恋愛今昔物語 第一章 景子④「動物園」②
映画館から動物園まで1時間弱で到着しました。
私が2人分の入場料を払おうとしていると「私の分は自分で払うよ」と景子が言ってきました。
「いいから、いいから俺が誘ったんだから入場料くらい払うから」と言うと
「じゃあ、お昼代は私が出すね」
「それじゃあゴチになりますか。俺、腹減ってるからものすげー食うかもしれんぞ。覚悟しとけよ」
「ハハハ。思いきっり食べていいよ」
一番初めに見たのがチンパンジーとオランウータンの檻でした。
「オランウータンか、俺ずっとオラウータンだと思ってた」
「トクラ、あんまり見てると糞を投げられますって書いてあるよ。もう行こ」
「俺に糞なんて投げたら、俺もここでウンコして投げ返してやるよ」
「また、そんなバカ言って」
「トクラって昔からそうだよね。皆んなを笑わすの得意だったもんね」
「得意じゃないけど、俺の言ったことで皆んなが笑ってくれると嬉しかったな」
「俺、職業間違えたかもな」
「どういうこと?」
「うん。公務員じゃなくて芸人さんを目指した方がよかったかもな(笑)」
「まあ、プロの芸人さんになるのは公務員になるより難しいだろうけどな」
そんなことを言いながら景子と動物園内を見て回りました。
ライオンの所で「なんか怖くないか?檻もなくて、この谷みたいなこと軽く飛び越えて来そうじゃん」
「うん。そうだよね。でもライオンさんはお昼寝中だから大丈夫なんじゃない」
「いいなライオンは寝てるだけで飯食えるんだから。俺、生まれ変わったらライオンになろうかな。野生のじゃなくて動物園のだけど」
「トクラってそんなに怠け者だっけ?」
「俺は生まれた時から怠け者だよ。あんまり怠け者だから心臓を動かすのも面倒くさくて何回か死にかけたんだってさ」
「へえー。そうだったの。怠け者で成績優秀者になっちゃうんだ。羨ましいなあ」
「そういやあ、あんまり勉強しなかったな。中学の時も高校の時もな」
「トクラ、あんまり言うとイヤミに聞こえるよ」
「そっかあ…。ホントのこと言ってるだけだけどな」
「あ!景子ちょっと来い」と言って景子の腕を引っ張って檻の中に入れました。
「景子、その檻にしがみついてみ」
「こんな感じでいい?」
「いい、OK、OK。写真撮るからちょっと待ってろ」そう言って持ってきた使い捨てカメラで写真を撮りました。
「OK、もういいよ」
景子が檻から出て動物の種類を書いた札を見て「ちょっとトクラ、これなに!」
札には世界で一番危険な生き物と書いてありました。
「ハハハ。景子にピッタリじゃん(笑)」
「もう、トクラも入んなさい!」
「じゃあ今度は2人で入って写真撮ってもらおう」
近くで掃除をしていた動物園の職員さんに頼んで2人で檻につかまっているところを写真に撮ってもらきました。
そう言えば、あの時の写真はどこに行ってしまっただろう。
一通り園内を回ると上の方に爬虫類館と書いた看板が目に入りました。
「景子どうする?」
「せっかく来たんだから行こうよ」
「うん…」
「トクラは行きたくないの?」
「俺、高いとこ苦手なんだよなあ。それにこのリフト、これに乗るのが怖いんだよな」
「高いとこって言ってもほんの少し登るだけじゃん。行こうよ」
「じゃあ景子が俺の手を握っててくれたら行くよ」
「じゃあ握っててあげるから行こ」そう言って2人でリフトに乗りました。
「俺、目をつぶってるから着いたら教えろよ」
景子の手は小さくて柔らかで、まるで赤ちゃんのような手でした。
「トクラ、もう着くよ」
いよいよ爬虫類館です。
「あのさあ…」
「今度はなんなの?」
「俺、ヘビとか苦手なんだよな…景子の後ろから見ててもいいか?」
「もう、子供みたいなこと言って。私の後ろでもいいから早く入ろうよ」
「うわ!気持ちわりい。景子はヘビとか大丈夫なのか?」
「ガラス越しならね」
なんとか爬虫類館を回りきって外に出て来ました。
近くにベンチがあったので景子をそこに座らせて私は自動販売機に走りました。
「はい、これ。景子はコヒー大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
「甘い方がいいよな」と言って砂糖とミルク入りの缶を渡しました。
「ありがとう。トクラは?」
「俺はブラック専門だから。甘いコーヒーなんて女、子供の飲むもんだからな。大人の男はやっぱりブラックだ」
「大人の男が1人でリフトに乗れなかったりヘビが怖いからって女の子の後ろに隠れるわけ(笑)」
「まあ、人それぞれ苦手なもんはあるもんだ」
「あー、腹減ったな。景子は?」
「うん。そろそろお昼の時間だもんね下降りたら売店でなんか買うよ」
「あ、そうだった。またリフト乗らなきゃじゃん」
「景子、また手を握っててくれよ」
「はい、はい、僕ちゃん行きましょうね」
「俺を子供扱いすんなよな」
「リフトに1人で乗れないなんて子供じゃん」
「…」
2人で売店に行き景子にサンドウイッチを買ってもらいました。
近くのベンチに2人で座ってサンドウイッチを食べました。
一箱食べ終わってから「う〜ん。まだ食えるな」
「トクラお腹すいてるって言ってたもんね。もう一箱買ってくるよ」
景子が2箱目のサンドウイッチを買って来てくれました。
「お、悪いなあ。なんか入場料よりこっちの方が高くついたんじゃないか?」
「いいよ、気にしないでお腹一杯食べて」
「うん。このタマゴサンドが好きなんだよな」
「へえー。トクラってタマゴサンドが好きなんだ」
「そ、景子の次に好きなのがタマゴサンド」
「…」
「おい、なんか反応してくれよ。もしかして気を悪くしたか?」
「トクラの言うことってどこまでが本気でどこからが冗談なのか分かんないなあって…」
「ゴメンな」
「なあ景子。今度の土日ってあいてるか?」
「あいてるけど」
「じゃあ、今度の土曜日にまた付き合ってくれるか?」
「俺、景子と行きたいとこあるんだ」
「どこなの行きたいとこって」
「どこって、ここじゃあ言えないけどな。男が女と行きたいとこって言えばあそこしかないだろ?」
「…」
「あ、今Hなとこ想像しただろ?」
「もう!そう言って茶化す。ちゃんと言わないんだったら私行かない」
「ゴメン。俺さあ、景子の笑顔好きだから、なんとか笑わかそうとしちゃうんだよな。」
「行き先は秘密だけど変なとこじゃないから。な、付き合ってくれよ。お願いします」
「うん。それなら行ってもいいかな」
つづく
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