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ドラマレビュー:ボルテスVレガシー(2023)〜フィリピンが挑んだロボットアニメ実写化の意欲作!フィリピンの人々の琴線に触れたアニメに恋愛要素を盛り込んで青春SFの傑作に

ストーリー

 南海に浮かぶ島にある基地、ビッグ・ファルコン。ここでスティーブ、エヴァ、マーク、ビッグバード、ジェイミーらは秘密兵器である巨大ロボット「ボルテスV(ファイブ)」のパイロットとなるべく、日々訓練に明け暮れていた。訓練の結果、彼らはパイロット候補生に選ばれるが、そのうちのエヴァをはじめ何人かが、島の外へ遊びに出掛けている最中に、異変が起こる。地球外から来たと思われる飛行物体が多数現れ、世界中の都市を攻撃し始めたのだ。
 このままでは、地球は宇宙人に侵略されてしまう。基地の指揮官を務めるスミス博士は、司令室に集まってたスティーブ、マーク、ビッグバード、ジェイミーに、ボルテスVで出撃するよう命じる。だが、ボルテスVは5機のメカが合体して巨大ロボになるため、パイロットがあと一人不足していた。そこにやってきたスティーブとビッグバードの幼い弟、リトル・ジョンが、パイロットになると申し出る。彼らの母で、基地で技師を務めるマリアンヌ博士は引き止めるが、スミス博士はリトル・ジョンの素質を見抜いてパイロットに抜擢。5人は地球を守るため、ついに出撃した。
 しかしスティーブ、ビッグバード、リトルジョンの3人兄弟には、彼ら自身さえ知ることのない秘密があった。時を遡ること10数年前。宇宙征服をたくらむボアザン帝国の皇帝が崩御。その息子だったフロスガーが次期皇帝に即位することとなった。だが、フロスガーには高貴な者の証とされる角がないことを暴露され、労奴の身分の落とされて宮殿から追放されてしまう。そして強制労働をさせられるが、そこで仲間たちと反乱を起こす。しかし帝国軍の反撃を受け、フロスガーは仲間らの援護を受けて宇宙船で逃亡。次にボアザン帝国が侵略しようと狙う地球へと逃れてきた。フロスガーの乗った宇宙船は海辺に墜落、それを目撃したマリアンヌは彼を助けて地球防衛軍に引き渡す。ボアザン帝国による地球侵略の危機を訴えたフロスガーはネッド・アームストロングという地球名を名乗り、ここで秘密裏に「ボルテスV」を建造することとなった。そしていつしかマリアンヌと恋に落ちる。
 一方のボアザン帝国では、フロスガーを失った妻が病で倒れて命を落とすが、お腹にいた子、ザルドスは叔父で皇帝となったズ・サンボジルに引き取られ、皇子として成長していた。彼は地球征服軍の司令官に任じられ、将軍ドラコ、ザンドラ、ズールを率いて侵攻を始めるが、そんなザルドスの前に、ボルテスVが立ち塞がり、彼らは互いの血の繋がりを知らぬまま、激闘を繰り広げていく。

レビュー

 原作は言わずと知れた日本のロボットアニメ『超電磁マシーン ボルテスV』。1977年から1978年にかけて、全40話が放映された。当時私は小学5、6年生で、『キャンディ♡キャンディ』やピンク・レディーが大ブームとなっていた頃と重なる。また、1978年には日本でも『スター・ウォーズ』が公開され、それらすべてに夢中になっていた少女時代であった。そんな私がロボットアニメにハマるのは『機動戦士ガンダム』からであり、当時のテレビ放映を見た記憶はない。のちに、ゲーム『スーパーロボット大戦』で知ったといっても過言ではない。ただ、敵の美形キャラ、プリンス・ハイネル(本作ではザルドス)の人気だけは、アニメ雑誌などを通して知っていたように思う。

 そんな『ボルテスV』がフィリピンで実写化されたと聞き、見てみたいと思ったのは、本場・日本でさえ手を出していないロボットアニメの実写化にあえて挑戦したことに、興味を持ったからだった。そして、その背後にある、フィリピンでの『ボルテスV』人気を感じてみたい、と思ったということもあった。

 フィリピンでは日本での放映終了から間もない1978年5月に最初の放映があったが、ときのマルコス政権が独裁政権であったことから、反乱軍が独裁者を倒すというラストが問題視され、ラスト4話を前に放送禁止となってしまった。しかし、1986年にクーデターが勃発。マルコス大統領は政権を追われて亡命せざるを得なくなり、かわって民衆の支持を受けたアキノ政権が樹立すると、『ボルテスV』は全話が再放送され、大人気となった。そしてついに2023年、フィリピンのテレビ局により実写リメイク作品として、新たに制作されたのが、本作である。
 原作を土台にしているとはいえ、本作は全90話と原作の倍以上の長さに引き伸ばされれ、ロボットアニメ作品としては前代未聞の超大作となっている。原作未視聴のため、このデビューでは原作との対比はできないが、原作がなぜフィリピンの人々の琴線に触れたのか、そしてリメイクするにあたって、どんなドラマが盛り込まれたかを推察しつつレビューしていきたい。

