【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ 多さわこ(おおのさわこ)編 ②
こちらの記事は、仲良くさせてもらっているうりもさんの企画に乗っかって書いています。
▼ プロローグはこちら。
▼ スピンオフ さわこ編 前回の第①話はこちら。
多さわこ ・ ZERO
多さわこの両親は、関西出身で北海道に移住し、その後、さわこを授かった。
多さわこの両親は、オカルトや陰謀論を信じる変わった両親で近所では有名だったので、あの家に近付いてはならないと近所の子供たちは親からの指導を受けて育っていた。要するに、あの家に近付いてはいけないよ、と言われていた。
そういう事もあって、多さわこが両親から受けていた特殊な教育について、周囲から知られる事はなく、さわこ自身も両親から教わる事だけが常識となっていた。
どうやら最近、プレアデス星人という宇宙人が地球にやってきて地球人に溶けこんで暮らしているらしいという事や、ネス湖という所にはネッシーという恐竜がいる事、源義経は海外に逃れて大帝国の皇帝になった事や、織田信長は本能寺で死んでいなかったり、明智光秀も江戸時代まで生きていて身分の高い高僧になった事や、本能寺の変の黒幕が豊臣秀吉だったり、徳川家康は実は途中から影武者が入れ替わっていたとか、そんな話を父親から教えられていた。
母親からは料理を教えてもらった。
隠し味にトリカブトを入れるとおいしいとか、この野草はおいしいのよ、とか生きていく上で必要な知識を学んでいた。
さわこが小学3年生になるまでの間、毎日時間があれば昼夜問わずに両親と遊んだ事は今でもいい思い出だ。
さわこが生まれたその日に植えられたという庭の生垣を毎日飛び越える遊びや、自分の身長の倍以上もある長い布を頭に巻いて、その布が地面につかないように走る遊び、濡れた和紙が敷かれた道を和紙を破らずに走る遊びを、毎日のように両親と楽しんでいた。
やがて、そんな遊びを周りの友達は誰もしていない事に気が付いて、小学4年生になる事には少し恥ずかしくなって、そういう遊びをすることはなくなったが、人並外れた運動神経を手に入れていた。
また、両親と一緒に瞑想したり、両親の水鉄砲を避ける遊びや的に向かって石を投げる遊びもしていたので、反射神経もよく物を投げると百発百中だった。
小学3年生までは活発だったさわこだったが、あまりに活発で身体機能が秀でていた為、近所の家々の屋根の上を走ったり校舎の壁をよじ登ったりするものだから、近所や小学校で問題になり、その度に両親が呼び出されて平謝りしているのを見て、両親のために大人しくなろう、普通になろう、と心に誓うようになった。ちょうど特殊な遊びをしなくなった小学4年生の頃、時期を同じくしてさわこは大人しくなり、物静かで目立たない存在になった。
両親は変な所もあったが明るくていつもさわこを褒めてくれた。
さわこが普通になろうとしてからも、もっと怒られていいんだよ、お父さんやおかあさんに迷惑かけていいんだよ、と言ってくれたが、そう言われると余計にさわこは、もっと普通になろう、もっと目立たないようになろう、と思うようになったので、さわこは普通という存在を真剣に研究した。
さわこの視力が低下してきたのはさわこが小学5年生の頃だった。
急激な視力の低下で、さわこは大きなビン底の黒縁メガネをかけるようになった。両親は、もっと可愛らしい眼鏡を買おうとしたが、さわこはビン底眼鏡が一番気に入っていた。目線も隠せるし何より目立ちそうにない。
テレビのちびまるこちゃんに出てくるたまちゃんみたいで嬉しかった。
ビン底の黒縁メガネをするようになって、さわこは髪型も三つ編みのおさげにして、たまちゃんに寄せた。
たまちゃんになったさわこは究極の普通を目指していたが、クラスメイトはそういうさわこを面白がってイジメるようになった。
イジメのきっかけはよく覚えていないが、それまで仲良くしていて一生の友達だよ、といつも言ってくれていた女の子からも無視をされるようになり、もしかしたら初恋だったかもしれない男の子がイジメられていたのを庇ったら何故かその男の子からもイジメられるようになってからは、人とは普通以上に関わらない方が幸せなのだと実感した。
誰からもその他大勢の普通の存在であることが1番楽な事にさわこは気がついて、それ以降は目立たないよう自己主張をしないように特に意識した。
