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バレエDVD感想「ボリショイ・バレエ学校の全て」(ナタリア・オシポワ、秋元康臣 出演)


2003年に制作されたドキュメンタリー「ボリショイ・バレエ学校の全て」のDVD(日本語字幕)を鑑賞しました。
実はこの映像の一部をボリショイ・バレエ学校のイリヤ・クズネツォフ先生がご自身のYoutubeにアップしており、いつか全編を見たいなとずっと思っていました。→ Youtube:Памяти педагога... (Уксусников)

先日Twitterで舞踊評論家の森菜穂美さんがこのドキュメンタリーについて投稿されていて、日本語版DVDが発売されていることを知り速攻購入してしまいました😊(字幕ありがたや…)

「ボリショイ・バレエ学校の全て」基本情報

英題:Bolshoi: Between Fame and Drill 2003
版元:Parthenon Entertainment Ltd.
監督: Christian Schulz
時間:58 min.
発売日:2005年9月9日
日本語版DVD出版元:TDKコア
出演:マリーナ・レオノワ、イゴール・ウクススニコフ、ナタリア・オシポワ、ヴラディスラフ・ラントラートフ、アルテミイ・ベリャコフ、秋元康臣、パーヴェル・コズロフ

感想

日本ではサンクトペテルブルクのワガノワ・バレエ学校のドキュメンタリーはよく放映されますが、モスクワのボリショイバレエ学校に密着したドキュメンタリーは滅多に見ないのでかなり貴重な映像です。
またワガノワのドキュメンタリーは基本的には女子生徒への密着が多いです。こちらの「ボリショイ・バレエ学校」の全てはナタリア・オシポワへの密着を基軸としつつも、パーヴェル・コズロフなど年若い男子生徒にも密着されていて面白いなと思いました。

最初からタンデュという足を床の上で擦る動きが映し出され、その時の擦る音がクローズアップされていることが面白いです。
色々なバレエのドキュメンタリーを見てきましたが、画面映えする足を高く上げるような映像は多いですが、地味なタンデュや床を擦る足音に最初からフォーカスするドキュメンタリーはなかなか斬新でバレエの地道な訓練を表しているようで素敵です。

このドキュメンタリーで最もフォーカスされているナタリア・オシポワは当時7年生の16歳で、ボリショイ・バレエ学校校長のマリーナ・レオノワ先生の生徒です。オシポワの自宅や両親も登場し、家族総出でサポートしていることが伺えます。
インタビューでは「このまま練習すれば成功するしここは良い環境」と述べながらも、「ボリショイで踊りたいけど専属のダンサーとしてではなく、契約ベースで色々な踊りを踊っていきたい」発言しています。オシポワ学生時代から海外志向を持っていたんだなと分かります。

ちなみに日本のバレエファンに大人気の秋元康臣さんはレッスン風景にちらっと登場しますが、残念ながらインタビューはありません。
秋元さんは試験直前の映像も出てくるのですが、同じ並びにボリショイプリンシパルのウラディスラフ・ラントラートフもいるなど、錚々たる顔ぶれです。

先生達のインタビューによると、ボリショイ・バレエ学校への入学枠は当時で44名/年。最初は仮入学という扱いで、先生の言うことにきちんと耳を傾けられるかどうかが見られるそうです。先生たちは1年目で骨の構造や筋肉の収縮、自分の体をどれだけ動かせるかなど、その子の才能を見極めます。
普通の子供は学校を卒業してから自分の将来を考えますが、バレエ学校では10歳で将来が決まってしまいます。子どもたちはこの歳で将来なんて分からないと考えるといかにバレエ界が厳しく残酷な世界かということがよく分かります。

日本人だとボリショイ・バレエ学校へ入学許可が降りたとなると本人も家族はその時点でのバレエライフの成功を確信しそうですが、ロシアの生徒たちはもっとこざっぱりしているというのか日本人ほどはしゃいでいない様子です。バレエ学校はある種の職業訓練校なので、日本で言うなら防衛大学校に入るような感じなのかもしれません。
ちなみに試験は厳しいですが男の方が楽だそうです。女の子は太ってると点数が引かれるから必死に痩せる必要があります。成績はAとかCとかEで評され、誰がどの点数かみんな分かります。もちろん落ちる子もいます。

