ベルフェイス中島氏が語る「再起の教訓」〜キャッシュアウト寸前から30億円調達までの意思決定〜 イベントレポート(TOKYO Re:STARTER)
「事業の傾き」「失敗」は、再起の旅における最大のハードルであり、同時に最大の学びでもある──。今回のトークセッションは、起業家が窮地でどう判断し、どう立ち上がったのかという“再起までの意思決定”を軸に展開されました。
TOKYO Re:STARTERでは、ベルフェイス株式会社 代表取締役の中島一明氏をゲストに、株式会社ガイアックス 執行役の佐々木喜徳氏がモデレーターを務め、顧客半減・倒産寸前という局面からV字回復を果たし、再び30億円の資金調達を実現した中島氏の判断軸を伺いました。後半は登壇者・参加者を交えた特別交流会、TOKYO Re:STARTERのアクセラレーションプログラムの個別相談会も実施。再挑戦中の起業家同士で互いの現在地を共有し合う時間となりました。
※本イベントはオフレコを前提としているため、本記事では内容の一部を記載しています。
「固定費」は想像以上に重い──成長期に潜む油断

セッション冒頭では、まず参加者から「自分はいまSaaSのピボットの最中にいる」という現状共有が投げかけられました。中島氏はその問いに、自身の経営の歩みを時系列でひもときながら応答していきます。
ベルフェイスは、創業から数年で順調に成長し、コロナ禍直前に大型の資金調達を実現。オンライン商談という追い風に乗って、組織を一気に拡大していきました。ところが、その後はZoomやTeamsの台頭で顧客の解約が連鎖し、売上構造が半年で激変。毎月数億円規模のキャッシュアウトが続く局面に追い込まれていきます。
その渦中で中島氏が痛感したのが、「固定費を増やすことの怖さ」だったといいます。成長過程で膨らんだ固定費はそう簡単には動かせない──。事業の好調期にこそ、組織の意思決定は慎重であるべきだ、というメッセージは、いままさに同じ判断を迫られている参加者の胸に重く響いていました。
また、「お金が減っていく感覚」についての話題も印象的でした。数年前までは数億円の調達に必死だった会社が、その2年後には毎月数億円が消えていく。額の桁は変わっても、起業家が抱えるプレッシャーの質は驚くほど変わらない──「足りないお金が3億円でも300万円でも、相対的には同じ苦しさ」という中島氏の言葉は、ステージの異なる参加者全員にとって等しく示唆的でした。
やるなら「一回・大きく」──意思決定のスピード感

再起のために行った3つの意思決定の1つ目は、組織の大幅な縮小。
中島氏が今振り返って強調していたのが、「やるなら一回しかやらない。一気に、大きくやる」という原則でした。じわじわと小出しにすると、組織にも経営にも傷が残り続ける。フェーズが変わるところまで一度で踏み込まないと、その先の打ち手が動かなくなる──と。
同時に、起業家にとって最も重く苦しい判断のひとつ「人を減らす」ことについて、中島氏は意外なほどフラットに語っていました。「残ってくれた人を仲間と捉え、去った人を恨まない。」それは決して冷たさではなく、起業家が崩れず立ち続けるためのスタンスである、という整理でした。
ニッチに深く掘る──「捨てる」ことで生まれた再成長
2つ目と3つ目の意思決定は、セットで語られました。
「営業で売る会社」から「プロダクトで選ばれる会社」への転換、そして全業界向けの提供から、ある特定の業界・職種への徹底的な絞り込みです。
「全方位で勝とうとすると、結局、誰の何にも刺さらない」。中島氏は、ある特定のユーザー層だけが圧倒的に高い使い方をしていることに気づき、そこに振り切る決断をします。それは同時に、それ以外の顧客に「嫌われる覚悟」を持つということでもあった、と。
ニッチに絞ることは、市場規模(TAM)が小さくなるリスクと表裏一体に見える──しかし、と中島氏は続けます。
本当にナンバーワンを取れるニッチを設計できれば、海外展開や事業売却という選択肢も含めて、複数のエクイティストーリーが描けるようになる。実際、特定カテゴリでの突き抜けた成長を「点」で見せることで、再び大型の資金調達につなげていったといいます。
「全社の売上は下がっていても、特定カテゴリの伸びを示すことが、投資家コミュニケーションの突破口になる」──ストーリーの作り方ひとつで、同じ事実の見え方は変わる。ファイナンスの実務的な肌触りが伝わるパートでした。
「勝ち筋」が見えれば人は頑張れる──病まない経営者のセルフマネジメント

後半に向かうにつれて話題は、危機のさなかに起業家自身がどう立ち続けるか、というテーマへ移っていきました。
中島氏の整理は明快でした。「人は、苦しい状況だから病むのではない。次に何をすればいいかが分からないときに病む」。
だからこそ、闇雲に動く前に、考え抜いて自分なりの"勝ち筋"を見つける時間を確保する。日々のオペレーションの忙しさにかまけて、最も大事な「考える時間」が後回しになっていないか──会場の起業家にとって耳の痛い問いでもありました。
もう一つ印象に残ったのは、「空元気でもいいから、仲間の前では元気でいろ」というメッセージです。トップが暗い顔をしていれば、組織は拠り所を失う。弱音は家族など別の関係性で吐けばいい。これは精神論ではなく、組織を機能させるための実務的なリーダーシップ論として語られていました。
メンタルが強いか弱いかではなく、勝ち筋を見つけるための"考える時間"と、社内外で振る舞いを切り替える"建付け"を持っているか。再挑戦を続ける起業家のメンタルマネジメントとも通底するメッセージが、終盤にしっかりと差し込まれていました。
最後に:「失敗」は終点ではなく、次の挑戦の解像度を上げる資源
質疑応答や交流会では、参加者から資金調達、チームビルディング、ピボットのタイミングなど、極めて具体的な相談が次々と寄せられ、登壇者と参加者の対話が会場の至るところで生まれていました。
今回のセッションが参加者に残したのは、危機の只中で取った「3つの意思決定」の手触りと、それを支えた経営者のスタンスでした。失敗は終点ではなく、次の挑戦の解像度を上げる「資源」になる──。
TOKYO Re:STARTERとしても、再挑戦の場を必要とする起業家に、こうした実体験に基づく学びの機会を届け続けていきたいと感じる時間となりました。
当日実施されたアクセラレーションプログラム(現在プログラム募集中)の個別相談会も、10名ほどが運営事務局への相談を行い、再起をかける起業家たちの次なる一歩が垣間見える瞬間となりました。
【告知】アクセラレーションプログラム、募集中

再起を図る起業家の「失敗をいかに次に繋げるか」という意思。その先にある具体的な支援がTOKYO Re:STARTER STUDIOのアクセラレーションプログラムです。
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