イジメがエスカレートしてもさわこは心を平静にして何事も右から左へ受け流していた。両親と一緒にした瞑想や遊びが功を奏して、様々な精神的苦痛や暴力行為を全て受け流すことができたが、普通という存在になろうとしたあまり、さわこは自分の事もよくわからなくなってしまっていた。
さわこが自分の感情を見失ってしまうのに時間はかからなかった。
中学生になる頃には、感情がない状態が普通になっていた。
こうしてさわこは無色透明になった。
そんなさわこの様子をみて、両親はさわこが自分の色を取り戻せるようにと、ご先祖様の話をしてくれた事がった。
多という姓は、神武天皇の皇子の一人である神八井耳命の末裔なんだぞ、と何度も何度も教えてくれたが、そんな昔の話をされてもさわこにはよくわからなかった。
ご先祖様が立派だったとして、どうして自分の価値が変わるのだろう、さわこは自分にそんな価値があるとはどうしても思えなかった。
自分は特別ではなく、普通の存在なのだから。
その方がみんな幸せなのだから。
中学校は小学校とは別の地域だったので、さわこを知る同級生はほとんどいなかったので、さわこは平和な学生生活を手に入れていた。
クラスメイトも何も言わない何も主張しない、ただそこに居るだけのさわこに対してどう接していいのかわからずに戸惑っていたが、次第にそれが普通になっていき、誰もさわこと関わろうとはしなくなった。
さわこにはそれが心地よかった。
やっと目立たず注目もされず、普通になれた、と心から思えて嬉しかった。
クラスの背景の一部になりきり、体育の球技の時は体調不良を理由に見学した。どうも球技をすると目立ってしまうので、それが耐えられなかった。
走ったり跳んだりする運動は、自分でいくらでも加減ができるので運動神経がなく見えるレベルまで調整できるのだが、どうも物を投げたり受けたりする時は下手な加減ができないようで、これにはさわこ本人も困っていた。
中学1年生の冬休みが終わろうとしていた頃。突如、両親が失踪した。
さわこが学校から帰ると、食卓に置手紙がおいてあり、探さないでください、と書かれていた。
警察が来ていろいろ調べて失踪という事になったが、さわこは両親が書いたとされる置手紙が、両親の筆跡ではない事に気が付いていた。
両親の筆跡ではない事を警察に伝えたが、警察は鑑定の結果、両親の筆跡と断定した。
確かに筆跡はかなり似せてあったので同じように見えるのは仕方ないと思ったのだが、両親はさわこに対して手紙を書くときに、必ず文末にあるマークを書いてくれていた。
これは合言葉みたいなものだよ。
大事な暗号だから、誰にも教えたらダメだよ。
両親の口癖だった。
ニコニコマークの後ろに句読点の○。
😊。
いつものマークが置手紙には書かれてなかった。
でも、それは秘密の暗号だから警察には言えなかった。
両親が居なくなってしばらくして、さわこは自分の机の引き出しの二重底になっている部分の更に奥に巧妙に隠されていた引き出しの存在に気が付いた。
いつも二重底には、ビン底黒縁メガネの予備を忍ばせていて、たまに気分転換で交換していたのだが、久しぶりに気分を変えようと二重底を開くと違和感を感じて良く調べると引き出しの奥の部分に更に引き出しが隠されていたのだ。その引き出しの中には手紙と封筒が入っていた。
『さわこちゃん、お父さんとお母さんは心配しないで』
『安全のため、さわこちゃんは田梨木高校に入学してください』
『田梨木高校は、おばあちゃんの家が近いので頼りなさい』
『さわこちゃん、あなたなら出来るわ😊。』『父より・母より』
『なお、この手紙は5秒後に自動的に消滅する』
最後の一文は、母親が大好きな映画の冒頭で出てくる決め言葉だった。
読んだらすぐに燃やしなさい、という意味なんだろう。
封筒には現金が入っていた。
引っ越しに必要な資金を両親が用意してくれたようだ。
さわこは手紙をすぐに居間の火鉢にくべて消去した。
せっかく眼鏡を替えたのに気持ちが揺れてしまった。
火鉢の中でゆっくりと溶けていく両親の残骸を眺めながら、明日おばあちゃんに電話をしよう、転校の手続きはどうしたらいいのだろうか・・・などとさわこは考えていた。
翌日・・・。
さわこは学校を欠席しておばあちゃんに電話をした。
久しぶりのおばあちゃんは元気そうだった。
毎年夏休みに家族みんなでおばあちゃんの家、いわゆる実家に行くのが恒例行事だったが、まさかこんな事になるとは思ってもいなかった。
中学校にも連絡して事情を説明し、転校の手続きをした。
