[仕事術28] 弁護士が依頼者から裁判をもっと早く終わらせてほしいと言われたとき(依頼者とのコミュニケーション)
先輩弁護士:弁護士として、依頼者に「この裁判」は訴訟の提起から少なくとも1年はかかると伝えたとします。そうすると、依頼者が、弁護士に「裁判ってそんなにかかるんですね。もっと早くならないんですか。」と言われたとします。よくあるやりとりなのですが、こうした会話にどんなふうに応えるかが悩ましいところです。
後輩弁護士:結構、よくある会話ですね。依頼者のなかには、裁判は訴状を出せば、1-2回の審理で判決までたどり着くと思っておられることがありますね(どこでそういうイメージを抱かれたのだろう)。
先輩弁護士:まず、弁護士としてよくない回答方法が「できるだけ早く終われるように頑張ってみます」というような答え。よくない理由は、あたかも原告側が"がんばる"ことによって裁判が早く終われるような、誤解を依頼者に与えていると思うわ。
後輩弁護士:たしかに民事訴訟の制度は、原告と被告と裁判官という3者がいるなかで、原告側が「早く終るため」に工夫したところで、限度があるんですよね。被告側が事実関係自体を争いたいといったり、法律の解釈適用を争いたいと言えば、当然長引きます。
先輩弁護士:次に、弁護士としてよくない回答方法が「もっと早く終わりたいとおっしゃっても、私にはどうすることもできません」というような答え。実際には、こういう回答をする弁護士はいないと思うけど・・・。ついつい、頭のなかで、言いたくなったりすることはあるようです。
後輩弁護士:制度の性質上、裁判は、どちらか一方が意図的な引きのばしモードに入ったら、ほんとうに長引いてしまうのですが「どうすることもできない」というのは言いすぎですね。
先輩弁護士:私が心がけているのは。①依頼者の気持ちを受け止めることと、②司法制度の平均的な像は説明することと、③和解か判決かの枝分かれは説明することかなあ。まず「こういう揉め事で裁判が長引くとホントイライラしますよね」という共感は伝えた方がいいと思っているわ。ただ、その上で、こうした事件の平均的審理時間は1年ですというように、「統計」のような平均は受け止めて頂く必要があると思っているの。その上で、どうしても早期終結を希望されるなら、当初の請求額より譲歩して、判決で終わることも視野に入れた方がいいことも、どこかのタイミングではお伝えしているわ。
後輩弁護士:なるほど。私は、なんだか裁判が進んでいかないことが、自分への批判・苦情のようなニュアンスで受け止めてしまって、心が傷つくことがあるけどね。
