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鬼死骸記録 Ⅲ|千年村落に関する断片的覚書

この物語は、実在の土地・史跡を基にした
フィクションであり、神話であり、記録である。
一つの語りとしての記録である。
(鬼死骸村探検隊|実在する旧鬼死骸村を舞台にした物語)


<あらすじ>
鬼死骸村の研究を進めるうち、沢渡は一つの仮説にたどり着く。
村は単なる地理的な場所ではなく、
人々の記録と語りによって維持される「情報の共同体」ではないか。
地名が語られる。出来事が記録される。伝承が繰り返される。
その積み重ねによって、村という構造が長い時間の中で保たれていく。
もし記録が止まったとき、村はどうなるのだろうか。
鬼死骸村の千年の断片を整理しながら、共同体と情報の関係を考える覚書。

本編:約8,800文字


第三部|揺らぐ村

第一章:便利という選択

― 音のいらない暮らし ―

変化は、音を立てない。
最初に変わったのは、だった。
七つ盛りの風鳴りが、弱くなった。

※欄外注
風が止んだわけじゃない。
【沢渡】


新しい水。
響子の研究の名目は、水質改善だった。
地下水の流路を解析し、簡易ろ過施設を設置する。
水は、確かにうまくなった。


村人の評価。
「ありがたいよ」
「便利になった」
「若いもんも、戻ってくるかもしれねえ」
誰も、反対しなかった。


ケンジの違和感。
「……あれ?」
ケンジは、井戸のそばで首をかしげた。
「音、違くないっすか」


消える雑音。
昔は、井戸には、雑音があった。
石が鳴り、水が鳴り、空気が鳴る。
今は、静かすぎる。

※欄外注
雑音は、
村の安全装置だった。
【不明】


沢渡の記憶。
沢渡は、幼い頃を思い出していた。
夜、眠れないほど、うるさかった音。
だが、あの音は
「生きている証」
だった。


響子の説明。
「ノイズを、除去しただけです」
響子は、データを示す。
「効率は、三割向上」


「効率」という言葉。
その言葉に、
沢渡は、何も返さなかった。


あかりの姿。
鬼死骸停留所跡。

一人で座っていた。
唄ってはいない。

※欄外注
今日は、
歌わない日。
【あかり】


夜、
村は、よく眠れた。
誰も、目を覚まさなかった。


七つ盛りは、鳴らなかった。
だが、完全な静寂でもない。

“待っている音”
だけが、残っていた。


便利は、優しい。

だが、優しさは選択を迫る。
音を残すか。
音を消すか。

村は、まだ選んでいない。


第二章:合意

― 多数は、誰の声か ―

寄合の日。
久しぶりだった。

※欄外注
前回の寄合は、旧奥州街道の修繕だった。
【沢渡】


円になる人々。
公民館の畳。
人々は、円になって座る。
真ん中には、何も置かれない。


響子の提案。
「次は、電力です」
小さな発電設備。
太陽光と、地熱。
「外部依存を、減らせます」

善意の言葉。
「災害時にも、役立つ」
「高齢者の負担も減る」
どれも、正しい。


沢渡は、黙っていた。
言葉が、見つからない。

ケンジが、おずおずと手を挙げる。
「えっと……」

ケンジの素朴な疑問。
「もし、停電したら、どうなるんすか」
笑いが、少し起きる。

響子の返答。
「冗長化します」
「バックアップも用意します」

その言葉は、
人を安心させる。

※欄外注
技術は、安心を先に与える。
【不明】


「では、賛成の方」
手が、次々と上がる。

反対は、わずかだった。
沢渡は、手を挙げなかった。
下ろしもしなかった。

「可決です」
その一言で、
村は前に進む。


寄合のあと。
外は、静かだった。

遠くで、あかりの唄が、
ほんの一節だけ。

風に混じって、
聞こえた。

※欄外注
唄は、決議のあとに鳴る。
【あかり】


沢渡とあかり。
沢渡は、振り返る。
だが、姿は見えない。

その日から、村は、二つに分かれた。

言葉ではない。
感覚で。


合意は、正しさを保証しない。
だが、進行方向を固定する。

村は、一度、選んだ。


第三章:残る者/離れる者

― 動かない地面、動き始める人 ―

1.張り紙
掲示板に、一枚の紙。
「工事開始予定」
日付は、赤字で書かれていた。

2.若者の背中
ケンジの同級生が、村を出る。
軽トラの荷台。
