小説 神々の山嶺を読んだ
夢枕獏の『神々の山嶺(いただき)』を読んで惹きつけられた。角川文庫から上下巻が出ていて、合わせて1000ページを超える山岳小説。
一応あらすじ
現実の山岳史や登山家のことを織り込んだフィクション。
山岳写真家の主人公・深町は、ネパールのカトマンドゥで、登山家ジョージ・マロリーの古いカメラを手に入れる。マロリーは世界初のエヴェレスト登頂を目指して、そこで姿を消しており、カメラの入手経路をたどっていけば、彼が登頂できたのかどうか判るはずだった。
その過程で、日本で失踪した伝説の登山家・羽生と出会い、背中を追っているうちに人生が狂っていく──という話。
羽生のキャラが濃すぎるし筆力が凄いので、熱気に当てられて夢に出てきそうだった。超人的な体力と執念があって氷壁のことを知り尽くしていて、ほとんど誰も寄せ付けない山男。
地の文によると、高山の陽光に晒されて顔の皮膚がぼろぼろ剥けていて、鼻の奥に鈍い刃物を突き立てられたような獣の匂いがして、部屋にいるだけで温度が二~三度増した気がするらしい。実写映画では阿部寛が演じてるとのこと。
羽生のむさ苦しさを伝えるためにnoteを書いたわけじゃないし、印象に残る台詞や地の文もあるんだけど、断片を載せてもどこが良いのかうまく書けないんだよな。
基本的に深町の一人称視点で進む。
高山病にかかって幻覚を見るところとか、高地で頭上に広がる空とか、酒に酔いながら夜の公園に行って葉桜の下を駆けるところの描写も凄い。あまり書くとネタバレになるのでこの辺りにする。
文庫版のあとがきも潔くて熱い。
書く方としては、書き始めてからはもうどのような意識もなく、あったとすれば、ただただ、とてつもなく力強いパワフルな小説、自分にとって極めて貴重な物語を、今自分が書いているのだという自覚だけです。
全て書きました。
残ったものはありません。
平成九年七月四日海部川にゆく朝に、新宿にて──
夢枕獏
漫画版は全5巻で、孤独のグルメと同じ谷口ジロー氏が描いているという。この記事を書きながらAmazonで注文した。届くのが楽しみ。
話が反れるけど、たまにはカフェインの耐性をリセットしようと思って、コーヒーを飲むのをしばらく止めている。離脱症状で頭痛がしてたけど、本の感想を書いてる間は意識に上らなかった。
自分で高地に行ったことがないのに「高山病に比べたらコーヒーを数日止めるぐらい大したことないな」って感想が出てくるあたり、相当この物語に侵食されてそう。