親類の所に行く事になった、と伝えたら話は早かった。
両親が失踪している事は周知の事実だったからだろう。
親戚は何人かいたのだが、誰もさわこを引き取ろうとはしてくれなかった。
おばあちゃんは両親が失踪した事は知らなかったようで驚いていたが、何故すぐにおばあちゃんに電話くれなかったのかと怒られてしまった。
そんな事を言われたって、さわこは一人で暮らしていくものだと思っていたのだから、だれかを頼ろうという発想はそもそもなかったので困惑した。
とにかくすぐに来なさい、いやおばあちゃんが飛行機に乗って迎えに行く、と電話の向こうで興奮気味に話すので面倒になったさわこは、明日おばあちゃんの家に行くと伝えて電話を切った。
転居や転校に必要な書類などはおばあちゃんの家に郵送してもらえればいいだろう。
翌朝さわこは、最小限の着替えと予備のビン底黒縁メガネを5本、お気に入りの藍色に白抜きの唐草模様の風呂敷に包んで空港に向かった。
ブレーカーも落としたし水落としもした。
戸締りも完璧だったし、庭や自宅内には必要最低限の罠を設置した。
万が一侵入してきた者は、もれなく両足を失うだろう。
また、これは両親が設計したのでさわこは知らないのだが、自宅内のドアはある一定の法則で開閉しないと家全体が瞬時に焼失するように設計されていた。
さわこは北海道を去る前に大好きな五稜郭公園へ向かった。
幕末最後の戦場となったお城という話だが、どうみてもお城に見えない所が面白かったし、上から見ると五芒星をかたどったように見える造形が美しくて、五稜郭公園を見下ろせる五稜郭タワーから眺める景色が大好きだった。
この地で土方歳三という新選組の生き残りが戦没したと言われているが、さわこは知っている。
土方歳三はその後も生き残っていて、アイヌが隠した金塊の争奪戦に加わり北海道に独立国家を作ろうとしたらしい。
そんな事を思い出しながら五稜郭を見納めて、さわこは函館空港へ向かった。
空港では、親切な職員さんがさわこの代わりに全部の手続きを済ませてくれたので、さわこは待っているだけでよかったので楽だった。
いつもは両親がしてくれていたので、職員さんの姿が両親と重なった。
あんな鉄の塊が空を飛ぶなんて信じられなかったので、飛行機の離発着は何度見ていても飽きなかった。
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おばあちゃんの家の最寄りの駅につくと、おばあちゃんが待っていてくれた。
心配かけるんじゃないよ、とまた怒られた。
さわこはどんな顔をしていいのかわからなかったので下を向いた。
おばあちゃんに手を引かれながら実家につくと、さわこの部屋が用意されていた。
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新しい中学校で新学期を迎えた。
新しい学校でもさわこは無色透明だった。
おばあちゃんと暮らしていても無色透明だった。
必要最低限の反応しか返さないさわこだったが、おばあちゃんは普通に接してくれた。
優しいおばあちゃんに迷惑をかけないために、さわこは普通でいる事を改めて誓った。
中学3年生の夏、おばあちゃんの様子がおかしくなってきた。
軽い物忘れはそれまでもあったのだが、買い物にいくと玉ねぎばかり買ってくるようになった。
さわこは、それが認知症の症状だと気が付いていた。
実家の隣にもお婆さんが住んでいて認知症だった。
時々学校から帰宅するさわこに隣のお婆さんが呼びかけてくるようになって、関わるようになったのだが、どうやら制服を着ているさわこを娘さんと間違って話しかけてくれていたようだ。
とりあえず当たり障りない対応をしていたさわこだったが、それがよかったのか毎日のように隣のお婆さんをお喋りするようになった。
娘さんは少し離れた隣町に住んでいて、パートを終えてから介護しに通ってきていたので、さわこともすぐに顔見知りになった。
大変そうだったが、お婆さんの事を大切にしているようだった。
ほんとうにたまにの事だが、お婆さんの認知症の言動で腹を立てて大声で怒鳴る娘さんの声が聞こえる事もあったが、怒鳴ったあとに娘さんはいつも泣いていた。そんな娘さんの背中をお婆さんはよしよし、と言ってさすっていた。
さわこは、そんなお隣さんの介護のお手伝いをしていたので、おばあちゃんの異変にも気が付いたし、特に驚く事もなく普通に接する事ができた。