布団と、段ボール。

※欄外注
出ていく理由は、
いつも一つじゃない。
【沢渡】

3.見送り
誰も、引き止めない。
「またな」
それだけ。

4.ケンジの冗談
「都会で有名人になるなよ」
笑いは、短い。

5.静かな空白
エンジン音が、消える。
そのあと、長い沈黙。

6.沢渡の違和感
沢渡は、山を見る。
七つ盛りの方向。

7.一つだけ
その夜。
七つ盛りのひとつだけが、鳴った。

※欄外注
本来、同時に鳴るはず。
【不明】

8.周波数のズレ
低い。
かすれた共鳴。
誰にも聞こえないはずの音。

9.沢渡の記録
沢渡は、ノートを開く。
時刻。
風向き。
地鳴り。

10.科学の言葉
「部分的共振」
「外部刺激」
理屈は、つく。

11.だが
それでも、腑に落ちない。

12.響子の訪問
翌朝。
響子が、沢渡の元へ来る。

13.設計図の断片
「見てほしいものが、あります」
紙の端。
切り取られた図面。

14.円と線
円が、重なっている。
七つ。
だが、一つだけ、ずれている。

※欄外注
ズレは、誤差か、意図か。
【不明】

15.響子の言葉
「実験です」
「村が、どう動くか」

16.沢渡の問い
「人を、含めて?」

17.間
響子は、少しだけ黙る。

18.笑顔
「もちろんです」

19.不安
その笑顔が、沢渡を凍らせる。

20.あかりの影
その夜。
停留所跡。
あかりが、一人座る。

21.唄はない
今日は、唄わない。
ただ、地面に手を当てている。

※欄外注
鳴る前は、触る。
【あかり】

22.選択の余波
残る者。
離れる者。
鳴る塚。
沈黙する塚。

23.結語
村は、二つに割れ始めた。
意見ではなく、存在そのものが。


第四章:計測される信仰

― 祈りが数値になる日 ―

1.静かな工事
鹿島神社の境内に、白い三脚が立てられた。
工事車両は、一台だけ。
音は、ほとんどしない。

2.村人の視線
誰も、止めない。
誰も、積極的に手伝わない。

※欄外注
抵抗より、沈黙の方が進行を早める。
【不明】

3.設置されるもの
• 振動センサー
• 地磁気計
• 温度・湿度ログ
• 音響マイク
いずれも、小型。目立たない。

4.名目
「老朽化調査です」
「地盤の安全確認」
誰も、嘘だとは言わない。

5.沢渡の到着
沢渡は、遠くから見ている。
境内には、入らない。

6.祈りの位置
拝殿。
賽銭箱。
鈴。
そこから、半径三メートル。

7.設計の意図
響子は、地面にチョークで印をつける。
円。
円。
円。

※欄外注
七ではない。
六と、余白。
【沢渡】

8.説明
「ここは、特異点です」
響子の声は、落ち着いている。

9.村人の質問
「それで、何が、分かるんですか?」

10.響子の答え
「“祈り”の揺れです」

11.言葉の違和感
揺れ。
測定。
ログ。

12.沢渡の介入
「やめろ」
初めて、沢渡が声を上げた。

13.空気が変わる
工具の音が、止まる。
誰も、動かない。

14.沢渡の言葉
「祈りは、現象じゃない」

15.響子の視線
静か。
感情が、読めない。

16.反論
「現象でなければ、何ですか?」

17.沢渡
「関係だ」

18.間
風が、吹く。
鈴が、鳴る。

19.記録開始
響子は、タブレットを操作する。

20.数値
波形が、走る。
ログが、溜まる。

※欄外注
鳴ったのは、
鈴か。地面か。
【不明】

21.村人の安心
「ちゃんと数字で分かるなら…」
誰かが、そう言った。

22.合意の錯覚
納得。
理解。
安心。

23.沢渡の沈黙
沢渡は、何も言わない。

24.夜
センサーは、稼働し続ける。

25.異常値
深夜。
一瞬だけ、振幅が跳ねた。

26.原因不明
風速、安定。地震、なし。
人、いない。

27.ログの注記
響子は、メモを残す。
「想定外」

※欄外注
測定できないものは、守れない。
祖母の村がそうだった。
誰も数値を持たず、
誰も説明できず、ただ消えた
【響子の走り書き】

28.見えないもの
その時間。
あかりは、村の外れで立っていた。

※欄外注
測ると逃げる。
【あかり】

29.翌朝
異常値の話は、共有されない。

第四章・結語
信仰は、数値になった。
だが、それは理解されたという意味ではなかった。


削除|第*章|現代科学介入ログ(抜粋)