 本作は、全90話の字幕版と、全20話に再編集した日本語吹き替えの『超電磁リスペクトTV版』がある。私はまず全90話の字幕版を見たあと、日本語吹き替え版を視聴した。日本の人気声優陣による吹き替えは非常によく、できれば全話吹き替えで見たいと思ったが、全20話に再編集された中で、削り落とされた部分にこそ、フィリピン制作実写版のエッセンスと面白さが詰まっているようにも感じた。それは「ワクワク三角関係青春恋愛ドラマ」と「虐げられた人々の悲劇と反逆」である。

左からマーク、ジェイミー、スティーブ、ビッグバード、リトル・ジョン
主人公のスティーブが、人間関係がこじれるすべての原因を作っていたりして(笑)

 5機のマシンが合体して巨大ロボとなるボルテスVは、主人公のスティーブ、マーク、ビッグバード、ジェイミー、そしてリトル・ジョンの5人がチームとなって戦う戦隊モノでもあるが、まだ子どもであるリトル・ジョンを除く4人それぞれに、恋愛ドラマが展開されていくのが、なかなかに独特な味を出している。当初、スティーブは同じくパイロット候補生の中のエヴァと付き合っており、ジェイミーは天涯孤独のマークを気遣う態度を見せていた。マークは次第にジェイミーに心惹かれるようになり、スティーブもまた、ジェイミーに恋心を抱くようになる。ジェイミーをめぐる、スティーブとマークとの三角関係である。
 一方、ジェイミーはスティーブに惹かれながらも、彼にはエヴァという彼女がいるので接近できず、アプローチしてくるマークと親しくせざるを得なくなるが、スティーブがエヴァにつれなくするようになると、二人の関係が徐々に近くなってゆく。ここにもう一つ、スティーブをめぐる、ジェイミーとマークとの三角関係が爆誕するのである。
 この交差する二つの三角関係のドラマが、本作の中ではなかなかにウエイトを占めていて、本来、ロボットアニメといえば毎話必ず敵ロボットが登場して合体シーン、戦闘シーンに入っていくのが定番になっているが、本作では戦闘シーンがないどころか、主役メカであるボルテスVがまったく登場しない回さえあった。

 だからといって、主役メカがおざなりにされている、ということはまったくない。しかしそれ以上に、敵、味方それぞれの陣営で繰り広げられる人間関係のドラマにも、しっかりと時間を割いていて、戦いのゆくえと絡み合いながら、それぞれの恋愛関係がどうなってゆくのか、というところが実に面白かった。

 もう一人、ビッグバードは外出先の店でウエイトレスをしていたジュディを好きになってしまう。しかしジュディはボルテスの秘密を探るため、敵将ザルドスが送り込んだスパイだった。ボアザン帝国での名はジュダラといい、妹を人質に取られているのだ。やがてスティーブはジュディが怪しいことに気づき、二人を引き離そうとするが逆にビッグバードは意固地になる。その先には悲しい別れが待っているのだが、姿を消したジュディがどうなったのか、まったく描かれないままに話がどんどん進んでゆくので、あれで終わりだったの? と思い忘れた頃に再登場してくれたのはちょっとうれしかった。主人公のスティーブとジェイミーが、それぞれにどっちつかずの態度をとって三角関係を泥沼化させていくのとは反対に、ビッグバードはなかなかに、よい結末を迎えられたのではないだろうか。

左から、ロビンソン司令、マリアンヌ博士、スミス博士。
基地司令にしては人が良すぎるスミス博士が最大の弱点かも。

 この三角関係の泥沼化というのがなかなかにピリッと効いていて、スパイのジュディ以上に、スティーブの元カノ、エヴァが嫉妬のあまり最大の敵と化していくところも、長い物語を盛り上げるスパイスとなっていた。父親が地球連邦軍の司令官、そしてスティーブと実は相思相愛の関係になっているジェイミーに対して、スティーブには捨てられ、ボルテスVのパイロットにもなれず破れかぶれになったエヴァは、ジェイミーの命を狙ってボルテスチーム最大のピンチを招くことになるのだが、その能力は非常に高く、スミス博士の適当すぎる人事の犠牲になったともいえるかもしれない。