年をとればみんないろんな事を忘れていくのだろう。
隣のお婆さんも、おばあちゃんも、いろいろな事を忘れてしまっていくのだが、出来る事もいっぱいあった。
買い物だって玉ねぎが沢山残っている事を教えてあげると、他の野菜を買ってきてくれるし、料理も何をつくるか決めてあげれば手際よく作ってくれる、時々作っている間に何をつくっているのか忘れてしまうけれど、そんな時はまた教えてあげればいいだけで何も困った事はないのだ。
そんなおばあちゃんやお隣さんとの生活は楽しかった。
おばあちゃんは物忘れをしてしまうけれど、悪意のないやり取りが心地よかった。
ある日、おばあちゃんの娘さんがやってきた。
父親のお姉さんだ。
伯母は、さわこが同居している事は知っていたが、あまり快く思っていないようだったのだが、おばあちゃんが認知症になっている事を知って、さわこが同居している事を好都合と思ったようで、おばあちゃんのお世話をよろしくね、と言って帰っていった。
隣のお婆さんの娘さんとは違うのだな、とさわこは思った。
伯母は2~3か月に1回くらいのペースで様子を見に来るようになった。
それまでは2~3年に一度くらいだったので、心配して様子を見に来ているのだろうと思った。
中学3年生の冬休みの頃には、おばあちゃんの認知症はかなり進行していて、トイレの場所がわからなくなってしまっていたが、ちゃんとトイレの場所を教えてあげれば問題なかった。
ある日伯母さんが来ていたので、さわこが買い物に行っている間に、おばあちゃんがトイレの場所がわからずに廊下でおしっこをしてしまい、それを見た伯母さんは仰天してしまって、もう老人ホームに入れるしかない、と言って出ていってしまった。
さわこは何のことは分からなかったが、すぐに大変な事になったとわかった。
すぐに認定調査員という人が来て、おばあちゃんに色々質問したり観察したりして帰っていった。
さわこにも質問していたが、同席した伯母さんの迫力に負けてさわこの言っている事はほとんど聞いてもらえなかった。
二か月後、介護保険証が届いて要介護3、という判定だった。
その頃、おばあちゃんの事は伯母さんが主導的立場で関わるようになっていた。ヘルパーが来る時間は、さわこは家から追い出されて図書館で過ごすようになった。高校進学のための勉強もしたかったので、さわこはそれでよかったのだが、後で後悔した。
翌月、老人ホームに空きが出たという事で入所が決まった。
おばあちゃんは嫌がっていたが、もう決まった事だった。
いつでも帰ってこれるから、と伯母さんに言われてしぶしぶ同意していたが、いつでも帰ってこれそうにない事はさわこは分かっていた。
おばあちゃんが可哀そうだった。
ちゃんとおばあちゃんの出来ないところを手伝ってあげればまだ暮らせるのに。おじいちゃんや子供たちとの想い出が詰まったこの場所で。
おばあちゃんが老人ホームに入ってから、さわこは学校の帰りに老人ホームに寄って帰るようになった。
おばあちゃんはみるみる内に元気がなくなっていった。
決まった時間のごはん、決まった曜日だけのお風呂、みんなと同じ生活。
おばあちゃんは、毎朝コーヒーを落として飲むのが日課だった。
老人ホームにもお気に入りのコーヒーセットを持って行っていたが、部屋の片隅で埃をかぶっていた。
準備はするのですが、落とさなくなってしまったんですよね・・・と職員さんが言っていた。
だって、おばあちゃんは美鈴のコーヒー豆で落としたコーヒーしか飲まないのだもの。
お父さんが函館から持ち帰ってみんなで飲んだ想い出の味が大好きなんだもん。
どうやら朝からコーヒーを落として飲む事自体が特別な事だったらしい。
さわこは、自分が普通を追求してきたからよくわかる。
自分らしさと普通というのは対極にあって相いれない。
みんなと同じ生活を強要されれば、おばあちゃんらしさが無くなってしまうのも当然だろう。
おばあちゃんも老人ホームで無色透明になってしまっていた。
そんな事に気が付いて実家に帰ると、伯母さんが待っていた。
この家は処分しますので、今週中に出て行ってね。
今までご苦労様でした。
そう言い放つと、伯母さんは香水の香りを振りまいて帰っていった。
おばあちゃんが老人ホームに入所してから、実家には不動産業者が入れ代わり立ち代わり出入りするようになっていた。
その時はわからなかったが、そういう事だったのか、と思った。
2000万とか3000万とかいう数字が聞こえていたが、きっとこの家や土地を売ったお金の話だったんだな、と合点がいった。