───────────────────
以下は、削除された章である。
削除された理由は、記されていない。
読むか、読まないかは、
あなたの選択である。
───────────────────

1 センサー設置記録
• 地磁気
• 振動
• 音響

2 削除ログ
• 共鳴ピーク
• 非同期反応

欄外メモ(響子)
ノイズは
排除すべきもの。


第五章:正しさの共有

― 善意が合意になる瞬間 ―

1.配布資料
集会所の机に、白い紙が並ぶ。
グラフ。
数値。
注釈。

2.タイトル
「鬼死骸地区 環境・信仰影響調査 中間報告」

3.村人たち
集まったのは、いつもの顔。
顔見知り。
親戚。
同級生。

4.響子の立ち位置
前に立つ。
だが、壇上には上がらない。

5.声の調子
低く。
穏やか。
命令ではない。

6.語られる言葉
「危険性はありません」
「むしろ、安定しています」

7.安心の理由
“科学的に”。

8.グラフの魔力
波形は、なだらか。
色分けされた安全域。

※欄外注
線が
人を安心させる。
【不明】

9.村人の質問①
「この先、何を、するんですか?」

10.響子の答え①
「少しだけ、精度を上げます」

11.“少し”
誰も、深く聞かない。

12.村人の質問②
「村の役に立つんですよね?」

13.響子の答え②
「もちろんです」
即答。

14.実例
• 湧水の安定
• 土壌データ
• 冬季凍結の予測

15.善意の可視化
生活に、直接効く話。

16.頷き
あちこちで、首が縦に動く。

17.沢渡の違和感
後ろの席。
腕を組む。

18.沢渡の視点
誰も、“目的”を聞いていない。

19.合意形成
拍手は、起きない。
だが、異論もない。

20.それは合意か
それとも、共有された正しさか。

21.決定事項
• センサー増設
• 設置期間延長
• 一部立入制限

22.言い換え
「保全のため」

23.村人の感想
「ありがたい」
「助かる」

24.感謝の対象
誰に?

25.響子は答えない
笑うだけ。

26.会合後
外。
夕暮れ。

27.ケンジの一言
「なんか、町内会っぽいよな」

28.沢渡
「だから、怖い」

29.ケンジ
「善いこと、してんだろ?」

30.沢渡
「善いことを、疑えって、言ってるんじゃない」

31.本音
「善意が
 選択肢を
 消す時がある」

32.ケンジの沈黙
分からない。
だが、笑えない。

33.夜の鹿島神社
センサーが、また点灯する。

34.新しいログ
振動値、
微増。

35.原因
不明。

36.共有されない情報
異常値は、「ノイズ」と分類される。

※欄外注
ノイズとは、
望まれない意味のこと。
【あかり】

37.あかりの位置
停留所跡。
石のベンチ。

38.唄
声は、小さい。
だが、確か。

39.地面
七つ盛りの方向で、微かに応答する。

40.結語
村は、同じ正しさを共有した。
だがそれは、同じ未来を選んだ
という意味ではなかった。


第六章:計画と生活

― 便利さは、静かに選択肢を奪う ―

1.朝の変化
水が、止まらなくなった。

2.正確には
止まらなくなったように見えた。

3.沢渡の蛇口
ひねる。
一定の水圧。


ケンジの驚き
「おお、すげえな」

取水バルブが、
夜間に調整された。

誰が?
響子のチーム。

名目:「実証実験」


村の反応。
誰も、文句を言わない。

夜道が、明るい。
LED。
消費電力
最小。
自動点灯。

老人の声、
「転ばなくて済む」

子どもの声、
「星が見えにくい」
星の価値については、誰も、議題にしない。

※欄外注
失われるものは
いつも数えられない。
【不明】

沢渡は、響子の仮設研究棟へ。

研究棟の内部。
清潔。
静音。
整然。

沢渡の視線は、壁に、
• 水系図
• 地盤マップ
• 人口動線
• 信仰ログ

「信仰ログ?」

「生活の一部です」
響子は、説明する。

「生活は測れない」

「測らなければ、守れません」

すれ違い。
論理は、噛み合っている。
だが、価値が違う。


実験成果
• 凍結事故ゼロ
• 水不足解消
• 獣害減少

村の評価。
「もう、戻れないな」

“戻る”とは、何に?


