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決済の教科書 第5回: SWIFTとは何か——飛んでいるのはお金ではなく「メッセージ」

「国際的な決済網SWIFTからの排除」——制裁のニュースで、この言葉を目にした方は多いはずです。ではSWIFTとは何をしている組織なのか。最大の誤解から正しましょう。SWIFTは、お金を送っていません。

正体は「銀行間の国際郵便局」

SWIFT(国際銀行間通信協会)は、1973年に世界の銀行が共同で設立した協同組合で、本部はベルギーにあります。役割はただ一つ、銀行間のメッセージを、安全に・確実に・標準形式で届けること。世界200超の国・地域、1万を超える金融機関がつながる、いわば銀行専用の国際郵便網です。
前回の海外送金を思い出してください。A銀行→C銀行→D銀行→Z銀行と口座の数珠つなぎでお金が動くとき、「Z銀行の○○さんに△△ドル払ってください」という指図は、各行間をSWIFTメッセージで飛んでいきます。お金の実体はコルレス口座の残高書き換えで動き、SWIFTはその指図を運ぶ——メッセージと決済の分離。第2回の「全銀は運び屋、日銀は金庫番」と同じ構図が、国際版にもあるのです。

銀行の住所「BIC」とメッセージの型

SWIFTの世界では、銀行はBIC(銀行識別コード、いわゆるSWIFTコード)という8〜11桁の住所を持ちます。海外送金の依頼時に書かされるあの英数字です。メッセージには型番があり、顧客送金の指図、銀行間の資金付替、輸出入の信用状——用途ごとに定型化されています。長年使われてきたMT形式という電文は、いま世界的にISO 20022ベースの新形式への移行が完了しつつあります(次回の主役です)。

「SWIFT排除」が意味すること

ここまで来ると、制裁の意味が正確に読めます。ある国の銀行をSWIFTから排除しても、その銀行の資産が消えるわけでも、コルレス口座が消えるわけでもありません。しかし世界標準の連絡手段を失う——電話とメールを同時に止められた会社を想像してください。取引は不可能ではないが、著しく遅く、高く、目立つものになる。SWIFT排除が「金融の核オプション」と呼ばれつつ、それ単体では抜け道が残ると言われるのは、この構造ゆえです。

郵便局の進化——gpiとその先

「メッセージ屋」に徹してきたSWIFTも進化しています。gpiという仕組みで送金に追跡番号を付け、いま送金がどの銀行で止まっているかを可視化しました。荷物追跡の発想です。さらに近年は、トークン化資産や新しい決済インフラと既存網をつなぐ実験にも踏み出しています。
半世紀前、テレックスの時代に「銀行の共通言語」を作った組織は、言語そのものが変わる時代を迎えています。その新しい言語——ISO 20022を、次回まるごと一回かけて解説します。


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