春の水|鬼死骸村のどこかで
この物語は、実在の土地・史跡を基にした
フィクションであり、神話であり、記録である。
一つの語りとしての記録である。
(鬼死骸村探検隊|実在する旧鬼死骸村を舞台にした物語)
ケンジ
堤防の道は、役場への近道。
川沿いの風だけが、まだ冬を離さない。
濁った水が、岸辺の枯れ草を巻き込みながら流れていく。
雪解け水で、川が増している。
香那
祖母の畑仕事を、
慣れない手つきで手伝う。
長靴の裏に、濡れた土が張りついて重い。
畑の向こうの川。
雪解け水で、川が増している。
陽を受けた明るい水面。
流れだけがどこか急いでいる。
村の静けさより先に、水の音だけが近い。
沢渡
ガードレール越しに、川面が光っていた。
水が、草を押し流していた。
雪解け水で、川が増していた。
冬の境界線が、崩れていく。
季節の残骸が、下流へ運ばれていった。
映美
郵便局の帰り、橋の上で足を止める。
橋の欄干が、少し暖かかった。
見下ろした川は、いつもより白く泡立っていた。
雪解け水で、川が増している。
耳を澄ました。
昔は、この音で目が覚めた。
春が来たのだと、誰かに教えられる前に。
あかり
雪解け水で、川が増している。
水は、前にもここを通った気がする。
この物語は、実在する岩手県一関市・旧鬼死骸村を舞台にした、
記録・神話・現代が織りなす物語の一編です。
この村には、フィクションでは作れない地形と歴史があります。
鬼死骸村の全体像は、【鬼死骸村探検隊】(ポータルページ)にて。
地図・動画・神話・怪異記録が重なっています。
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