日本の財政収支の現状~~Japan Spotlight 2023年3-4月号(連載第40回)
隔月刊のウエブマガジンJapan Spotlightの私の日本語原稿をnoteに転載することをご了承いただたことをうけて、最新のものから遡る形で過去の連載をコツコツと転載いたしております。今回は連載第40回の「日本の財政収支の現状」です。英語版のリンクは下記の通りです。あわせてご高覧いただければ幸いです。
https://www.jef.or.jp/journal/pdf/248th_Economic_Indicators.pdf
国際比較の対象は一般政府ベースの財政収支
2022年末に日本の2023年度予算の政府案が閣議決定された。歳出総額が過去最大の114兆円になり、防衛費が公共事業費を超えることになったことや、そうした歳出のうち税収を超える部分を賄う新規国債発行への依存度が3割を超すことなどが注目されている。
一方、財政状況の国際比較で用いられるのは、国(中央政府)、地方自治体(地方政府)、年金の特別会計などの社会保障基金を合計した一般政府ベースの財政収支である。この財政収支の状況は、毎年末に公表される国民経済計算の年次推計から知ることができる。今月の本稿では、2022年12月下旬に公表された2021年度の年次推計をもとに、日本の財政収支の現状を確認したい。
2021年度の財政収支赤字は、名目GDP比5.9%
一般政府の財政収支状況は、年次推計の制度部門別資本勘定・金融勘定の「純貸出(+)/純借入(-)」に示されている。2021年度の実績は32.6兆円(名目GDP比5.9%)の赤字(国民経済計算の用語を用いれば純借入(net borrowing)であった。コロナ禍で歳出が拡大した2020年度の名目GDP比10%の赤字に比べれば縮小したものの、依然として高めである。
この財政収支は、一般政府の貯蓄から公共事業などの投資を差し引いたものである。財政収支赤字を貯蓄要因と投資要因に分けてみてみると、近年の日本の財政収支の赤字は主に貯蓄要因であることが確認できる(図1)。2021年度の貯蓄は28.7兆円(名目GDP比5.2%)の赤字である。
この貯蓄は、税・社会保険料収入(2021年度は185.7兆円、名目GDP比33.7%)から投資を除く一般政府の支出(2021年度は214兆円、名目GDP比38.9%)を差し引き、財産所得の受取から支払いを引いたもの(財産所得(純)、マイナス3579億円、名目GDP比0.1%)を加えたものである。国債の利払いは財産所得の支払いに相当するが、財産所得(純)のマイナスが貯蓄の赤字に与える影響はさほど大きくない。国債の多くが年金の積立金運用などに購入されており、一般政府でみると国債の利払いは財産所得の受取にもなるためである。

年々上昇してきた税・社会保険料収入の名目GDP比
以上から、一般政府の貯蓄の赤字は、税・社会保険料収入と投資を除く一般政府の支出の差でほとんど説明できることがわかる。名目GDP比でみたそれぞれの推移を示した図2をみると、税・社会保険料収入の名目GDP比は2000年代初頭あたりから上昇が続いていることが確認できる。現行基準の国民経済計算では1994年度以降の実績値しか確認できないが、2021年度の名目GDP比33.7%は、旧基準のデータでみた1990年度のピーク(名目GDP比28.6%)を上回る。この主因は、社会保険料の名目GDP比が1994年度以降、一貫して上昇していることにある。GDPは日本国内で稼いだ所得であるから、所得に対する保険料率が年々上昇、負担増が進んできたことがわかる。

脱コロナへの移行がスムーズに進むか?
こうした負担増は、投資を除く一般政府の支出が拡大してきたことの裏返しである。その内訳を3つに分けて観察すると、社会保障関係費の名目GDP比が年々上昇してきており、これが投資を除く一般政府の支出拡大につながったことが確認できる(図3)。2021年度の一般政府ベースの社会保障関係費は124.3兆円(名目GDP比22.6%)であり、1994年度の名目GDP比12.0%の2倍近くになっている。それに対して、社会保障以外の政府最終消費支出の名目GDP比はほぼ横ばいで推移してきている。
さらに細かくみると、社会保障関係費の名目GDP比が2012年度以降は横ばい圏内にある。この間も社会保障関係費は高齢化などで年々増加していたものの、デフレ脱却により名目GDP成長率がプラスになったことが効を奏したといえる。名目GDPの拡大は税・社会保険料収入の増加につながり、財政再建には欠かせないことがわかる。
さらに、2020年度はその他の経常移転の支払から受取の名目GDP比が7.1%へ急上昇したことが確認できる。21年度は4.1%まで低下したが、2019年度までは1%程度だった。20年度の急上昇は、コロナ禍に関連した各種給付金によるものであり、今後、脱コロナへの移行がスムーズに進めば、財政赤字の縮小要因につながることが期待できそうだ。

(注)本稿は2023年1月31日までに得られた情報をもとに執筆している。
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