沢渡が問う。
「もし、やめたら?」

響子、
一拍の沈黙の後、
「やめません」
「必要だから」

「数字が、示しています」


沢渡は、
「数字は、過去だ」

響子は、
「だから、未来を、予測できる」

沢渡は、未来を、選ぶものだと思っている。

響子は、未来を、設計できるものだと信じている。


外では、村人が、電灯の下で立ち話をしている。
彼らは、笑顔で、不安は、ない。

沢渡は孤立していた。
声を上げる理由が、消えていく。


夜の停留所跡には、あかりが、ひとり。

あかりの唄は、以前より、少し低い。

七つ盛りの、地中で、何かが揺れる。


響子の研究棟、モニターの測定値の新しいパターン。

予測外。
「住民満足度、上昇」
「原因不明の共鳴あり」

その行は、ログから外される。

※欄外注
消したものは、
消えていない。
【あかり】


計画は、生活に溶け込んだ。
誰も、選んだ覚えはない。

だが、もう、選び直せない、気がしていた。


第七章:善意の完成形

― 誰も命じていないのに、揃っていく ―

集会所の入口に、新しい張り紙が貼られている。

 「環境保全・安全確保のため
   一部区域の立入をご遠慮ください」

署名は、ない。
責任者は、いない。
だが、誰も、破らない。

村人の会話。
「仕方ないな」
「危ないらしいし」

危険の正体は、
誰も、説明できない。

自発的な行動。
畑の作業時間が、調整される。
夜の外出が、減る。

理由は、
「データ的に、効率がいい」

言葉が変化する。
“便利”が、“正しい”に置き換わる。

※欄外注
言葉が変わると
世界が変わる。
【不明】

沢渡は気づく。
説明が、不要になっている。

説明がないということは、異論も、存在しない。

ケンジも変わっていた。
「俺も、夜は、出ないことにした」
「誰に、言われた?」
「いや…、なんとなく」

… なんとなく。
その言葉が、一番怖い。

響子は、研究棟の人員を減らす。

理由は、
「村が、回り始めたから」
表面上は、自律。
実態は、設計通り。

村の会合。
自然発生。

議題は、
「今後の鬼死骸のあり方」

沢渡が、声を上げる。
「待ってくれ」
空気は、重くは、ならない。
「この流れ、誰が決めた?」

長い沈黙。

村人の答えは、
「みんなで」

沢渡は、
「議論したか?」

再び沈黙

響子が口を挟む。
「必要なことは、もう、分かっています」

すかさず、沢渡が、
「誰が?」
「データが」

会合は、終わる。
形式上の結論、「現状維持」
実質的な結論、「変更不可」

沢渡は孤独だった。
誰も、敵ではない。
だが、味方もいない。

夜、鹿島神社。
新しい柵は、低い。
簡単に、越えられる。
だが、越えない。

沢渡は、柵の前で立ち止まる。

祈り。
手を、合わせない。

センサーが、反応する。
響子の端末。
「想定内」

だが、数値の奥で、微細な乱れ。

※欄外注
揃いすぎた
波形は危うい。
【あかり】

停留所跡。
あかりは、地面に、小石を七つ並べる。

唄は、誰にも、聞かれない。

土の中、七つ盛りが、応答する。

響子の記録、
「社会的安定度、極大」

沢渡の理解、これは、完成してしまった。


誰も、支配していない。

だからこそ、誰も、止められない。


第八章:揺れる条件

― 設計図に、書かれていなかったもの ―

1.ずれ
最初は、誤差だった。

2.数値の違和感
同じ時間。
同じ条件。
同じ場所。
それでも、ログが揃わない。

3.響子の視線
モニターを、凝視する。

4.想定
「人為的ノイズ」

5.排除
• 風
• 温度
• 動物
• 人

6.残ったもの
何も、説明できない。

7.条件の空白
設計図には、
書かれていない要素がある。

※欄外注
条件は揃えるほど欠ける。
【不明】

8.鹿島神社・夜
柵の内側。
誰も、入っていない。

9.だが
振動値、上昇。

10.連鎖
鹿島神社 → 鬼石 → 七つ盛り。
時間差。

11.響子の判断
「因果が逆転している」

12.逆転
観測が、現象を呼んでいる。

13.沢渡の推測
「測ることで条件を満たしている」

14.響子
「そんな、非科学的な」

15.沢渡
「条件は科学の外にある」

16.停留所跡
あかり。
木のベンチ。