ボアザン帝国の面々。左からズール、ザンドラ、ザルドス、ドラコ。
個人的には、しょっちゅう変わるザンドラのファッションも見どころだった。

 そんな恋愛青春ドラマがある一方で、ボアザン帝国には「角」のあるなしで身分が決まる、という厳しいツノ社会の掟があり、そんなボアザン社会を通して、虐げられた人々の苦しみが描かれてゆく。生まれながらにツノを持たなかったがゆえに、フロスガーは皇帝になるはずが労奴の身分に落とされ、地球へ逃れざるを得なくなった。そしてジュダラはザルドスのスパイ・ジュディとなって地球に潜入しなければならなかった。そして帝国の繁栄の影には、ツノを持たない労奴たちの強制労働という暗い一面があったのである。
 それは、フィリピンという国の成り立ちを彷彿させるものである。7000を超える島々からなる多民族国家だが、大航海時代にスペインの植民地になり、19世紀に起こった米西戦争のあと一時独立を果たしたものの、アメリカはそれを承認ぜず植民地化をすすめた。これに抵抗する民衆との間で米比戦争が起こって60万人ものフィリピン人をアメリカ軍が虐殺、武力鎮圧しフィリピンはアメリカの属領となった。
 そして迎えた第二次世界大戦では日本軍の侵攻を受けてアメリカ軍は撤退、全土が日本軍によって占領され、傀儡政権が樹立する。しかし民衆の一部はこれに激しく抵抗し、抗日ゲリラとして日本軍と激しい戦闘を繰り広げた。第二次世界大戦後に独立を果たすが、今度は反共産主義を掲げたマルコスによる独裁政権に苦しめられることになる。
 このように、侵略者、圧政者への抵抗と反逆を続けてきた国民だからこそ、帝国の侵略に立ち向かう若者たち、そして最後に反乱軍が帝国を倒すというストーリーが国民的人気を獲得するほどの共感を得たのだと感じた。

 ガンダムを見てきた立場からすると、結構影響受けてるかもね、と思うところもあった。特にラスト、ボアザンの反乱軍とともにボルテスチームが皇帝を倒すところなど、富野由悠季のもともとのファーストガンダムの構想(そして小説版ラスト)とよく似ている。きっとガンダムも、こういうラストにしたかったのだろう。そうならなくて良かったと思っているし、それと似たラストになったジークアクスはひどい出来だった。

 実写化としてみても、非常によく出来ていると思う。特にボルテスVの造形と合体シーンの描写はすばらしい。戦闘シーンの、チャンバラに似た立ち回りや見栄を切るようなポージングも様になっており、毎回、どんな戦いをするのか楽しみだった。敵のビーストファイターは、「そうじゃないだろう」という戦略ミスがあったり、隙だらけだったりしてなかなかに笑わせてくれる。つい、「侵略するなら、めちゃ強い一体を作るんじゃなくて、小さいメカを量産すれば」などと思ってしまうのはよくない癖だろう。何より、メカはともかくザルドスをはじめとする敵司令部がポンコツで、毎度のようにボルテスにやられて呆然とするところも、ニヤニヤと笑いながら楽しませてもらった。

 一方の俳優による演技の方は、最初の方は、大声で技の名前を叫ぶといったロボットアニメの流儀に不慣れでたどたとしい感じがしたものの、ストーリーが進んでキャラクターへの理解が深まる中で、だんだんとそうした戸惑いを吹っ切り、ノリノリの演技を見せてくれるようになったのが非常によかった。恋愛が絡むシーンになると、とつぜんK-POPっぽいバラードが流れて韓国ドラマのようなノリになるのも面白かった。
 ただ、どうしても物足りないのはアクションシーンで、これだけは、時代劇や戦隊シリーズで多くの蓄積のある日本のドラマの絵作りに一日の長があるなと思った。

 それにしても、さすがに全90話は長く、恋愛話に多くの時間を割いたり、特にラストに近づくにつれて、話の進行がめちゃめちゃゆっくりになったり、としばしばゆるーい展開になってしまうところもあった。しかし、その分キャラクターの造形や感情を深掘りできている、ということを考えると、やはりフィリピン製作陣の「ボルテス愛」を感じずにはいられない。1話どころか数話にわたって主役メカのボルテスVが登場しないこともあったが、逆に「それだけ、作画に時間をかけているのだろう」と期待すらしてしまうほどだった。

 日本では、庵野秀明が1960年代、70年代の特撮ヒーロー物をリメイクしているが、ロボットアニメの実写化となると、アメリカの『トランスフォーマー』シリーズや『パシフィック・リム』、そしてフィリピンの本作ぐらいで、本家本元の日本では手付かずになっている。本作のチャレンジを見るとうらやましくなってしまうが、それだけの原作愛を持って実写化に取り組めるような人材が、山崎貴監督らいしか日本には思い当たらない、というのが残念なところだ。

 それはともかく、原作を知らなくてもめちゃくちゃ楽しめるので、ぜひ「東映特撮ファンクラブ」に課金して、致死量のボルテス愛を浴びてみてほしい。


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