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第21話 信頼


高校総体が終わると、三年生は引退します。

そして、その日のうちに一つの大切な話し合いが行われます。

次のキャプテンを誰にするか。

決めるのは先生ではありません。

引退した三年生全員です。

一人ひとりの意見を聞きながら、新しいチームを託す相手を決めていきます。

総体が終わったあと、三年生だけが集まって話し合いをしていました。

私たち夫婦も、少し気になっていました。

息子も気にはしているようでしたが、普段どおりを装っていました。

ここまで二年生ながらスタメンで総体に出場し、一年生キャプテンも経験してきました。

親としては、「ここまできたら、きっと……。」という思いもありました。

ただ、決めるのは私たちではありません。

コートで一緒に戦ってきた先輩たちです。

話し合いは思っていたより長く続きました。

ようやく終わり、三年生は解散。

その日は結果が伝えられることはなく、引退する先輩たちとの最後の時間が流れていきました。

数日後。

先生から息子へ、新しいキャプテンが伝えられました。

「次のキャプテンは、お前だ。」

親として、素直にうれしかったのを覚えています。

あとから息子に聞くと、少し驚く話を聞きました。

キャプテンは、満場一致ですぐに決まっていたそうです。

時間が掛かったのは、副キャプテンの二人でした。

私は正直、エースの子が選ばれると思っていました。

実力もあり、試合ではチームを引っ張る存在。

戦術眼もあり、相手チームの特徴を見て仲間へ声を掛けることもできる。

少し口が悪かったり、先生から生活面を注意されることはありましたが、根は仲間思いのいい子でした。

だからこそ、「副キャプテンには入るだろう」と思っていました。

ところが選ばれたのは、別の二人。

一人は総体でも出場していた、冷静でテクニックのある選手。

もう一人はベンチ入りこそありませんでしたが、中学時代にキャプテンを務め、誰にでも優しく接する選手でした。

家に帰ってから、私たち夫婦は話しました。

「エースの子は副キャプテンとして一緒にやってもらえないだろうか。」

経験もある。

技術もある。

あの子の力は、新チームにも必要だと思っていました。

翌日、息子を通じて先生に相談してみよう。

そんな話までしていました。

ところが学校では、すでに先生から本人へ丁寧な説明がされていました。

息子も少しだけその話を切り出したそうですが、

「大丈夫。」

本人はそう答えたそうです。

その言葉を聞いて、新しいチームは三年生が決めてくれた体制のままスタートすることになりました。

今振り返ると、あの日決まったのは役職だけではありません。

先輩たちが後輩へ託した、「信頼」だったのだと思います。


親として学んだこと

キャプテンは、一番上手な選手がなるとは限りません。

一番点を取る選手でもありません。

毎日の練習でどんな姿勢を見せていたか。

仲間にどう接していたか。

苦しいとき、どんな言葉を掛けていたか。

そういう積み重ねを、一番近くで見ているのは先生ではなく、毎日一緒に汗を流してきた仲間です。

親から見えないところで積み重ねた信頼が、あの日の「満場一致」という結果につながったのだと、私は思っています。

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