカラーとはベクトルと対比される概念で、ベクトルが大きさと向きを持つ量なのに対し、スカラーは向きの情報を持たず、大きさのみを持つ量です。$${1}$$とか$${96.25}$$のような実数そのものがスカラーです。そんなスカラーと行列の積はどうなるでしょうか?
実数$${\alpha}$$と$${m\times n}$$の行列$${A}$$の積は以下のようになります。

各要素に$${\alpha}$$を掛けるだけですね。例として、次のような行列とスカラーを掛けると、

それらの積は下のように計算できます。

このスカラー×行列について次の法則が成り立ちます。
④$${\alpha (\beta\bold A)=(\alpha \beta)\bold A}$$
⑤$${(\alpha+\beta)\bold A=\alpha\bold A +\beta\bold A}$$
⑥$${\alpha (\bold A+\bold B)=\alpha\bold A+\alpha\bold B}$$
スカラーは分配したり結合したりできるということですね。
4.行列×行列の掛け算の法則
掛け算が可能な行列$${\bold A、\bold B、\bold C}$$について、以下の法則が成り立ちます。
⑦$${\bold A \bold B \ne \bold B\bold A}$$
これは前回解説しましたね。不安な人は前回の記事に戻って確認しましょう。掛け算の不可逆性についてはこちら↓
続いて、行列同士の掛け算でも分配法則や結合法則を用いることができます。
⑧$${(\bold A+\bold B)\bold C=\bold A\bold C+\bold B\bold C}$$
⑨$${(\bold A\bold B)\bold C=\bold A(\bold B\bold C)=\bold A\bold B\bold C }$$
例題として、以下の行列について2通りの方法で$${(\bold A\bold B)\bold C}$$を解いて、答えが一緒になることを確認しましょう。

答えは次の行列になります。あってましたか?

最後に単位行列とゼロ行列の性質について示した法則です。ついでに覚えておきましょう。
⑩$${\bold I \bold A=\bold A \bold I=\bold A}$$
⑪$${\bold O \bold A=\bold A \bold O=\bold O}$$
まとめ
ここでは覚えておくべき特殊な行列と行列の四則演算にまつわる法則について解説しました。
私のブログで勉強するのは大変ありがたいですしうれしいですが、このブログは理工系として必要最低限の会話ができる知識をお伝えするのみなので、書籍と合わせて勉強することでより効率的にそしてさらに深く勉強が進むかと思います。まずこちらの書籍を手に取ってみて、並行して学んでみるのもいいかもしれません。
次回は逆行列とは何かについて学んでいきましょう。
次はこちら↓