17.唄
いつもより、短い。

18.未完
最後の音が、欠けている。

19.応答しない地面
七つ盛りは、沈黙する。

20.響子の焦り
初めて、表情が揺れる。

21.計画の前提
• 善意
• 合意
• 安定

22.抜けていた前提
選択。

23.村の異変
小さな、不具合。

24.水圧
一瞬、下がる。

25.照明
点灯が、遅れる。

26.不満
「前は、こんなことなかった」

27.初めての声
文句。

28.響子の対応
再調整。
数値を、詰める。

29.悪循環
調整 → ずれ → 調整。

30.沢渡の確信
「これは、システムじゃない」

31.沢渡
「条件付きの神話だ」

32.響子の沈黙
理解したく、ない。

33.設計図の余白
かつて、無視した部分。

34.そこに書かれていたもの
数字ではない。

35.言葉でもない。

36.行為。

37.沢渡の提案
「測定を止めろ」

38.響子
「止めたら崩れる」

39.沢渡
「崩れるかどうかを
 決めるのは人だ」

40.村人の動揺
不具合が、不安を呼ぶ。

41.問い
「誰が、責任を取る?」

42.責任の所在
不明。

43.夜明け前
鹿島神社。

44.柵の向こう
あかりが、立っている。

45.視線
沢渡と、初めて目が合う。

46.一言
「揃えすぎると、鳴らないよ」

47.意味
説明は、ない。

48.響子の端末
警告。
「条件逸脱」

49.条件とは
• 音
• 距離
• 人の意志

50.結語
計画は、完成していた。
ただ一つ、人が選ぶ余地を除いて。


第九章:分岐する村

― 選ばされる前に、選べるか ―

1.朝の掲示
集会所の前に、二枚の紙。

2.一枚目
「インフラ最適化・完全実装計画 最終段階へ」

3.二枚目
「住民説明会(任意参加)」

4.任意
その言葉が、強調されている。

5.村人たち
立ち止まる。
読む。

6.反応
誰も、破らない。

7.説明会
参加者は、半分。

8.響子の冒頭
「ここまで、うまくいっています」

9.数値
• 事故ゼロ
• 満足度高
• 離村率低下

10.成果の提示
誰も、否定できない。

11.沢渡の位置
後方。
腕を組む。

12.質問
「完全実装って、何ですか?」

13.響子
「村の判断を支える基盤です」

14.言い換え
「迷わなくて、よくなります」

15.空気
ざわめき。

16.村人の声
「楽になるな」

17.別の声
「考えなくて、いいってこと?」

18.響子
「考えるための材料を、揃えるだけです」

19.沢渡の介入
「揃えすぎると、選べなくなる」

20.視線
集まる。

21.沢渡
「今、この村は二つに分かれている」

22.村人
ざわつく。

23.沢渡の指摘
従う側疑う側だ」

24.反発
「疑うって何だ」

25.沢渡
「選び直せるか、どうかだ」

26.響子の反論
「不安を、煽らないでください」

27.沢渡
「不安は、消せない」

28.核心
「消せると思うことが、危険だ」

29.決裂
議論は、噛み合わない。

30.結論
「最終判断は、後日」

31.だが
準備は、進む。

32.夜
村のあちこちで、工事灯。

33.無言の作業
説明は、ない。

34.ケンジ
「これ、もう、止まらなくね?」

35.沢渡
「止めるかどうかを決めるのが、最後の機会だ」

36.停留所跡
あかり。
座っている。

37.唄
歌わない。

38.沈黙
初めて。

39.七つ盛り
反応しない。

40.響子の異変
ログが、乱れる。

41.想定崩壊
モデルが、予測を失う。

42.響子の判断
「実装を、前倒しします」

43.理由
「これ以上、揺らぐ前に」

44.沢渡の理解
「強制だ」

45.響子
「最適化です」

46.村の分岐
• 任せたい人
• 任せたくない人

47.境界線
言葉では、引かれない。
だが、確かにある。

48.あかりの行動
停留所跡。
立ち上がる。

49.一歩
前へ。

50.結語
村は、選ばされた。
だが、選び直す時間はまだ残っていた。


最終章:鬼死骸

― 揃えないという選択 ―

1.夜明け前
村は、静まり返っている。

2.完全実装
その予定時刻まで、あと一時間。

3.研究棟
モニターが、すべて起動している。

4.響子
