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「鬼滅の刃」無限城編が台湾でも大ヒット。400億突破予想よりも注目すべき海外の反響

7月18日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』ですが、公開から25日間で既に興行収入が220億を突破し、国内歴代興収ランキングで6位に入るなど、記録更新が続いています。

その一方で、日本の報道の注目点は、「無限列車編」の打ち立てた国内興収400億円超えという記録を、「無限城編 第一章」が超えることができるかどうかの議論に移ってきているようです。

ただ、実は「無限城編 第一章」のヒットについて、国内の興行収入だけで議論をするというのは、ある意味で不十分と言えます。
なぜなら「無限城編 第一章」の話題は、すでに並行して海外にも波及しはじめているからです。
  

台湾でも歴史上5位のオープニング興収を達成

まず「無限城編 第一章」は、すでに8月8日に台湾で公開されており、8月8日深夜の最速上映から多くの人が殺到していました。

台湾における8月8日〜10日の3日間のオープニング興行収入は1.76億台湾ドル(約8億4000万円)と、2020年に台湾におけるアニメ映画の初動歴代1位を記録した「無限列車編」を50%も上回る記録を叩き出したそうです。

実際に台湾のメディアのYouTubeの動画を見ると、日本同様に、台湾の映画館でも多くの人が行列を作っている様子が分かります。

なにしろ、今回の「無限城編 第一章」のオープニング興収は、台湾の映画の歴史上5位の記録で、その前後には「アベンジャーズ」シリーズや、「ワイルドスピード」シリーズなどのハリウッド大作の作品が並んでいるそうです。

つまり台湾においても「鬼滅の刃」は、ハリウッド大作並みの熱狂を生む映画となっているわけです。
 

東南アジアの国々でも「無限城編 第一章」の予約状況が話題に

台湾は映画以外でも日本のコンテンツが昔から人気がある国ですので、特殊な事例と捉える方も少なくないと思いますが、こうした「鬼滅の刃」の熱狂は他の国々でも見ることができます。

8月12日にはタイでも「無限城編 第一章」の公開がはじまりましたが、既に予約時点で興行収入が2000万バーツを突破したことが大きなニュースとして報道されているのです。

タイは2020年に「無限列車編」が公開された際に、5日間の興行収入が5000万バーツを突破し、タイで公開された日本アニメで1位の記録を更新した歴史があり、今回もその記録更新が期待できるというわけです。

さらに8月14日〜20日にかけて、マレーシア、インドネシア、ベトナムなど東南アジアを中心に7カ国で公開される予定になっていますが、例えばベトナムでは先行上映の段階で記録的な収益を上げたことが既にニュースになっているなど、公開前から様々な形で話題になっているようです。

東南アジアの国々においても、「無限城編 第一章」が「無限列車編」の記録を塗りかえていく可能性は高いと考えられるわけです。
 

「無限列車編」で1位を獲得した米国でも9月に公開

さらに最も注目されるのは、9月11日に「無限城編 第一章」が公開される米国での反響でしょう。

実は「無限列車編」は、米国で2021年4月に公開された際、オープニング興行成績で外国語映画の歴代1位を叩き出し、公開2週目の興行収入が全米1位を獲得する快挙を成し遂げた歴史があります。

参考:全米No.1となった劇場版『鬼滅の刃』米国での「リアルな評価」

この快挙はコロナ禍がまだ収束しておらず、北米で稼働している映画館が全体の57%というタイミングだったこともあり、他のライバルがいなかったことで達成できた特殊な記録と捉える人も少なくありませんでした。

ただ、逆に見れば、「無限列車編」の米国における興行収入は、コロナ禍で映画館が本格稼働していない中での記録であり、今回の「無限城編 第一章」は米国の全ての「鬼滅の刃」ファンが映画館に足を運べる状況での記録になるとも言えます。

「無限列車編」の北米における興行収入が48億円規模だったことを踏まえると、今回の「無限城編 第一章」はそれを大きく上回る記録が期待できるわけです。
 

最も注目すべきは国内興行収入ではなく全世界興行収入

こうした海外の様々な状況を踏まえると、実は「無限城編 第一章」で最も注目すべきは「無限列車編」における国内興行収入の404億円を超えるかどうか、という点ではなく、全世界興行収入記録の517億円をどれだけ上回ることができるか、という点であると感じる方は少なくないはずです。

これまで日本で制作された映画は、基本的に日本市場をターゲットに作られていることが多く、メディアによる報道においても国内の興行収入だけが言及されることが基本でした。

ただ「鬼滅の刃」は既にそのターゲットを明確に世界に拡げており、ハリウッドの大作映画同様に、国内興行収入だけでなく世界興行収入を軸に報道すべき作品になってきていると言えるのです。

日本を除いた海外での興行収入に目を転じると、「無限列車編」の興行収入は8843万ドルで日本の映画の中では8位。

1位に「君たちはどう生きるか」の2億2000万ドル、2位に「すずめの戸締まり」の1億8700万ドルなどが並びます。

現在、国内の「無限城編 第一章」の興行収入が300億円を超えるのはほぼ確実であることを踏まえると、海外の興行収入で「君たちはどう生きるか」の記録を更新することができれば、全世界興行収入記録の517億円の大幅な更新も見えてくるわけです。
 

