【抜歯を迫られた時】知っておきたい選択肢
戸越銀座デンタルケアークリニック院長の大澤広晃です。
最近、患者さんとお話していて強く感じるのが、「歯を失ったらインプラントしか選択肢がない」と思い込んでいる方が多いということです。
インプラントは選択肢の一つですが、歯を失うときに選ぶべき方法は決して一つではありません。
今回は、歯科医として皆さんにぜひ知っていただきたい「抜歯を迫られた際の選択肢」についてお伝えします。
「インプラントしかない」と言われた患者さんの話
先日、私のクリニックを訪れた35歳のYさんのケースをご紹介します。Yさんには許可を得て掲載しています。
Yさんは過去に左下の奥歯を治療して被せものをつけていましたが、それが最近外れてしまいました。以前の歯科医院を訪ねたところ「奥歯を抜いてインプラントにするしかない」と説明され、その費用は50万円と言われたそうです。
不安に思ったYさんが私のもとを訪れ診察した結果、歯根を丁寧に掃除し、もう一度被せものをすることで十分噛める可能性があることがわかりました。
Yさんは被せものを再装着し、半年以上経った現在も問題なくしっかり噛めています。
この事例から言えることは、「インプラント以外の選択肢を知らないまま治療を決めてしまうのは非常にもったいない」ということです。
歯の治療には必ず「複数の選択肢」があります
Yさんのようなケースでは、複数の選択肢があります。
歯根を掃除し、再び被せものをする
抜歯して「ブリッジ」をする
抜歯して「部分入れ歯」にする
抜歯後、そのまま放置する
抜歯後、「インプラント」を入れる
こうした治療は患者さんに選択する権利があります。
治療を受ける患者さん自身が、複数の選択肢のメリット・デメリットを理解し、適切な判断をできるようにすることが何より大切だと私は考えています。

歯を抜くことは「最終手段」
歯科医師としての私の基本方針は、「できるだけ自分の歯を残す」ということです。
たとえ被せものが外れても、歯の根の部分がまだ残っていれば、丁寧に掃除をしてもう一度被せものをすることができるかもしれません。
抜歯は、ほかの手段を試みた後の「最終手段」として考えるべきなのです。
まずはご自分の歯を残せる可能性を考えましょう。
それが難しいと判断されたときに初めて、抜歯後の選択肢を検討します。
「ブリッジ」という選択肢のメリット・デメリット
歯を失った部分の隣の歯を削り、義歯を固定する方法が「ブリッジ」です。
メリットは、取り外しの必要がなく、治療期間が短いことです。費用も保険適用の範囲内なら抑えられます。
デメリットは、隣の健康な歯を削らなければいけないことと、歯茎との間に汚れがたまりやすく虫歯や歯周病のリスクが高まることです。
口内環境に優しい「部分入れ歯」という選択
部分入れ歯は取り外し可能な義歯で、残った歯に金属のバネで固定します。
最大のメリットは、取り外して洗浄できるため、口内を常に清潔に保てる点です。またインプラントに比べ費用も手頃で、患者さんの身体に負担のかかる手術も必要ありません。
違和感や金属のバネが目立つ場合もありますが、それを差し引いても、口内環境を考えると非常に優れた治療法だと思います。
「総入れ歯」は失った歯が多い方の味方
すべての歯を失った場合の選択肢は「総入れ歯」です。
総入れ歯には保険適用と自由診療があり、素材やフィット感もさまざまです。自由診療の金属床やシリコン製は薄くて違和感が少なく、フィット感も良いため快適です。
ただし、長期使用で歯茎が痩せ、調整が必要になることがありますので、定期的なメンテナンスは欠かせません。
抜いた歯をそのまま「放置」するのも選択肢のひとつ
意外に思われるかもしれませんが、抜いた後に何もしないという選択肢もあります。実際に歯を抜いた後、体は自然とその状況に適応します。
噛み合わせも自然に調整され、多くの場合、そのままでも問題なく生活ができます。
慌てて治療法を決める必要はありません。
じっくり考え、自分に合った治療を選びましょう。
治療の選択権は、患者さんご自身にあります。
今回の記事は以上です。
お伝えしたように、歯を失う時の治療法はインプラントだけではありません。
皆さんが正しい知識をもとに納得のいく選択ができることを願っています。

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