一人。
椅子に座らない。

5.表情
疲労。
確信。
焦り。

6.モデル
予測線は、一本に収束している。

7.響子の独白
「これでいい」

8.根拠
数字。

9.だが
数字の外に、視線が向かない。

10.沢渡
鹿島神社へ向かう。

11.柵
越えない。
壊さない。

12.立ち止まる
選択は、乱さないこと。

13.ケンジ
「何もしねぇのか?」

14.沢渡
「する」

15.行為
センサーの電源を、切らない。

16.代わりに
人を、集める。

「隊長、オレが呼んできますよ」
ケンジが言って、駆け出していく。

17.村人
集まる。
理由は、説明しない。

18.停留所跡
全員が、そこに立つ。

19.あかり
すでに、いる。

20.視線
村人と、目を合わせる。

21.初めての言葉
「唄うよ」

22.誰も、
止めない。

23.唄
音は、揃わない。

24.音階
揺れる。
3度も、7度も。

25.完璧ではない
だが、誰も修正しない。

26.七つ盛り
応答する。
一つずつ。

27.共鳴
同時ではない。
遅れ。
ズレ。

28.鬼石
微かに、鳴る。

29.鹿島神社
鈴が、風もないのに揺れる。

30.研究棟
警告。
「条件不一致」

31.響子の動揺
「なぜ…」

32.モデル崩壊
予測線が、分岐する。

33.沢渡の声
「揃えなかった」

34.響子
「それでは、再現できない!」

35.沢渡
「再現しないためだ」

36.あかりの唄
最後の音。
弱い。

37.だが
消えない。

38.地面
震えは、広がらない。

39.代わりに
静まる。

40.センサー
反応が、止まる。

41.完全実装
失敗。

42.村人
混乱しない。

43.理由
誰も、支配されていない。

44.響子
その場に、立ち尽くす。

45.涙は、
出ない。

46.響子の理解
「…私は、善意で縛った」

47.沢渡
「縛らなければ、壊れると思っただけだ」

48.響子
「それでも…、守りたかった」

49.沢渡
「守るってのは、選ばせることだ」

50.夜明け
空が、明るむ。

51.村
何も、変わっていない。

52.だが
何かが、戻った。

53.あかり
いつの間にか、いない。

54.停留所跡
木のベンチ。
小さな、音叉のような石が、七つ。

55.誰も、
触らない。

56.沢渡の独白
「この村を守るってことは、
 過去を保存することじゃない」

57.続き
「過去を理解して、
 今を生きて、
 未来に繋ぐことだ」

58.村人
それぞれ、違う方向へ帰る。

59.一本道ではない
だが、同じ村。

60.最終行

鬼死骸は、眠ったまま、息をしている。



削除|観測者の最終覚書

───────────────────
以下は、削除された章である。
削除された理由は、記されていない。
読むか、読まないかは、
あなたの選択である。
───────────────────


これは記録ではない




削除|第*部|選ばれなかった未来

───────────────────
以下は、削除された章である。
削除された理由は、記されていない。
読むか、読まないかは、
あなたの選択である。
───────────────────

第一章:王国設計初期案

削除

第二章:人口最適化モデル


   削除

第三章:再教育プログラム


削除


※欄外メモ
書かなかったのではない。
書けなかった。
【不明】


編者不詳についての覚書

可能性は三つある。

1.あかり
 記録しないことで残す存在
2.沢渡 恒一
 科学的整理を試みたが、途中でやめた
3.第三者
 次の時代の観測者(読者)

欄外メモ
読んだ人が編者。
(あかり)


終わりに

この資料集は、
答えを与えない。

だが、問いだけは、正確に残す。


この物語は、実在する岩手県一関市・旧鬼死骸村を舞台にした、
記録・神話・現代が織りなす物語の一編です。
この村には、フィクションでは作れない地形と歴史があります。
鬼死骸村の全体像は、【鬼死骸村探検隊】(ポータルページ)にて。
地図・動画・神話・怪異記録が重なっています。



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