「鬼滅の刃」は世界の歴代映画興行収入トップ200に入れるか

なお「無限列車編」の517億円という全世界興行収入記録は、円ドル換算レートにもよりますが、IMDbにおいては4.85億ドルという記録になっています。

一方、この記事執筆時点で、世界歴代映画興行収入のトップ200の200位は「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」の5.95億ドルです。

つまり、少し気が早い話になりますが、「無限城編 第一章」が「無限列車編」に1.1億ドル上乗せした記録を叩き出すことができれば、日本の映画として「無限城編 第一章」が世界歴代映画興行収入のトップ200入り、という歴史的快挙を達成できることになるわけです。

こうした話は、従来の日本映画においては笑い話だったかもしれませんが、現在の「鬼滅の刃」人気であれば、決して夢物語ではありません。

そもそも、IMDbのサイトにおいても、2020年に公開された映画の中で「無限列車編」は、世界1位の興行収入をあげた映画として記録されています。

(出展:Box Office Mojo by IMDbPro)

もちろん、これはコロナ禍という異常事態での記録ではありましたが、既に「鬼滅の刃」というコンテンツ自体はこうした世界ランキングに名前が並ぶ作品になっているのです。
 

世界で最も人気のあるアニメシリーズの座も獲得

なにしろ「無限列車編」が米国で公開されたのは、4年以上前の2021年のこと。

まだNetflix経由で世界で日本アニメが視聴されるようになった初期の頃の快挙です。

Netflixの発表によると、現在はNetflixの契約者の50%以上がアニメの視聴経験があり、Netflixでのアニメの視聴時間は5年間で3倍に増加しているそうです。

その結果、「鬼滅の刃:柱稽古編」のアニメはNetflixの2024年の下半期だけで、1290万ビューを叩き出しており、その総視聴時間は5110万時間にも及びます。

しかも、「鬼滅の刃」は世界のファンが投票する「クランチロール・アニメアワード2025」で、「ONE PIECE」をおさえて最優秀継続シリーズ賞を受賞しており、名実共に世界で最も人気のあるアニメシリーズの座を手にしているのです。

もう一つ象徴的なデータと言えるのが、2024年7月1日に『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』特報として公開された予告編動画の再生数です。

アニプレックスにアップされた日本語版と同様の英語版の動画がCrunchyrollにもアップされているのですが、日本語版の再生数が835万回であるのに対し、英語版の動画は1766万回と倍以上再生される結果になっているのです。

海外の「鬼滅の刃」ファンの規模の多さが透けて見える数値と言えます。
 

海外での「鬼滅の刃」熱は日本以上かもしれない

さらに7月には集英社が「鬼滅の刃」のコミックスの全世界累計部数が2億2000万部を突破したと発表して業界で大きな話題となりましたが、この際にも国内の累計部数が約1億6400万部に対して、海外の累計部数が約5600万部もあると発表されていたのも重要なポイントと言えます。

実は漫画「鬼滅の刃」は2021年2月の段階では1億5000万部を突破していましたが、この時点ではほとんどが国内向けだったと考えられます。

それから4年の間に、海外でコミックスを買うようなコアな鬼滅の刃ファンが増えたため、海外でも5600万部もコミックスが売れる結果になっていると考えられるわけです。

この期間の国内の販売部数は1400万部のようですから、コミックスの販売部数だけでいえば、この4年間は海外の方が日本よりも盛り上がっていたとも言えるわけです。

いずれにしても、実は私たち日本人が感じている以上に、世界の「鬼滅の刃」ファンはこの4年間の間に大きく増加している可能性があるのは間違いありません。
  

日本映画の興行収入も全世界興行収入で報道する時代の始まりに

もちろん、だからと言って映画の興行収入がどこまで伸びるかというのは、他のヒット映画の存在や、海外においても日本同様に多数の上映チャンスが劇場で確保できるかなど複数の要素がからむため、現時点での「無限城編 第一章」の全世界興行収入更新の予測は希望的観測に過ぎません。

ただ「鬼滅の刃」は、これまでにも複数配信サービスへの作品配信や、本編の映画公開など様々な日本アニメや映画の歴史を塗りかえる挑戦を積み重ねてきた歴史があります。

今回の「無限城編 第一章」のアニメーションは間違いなくハリウッドの大作に引けを取らないクオリティに達しています。

映画の制作費自体も公開されていないものの、通常の映画の制作費が2〜3億円が中心といわれる日本のアニメ映画としては破格の数十億円規模に達しているのではないかという見方をする専門家が多いようです。

ただ、ハリウッドの大作映画の制作費が100億円を軽く超えるのが普通であることを考えると、「無限城編 第一章」は日本の映画界が本気で世界をターゲットに映画作りをする時代に突入したことの象徴と言うべき作品なのかもしれません。

「鬼滅の刃」がこれまでの日本の映画業界の「常識」を超えて世界でヒットする作品となれば、日本の映画のヒットを国内興行収入のみで議論するのは時代遅れになる未来が来てもおかしくないはず。

まずは「無限城編 第一章」が、どれだけ海外のファンに広がっていくか注目したいと思います。

この記事は2025年8月13日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。

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徳力基彦|エンタメビジネスウォッチャー ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。 このnoteでは、日本のエンタメのミライを密かに応援すべく公開メモを綴っています。 XのスペースとYouTubeライブで雑談部屋も開いてますので、よければ是非ご参加下さい。

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