いつでも帰ってこれると信じて老人ホームに入っていったおばあちゃんの帰る場所は、もうなくなってしまった。
私の居場所も無くなってしまった・・・。
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居場所がなくなって途方に暮れていた時、隣のおばあちゃんが声をかけてくれた。
娘さんに事情を説明すると、ずっとここに居ていいのよ、と言ってくれたので、甘えることにした。
お隣のおばあちゃんとの生活が始まった。
外から見ているよりもお隣のおばあちゃんの認知症の症状は酷くてほとんど常時の見守りや誘導が必要だった。
娘さんはヘトヘトになって介護していたので、傍からみて限界だった。
さわこは中学を卒業して田梨木学校への入学が決まっていたが、田梨木高校を休学してお隣のお婆さんのお世話をしながら一緒に暮らす事にした。
田梨木高校の校長の富良子不良雄先生の理解もあり、さわこの入学はいつでも良いと取り計らってくれたのだ。
富良子不良雄先生は、どうやらかなりの後ろ盾をもった人らしく、教育委員会の言う事も聞かずに自由に学校を運営しているそうで、高校の食堂を子ども食堂として常時地域に開放していたりする。
また、料理研究家という別の顔もあり、校長室では日夜新しいレシピの開発に余念がないとかあるとか。
実際、茶色くてモロいサクサクの食感がある食材を活用したデザートを得意としていて、時々生徒や先生にふるまったりしている。
また、裏の顔も持っていて、自費出版の絵本作家で、ドーナツ型ロボットが未来で起こる核戦争を阻止すべく現代にタイムスリップしてきて様々な問題や課題を未来の道具を駆使しドーナツを分け与える事で解決していくSFホラー冒険活劇を創作していて、一部に熱烈なファンを抱えているが、謎の作者として決して正体を明かさないで活動を続けている。
そんな校長先生の計らいもあり、さわこも安心して隣のおばあちゃんの面倒を見る事ができていた。
そして、娘さんも負担がへって少しずつ元気を取り戻していった。
半年ほど経過した頃には、おばあちゃんの様子も落ち着き、娘さんにも余裕が出ていた。
既に新学期が始まっていたが、さわこは少し遅れて田梨木高校に入学する事となった。
クラスのみんなは転校生として受け入れてくれた。
いろいろ質問されたりしたが、いつもどおり受け流してすぐに無色透明になろうとしたのだが、このクラスは勝手が違っていた。
さわこが無色透明になるまで、かなりの時間がかかったが、高校2年生になる頃には溶け込んだ。
普通の高校生活が続いていくと思っていたが、思いもかけない事が起こり、さわこの運命が変わっていくのは、もう少し先のお話。
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あれから体調が悪い・・・。
そう、あの木札を拾ってから微熱が続いている。
あまり休むと目立ってしまうので、保健室で休ませてもらおう。
あそこは色々な情報が飛び交うので"私"のメモ帳も持って行こう。
どんな新しい情報が仕入れられるか楽しみだ。
フフフ。
しかしだ・・・、あの日、貝差彩子が"私"の後ろを自転車で来たのを見た。
・・・もしかしたら、貝差彩子も多さわこに興味があるのかもしれない。
貝差彩子のような一軍女子が何故多さわこに興味を持つのだ・・・。
解せない・・・。
そして許せない。
"私"たちのような日陰に生きる者にとって貝差彩子のような存在は眩しすぎるのだ。
邪魔はさせない、貝差彩子は要注意だ。
つづく・・・
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フライングですが、11月から始まる物語の前日譚みたいな感じで。
今回、懇意にさせてもらっている"脱サラ料理家 ふらお”さんに登場してもらいました。
勝手に校長先生とかめちゃくちゃな設定にしてしまってすみません!
時々出てきている茶色の謎のすぐボロボロになるお菓子も絡ませてもらってます(笑)
とりあえず、さわこのエンディングまでは構想できてるんですけど、結構他の妄想ストーリーに引っ張られて変わっちゃうんですよね、このお話も最初の構想からだいぶ外れましたので、そういう変化も楽しみながら書いてます。
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