新入生の中にはボリショイ・バレエ学校入学までバレエを習ったことも無い生徒もいます。10歳のパーヴェル・コズロフ君は「この学校の先生になりたい。先生だから子供相手だから公演で世界中を旅するより楽しい。」と新入生なのに達観した人生観の持ち主です。
とはいえ教師陣はパーヴェルは親に強要されたのでは無く、本当に好きで踊ってるということを評価しています。ちなみに先生たちはお金持ちの子供には厳しくなく、パーヴェルのような奨学生には熱心に見るそうです。新入生の頃から期待されていたのでしょう。
家族とのエピソードも出てきますが、お父さんはモスクワには行ったことが無く、パーヴェルは安いチケットを手に入れて劇場に案内してくれると約束したそうです。バレエを見に行くことを家族が楽しみにしている様子が伺えます。

男子のクラスを担当しているイゴール・ウクススニコフ先生は73歳。長らくサンクトペテルブルクのマリインスキーバレエ団で踊っており、ボリショイバレエ学校で30年以上教えている大ベテランです。
フラッペとフォンデュというバレエの基礎的な動きについて、フラッペという足を床に打ち付ける動きは「オセロー」という作品のイアーゴの下劣さを表し、優しい動きのフォンデュは、ロミオがジュリエットに愛を表す動きと説明しています。ダンサー達が毎日練習する動きは音楽と融合して見事な芸術になるのです。彼の元ダンサーならではの説明は勉強になりました。

エゴール・ドゥルジーニンという振付家がナタリア・オシポワにコンテンポラリーを振り付けるシーンもあるのですが、オシポワはクラシックバレエから切り離して全く違う踊りをする能力が備わっているそうです。クラシックもモダンも元は同じダンスなのに、クラシックダンサーがモダンダンスに切り替えるのは難しく動けなくなり、指導者の言葉を理解できず、自分が何を求めら得ているか分からなくなることが多いという指摘はなかなか興味深いです。

出演者のその後

ナタリア・オシポワ(Natalia Osipova)
今更説明するまでもありませんが、ボリショイ・バレエ団でプリンシパルとして踊り、現在はロイヤル・バレエ団でプリンシパルとして活躍。学生時代に話していた海外志向を実現させました。

パーヴェル・コズロフ(Pavel Kozlov)
ドキュメンタリー撮影時に新入生だったパーヴェルは最終的にはアルテミィ・べリャコフや秋元康臣さんの先生であるイリヤ・クズネツォフ先生の生徒となりました。現在の所在は不明なのですが、ボリショイオペラのエキストラに名前が掲載されているので、もしかしたらPavelかもしれません。https://2011.bolshoi.ru/en/persons/opera/mimans/

秋元康臣(Yasuomi Akimoto)
ボリショイ・バレエ学校卒業後、NBAバレエ団やKバレエで踊り、その後ロシアのチェリャビンスク・バレエ団や東京バレエ団でプリンシパルとして活躍。現在は東京バレエ団を退団されてフリーランスとして活躍されています。

マリーナ・レオノワ(Marina Leonova)
ボリショイ・バレエ学校で20年以上校長を務めました。教え子にはナタリア・オシポワや新国立劇場バレエ団元プリンシパルの長田佳世さんがいます。
先日ボリショイ・バレエ学校の校長職をスヴェトラーナ・ザハーロワが務めることが発表されましたが、まだまだレオノワの影響力は健在です。娘のアンナ・レオノワはボリショイでファースト・ソリストを務め、現在はボリショイの教師をしています。

イゴール・ウクススニコフ(Igor Uksusnikov)
2009年永眠。ボリショイ・バレエ団、マリインスキー・バレエ団で活躍し、ボリショイ・バレエ学校で長らく教鞭を執った名教師でした。

Kirov Ballet


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