テクノロジカル・リパブリック | アレクサンダー・C・カープ
AIの本だと思ったら、「国家」が主役になっている本だった。
テック界隈の本を読んでいると、「AIが社会を変える」とか「未来を最適化する」といった言葉をよく見かける。「テクノロジカル・リパブリック 」は、少し違う方向から現代のテックを見ている本だった。
著者のひとり、アレクサンダー・C・カープ は、あのパランティア共同創業者。しかも意外なのは、彼が典型的なエンジニアではないことだ。スタンフォードで法律を学び、ドイツで哲学を研究していた人物で、いわゆる「コードを書いて育った天才プログラマー」タイプではない。
そのせいか、本書には普通のテック本とは違う空気がある。技術の話だけではなく、「国家とは何か」「民主主義を守るとは何か」という政治哲学の視点がかなり強い。

パランティアは「便利アプリ」の会社ではない
パランティアという会社自体も特殊だ。一般消費者向けSNSや便利アプリではなく、国防や情報分析を主戦場にしている。米国防総省や情報機関との関係も深く、現代の“軍事AIインフラ企業”と呼んでもいい存在だろう。
日本だと、テック企業というとGAFAのような「生活を便利にする会社」という印象が強い。でもパランティアはむしろ逆で、「国家をどう維持するか」に焦点を当てている。本書を読むと、シリコンバレーの一部が、もはや国家そのものと結びつき始めている感覚がよくわかる。
シリコンバレーへの苛立ち
面白かったのは、カープがかなり露骨にシリコンバレー批判をしている点だ。かつてのアメリカの技術者たちは、宇宙開発やインターネット、半導体など、「国家規模の課題」に挑んでいた。しかし現代の優秀なエンジニアたちは、広告最適化やSNS依存設計、消費者向けアプリに流れすぎている。そんな苛立ちが本全体に漂っている。
要するに、「世界最高の頭脳が、広告のクリック率を上げることに使われていていいのか?」という問いだ。
このあたりは、かなりピーター・ティール 的でもある。スタートアップ礼賛というより、「国家と技術の再接続」を求める思想が強い。
テクノロジーは、もともと国家プロジェクトだった
本書では、テクノロジー史も繰り返し語られる。冷戦時代、アメリカの科学技術は国家プロジェクトと強く結びついていた。インターネットもGPSも、もともとは軍事研究から生まれている。つまり、「国家と技術は本来セットだった」というのがカープたちの基本認識だ。だから彼らは、現代テック企業の「政治から距離を置く姿勢」を、むしろ不自然だと考えている。
「効果的利他主義」への違和感
ここで登場するのが、「効果的利他主義(EA)」という考え方だ。
これは簡単に言えば、「どうすれば、限られたお金や能力で、世界をもっと効率よく良くできるか」を、データや合理性を使って考える思想のこと。
たとえば、
「どの寄付先が最も多くの命を救えるか」
「AI暴走や感染症対策に資金を集中したほうが、人類全体にはプラスではないか」
そんなふうに、“感情”より“計算”を重視する。この思想は、シリコンバレーの富裕層やAI研究者とも相性がよく、「巨大な富を得た人間は、それを人類全体のために最適配分すべきだ」という発想につながっていく。
ただ、本書の著者たちは、この考え方にかなり距離を置いている。なぜなら、「人類全体」という抽象的な視点ばかり強くなると、「国家」「文化」「共同体」「歴史」といった足元の現実が軽視される、と考えているからだ。著者たちはむしろ、「まず自国社会や民主主義を守る責任がある」という立場に近い。つまり、
地球規模の善”を語る前に、
自分たちの社会を維持する覚悟はあるのか?
という問いが、この本には流れている。
多文化主義批判と、イスラエル・ガザ問題
さらに本書では、多文化主義的な価値観にも批判的な視線が向けられる。「普遍的価値」だけでは国家共同体は維持できない、という考え方がかなりはっきりしている。
そして後半では、イスラエルとガザをめぐる問題にも踏み込んでいく。ここはかなり緊張感のあるパートだった。パランティアはイスラエル政府との関係も深いため、単なる評論ではなく、“当事者側の論理”として読めてしまうところがある。
もちろん、読者によっては強い違和感や反発を覚える部分もあると思う。実際、この本は「中立的なテック論」ではない。かなり明確な政治思想を持った本だ。
「便利な未来」の話では終わらない
でも逆に言えば、いまAIやテクノロジーをめぐって、本当に世界の権力構造が変わり始めていることも伝わってくる。
AI本は、「便利になります」「仕事が変わります」で終わるものも多い。しかしこの本はもっと生々しく、「誰が国家を守るのか」「技術者はどちら側につくのか」という話をしている。AI時代の空気を理解するには、かなり重要な一冊だと思った。
引用:Business Insider 松本和大 [ 記者 ]
東京・神宮前にあるトランクホテル(TRUNK HOTEL)で、敷地を取り囲むような長い列ができていた。
筆者が並んだ列では、ホテルの入口付近にたどり着くまで、体感で1時間半から2時間ほどかかった。周囲には、Tシャツやキャップ姿の若い来場者、スーツ姿のビジネスパーソン、海外から来たとみられる人の姿があり、属性はさまざまだった。
人々の目的は、アメリカのソフトウェア企業・Palantir Technologies(パランティア)が開いたミートアップへの参加だった。同社がX(旧Twitter)で告知していた、一般参加可能なイベントだ。
会場周辺には、来日したアレックス・カープCEOの姿もあった。カープ氏は列の近くにも姿を見せ、来場者と会話を交わしたり、写真撮影に応じたりしていた。
5万人以上の子どもが死傷した、ガザへの攻撃に、テクノロジーで成果を挙げた企業のグッズ販売に、長蛇の列ができる事態をどう捉えればいいか、
グッズを買うために並ぶ行為は、必ずしも虐殺を支持していることを意味しないですが、消費はしばしば政治的・倫理的文脈を脱色します。
戦争の現実が“抽象化”されて、テクノロジー企業が、かっこよく見えてしまい、 消費文化が倫理判断を鈍らせます。
SNSは、参加を促すメディアです。人は「これは正しいか」を深く考える前に、「話題になっている」「みんなが並んでいる」「限定感がある」・・そういう理由で行動しやすいのかもしれません。
SNSは、単に情報を広めるだけでなく、何を魅力的に見せ、何を見えにくくするかを選別する装置です。なんだかモヤモヤしますよね。しかし、私もこのパランティア・キャップは欲しい!


![fu [フー子です ]](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/28446038/profile_13b0074226ba6088624e6fcfe9b96455.png?width=60)