見出し画像

同じ月|鬼死骸村のどこかで

この物語は、実在の土地・史跡を基にした
フィクションであり、神話であり、記録である。
一つの語りとしての記録である。
(鬼死骸村探検隊|実在する旧鬼死骸村を舞台にした物語)


ケンジ

仕事の帰り。
ケンジは、家路を急ぐ。

「もう、こんな時間だ」

足元が明るい。
今日は、月が大きい。

空を、見上げる。
「ああ、今日も月が出てる」

ふと、都会に行った友人のことを思い出した。

「明日も仕事か……」

足早に、家路を急ぐ。


香那

夕暮れ時、
食事の後片付けをすませる。

香那は、急須でお茶を注ぐ。
祖母の前に、置く。
「ありがとう」

外を見ていた祖母が、言った。
「香那さん、月が綺麗じゃよ」

「綺麗ね」

「でも、なぜか少し、遠い気がする」
香那は、小さく呟いた。

隣で祖母は、黙って風を感じていた。


響子

響子は、祖母の実家に来ていた。

祖母も、昔、きっと見ていた月。

今、自分が見ている月と同じだろうか。

少し、怖い。

風が、祖母の方から吹いてきた気がした。


映美と沢渡

集会場。
日が暮れる。

沢渡は、資料を広げている。
映美は、残っていた書類の整理。

沢渡が、ふと顔を上げ、窓の外に視線を投げる。
「月が出てる」

満月を通り過ぎて、少し小さくなった月。

映美も同じ窓を見た。
「ほんとだ。見に行きましょう」

二人は、集会場の前で月を眺める。

「綺麗な月ね。でも、近くで見ると、眩しすぎるかも」
映美が口にする。

少し間を置き、沢渡がいう。
「……月には、大気がないからな」

「え?」

「遮るものが何もない。だから影が、すごく濃い」

風に乗って、虫の音だけが揺れている。

でも、この風は月には届かない。


あかり

あかりは、月を見ていない。

月に、見られている。


この物語は、実在する岩手県一関市・旧鬼死骸村を舞台にした、
記録・神話・現代が織りなす物語の一編です。
この村には、フィクションでは作れない地形と歴史があります。
鬼死骸村の全体像は、【鬼死骸村探検隊】(ポータルページ)にて。
地図・動画・神話・怪異記録が重なっています。



いいなと思ったら応援しよう!

鬼死骸村探検隊長 よろしければ応援お願いします! いただいたチップは探検活動の費用に活用させていただきます。