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きつい言葉

北海道に移動し働く娘が帰ってくる。
それだけで、私は数日分の期待を勝手に積み立てていた。

喜ばせたい。
楽しい時間にしたい。
「帰ってきてよかった」と思って欲しいと思って色々計画する。

娘の好きだった店に連れて行こうと思った。
以前から、「ここの味が好き」と言っていた中華料理店。
私はその記憶を、今も大事に握りしめていた。

――定休日。

シャッターの前で唖然とする私の横で娘は一言。
「普通ちゃんと調べてから連れて来るよね」

それだけ。
何も言えなかった。

この時点で、もう負けは決まっていたのかもしれない。
予定が崩れた瞬間、私は“楽しませなきゃいけない親”に戻ってしまった。

家に戻ると、娘は部屋で退屈そうにぼーっとしている。
私は焦って口を開いた。

「何かDVDでも観る?」

優しさのつもりだった。
歩み寄りのつもりだった。

返ってきた言葉は、短くて、冷たくて、遠慮がなかった。

「もう帰りたい」

……は?
一瞬、意味が分からなかった。

帰りたい?
まだお昼なのに?
この家にいる時間、そんなに苦痛?

胸の奥に、鈍い衝撃があった。

「そっか」

そう言うしかなかった。
感情が追いつかなかった。

娘の言葉は、きつい。
間違いなく、きつい。

でも考えてしまう。
こんなきつい言葉を平気で親に浴びせるように育ててしまったのかと・・・

昔から言いたい事ははっきり言う子だった。
それでいいとも思っていた。
でも流石に今回はきつい。

良かれと思って。
善意のつもりで。
それは私の自己満足だったのかな。

娘の気持ちに寄り添えなくて、ただ悲しかった。

親子って、仲良しごっこが一番残酷だ。
期待すればするほど、裏切られた時の毒が濃くなる。

きつい言葉は、今も刺さる。
あの日から娘との距離を取ってしまう自分がいた。




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