開発経験者が見たAIの歴史、そして未来予想図
はじめに
AI(人工知能)は、私たちの生活やビジネスのあらゆる場面で活用されるようになりました。
AIはどのように発展し、現在どのような形で使われているのでしょうか?
そして、どこへ向かっていくのでしょうか。
私は、「第2世代のAI」が普及し始めて実際に使われるようになってきた頃に、開発者としてAIと関わるようになりました。その時にはすでに「第3世代のAI」が話題となり、「第五世代コンピュータ」にも注目が集まっていました。
私が実際に関わっていたのは、「ルールベース」と「知識ベース」とが混在した「AIシステム」でした。このAIのための「知識データベース」、そして「エキスパートシステム」を使った「教育支援システム」や「故障診断システム」を開発していたのです。
残念ながら、現在のAIと比較するとあまりにも稚拙な性能のものでした。
個人的には、「第3世代のAI」で使われるアルゴリズムのひとつである「遺伝的アルゴリズム」を使った、「スケジュール」作成アプリケーションの開発も企画していました。
学校の「時間割」や病院等の「シフト計画」、「新聞の配送ルート計画」などを作るものです。残念ながら、実現する機会は訪れませんでしたが。
ここでは、AIの歴史や技術的な背景、現在の状況、そして今後の展望について書いてみたいと思います。
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1.AIとは
AI(Artificial Intelligence、人工知能)とは、人間の知的活動をコンピューター上で再現する技術の総称です。
AIには、大きく分けて「特化型AI(狭義のAI)」と「汎用AI(広義のAI)」の2種類があります。
・特化型AI
特定のタスクをこなすAI
例:画像認識、音声認識、翻訳など
・汎用AI
人間のように幅広い知的活動ができるAI
(現在はまだ実現していない)
現在のAI技術は、主に
「機械学習(Machine Learning)」や
「ディープラーニング(Deep Learning)」
によって発展しています。
2.世代別の歴史
AIは、技術の進化とともにいくつかの「世代」に分けられます。
それぞれの世代ごとに特徴があり、異なる技術が用いられてきました。
ここでは、AIの進化を「世代」に分けて解説します。
2.1 第1世代(1950年代〜1960年代) - - ルールベースのAI
【概 要】
AIという概念が誕生し、初期の研究が始まった時代です。
「人間の知能を再現しよう」
とする試みが始まりました。
この時期のAIは、あらかじめ定められたルールに従って動作する「ルールベース(記号処理)」が主流でした。
【技術的背景】
・ハードウェア
真空管・トランジスタを用いた大型コンピューター(IBM 704 など)
・ソフトウェア
プログラム言語LISP(1958年)が登場し、AI開発に活用
【代表的な研究・成果】
・1950年:アラン・チューリングが「チューリングテスト」を提唱
・1956年:ダートマス会議でAI研究が本格的に始まる
・1966年:初期のチャットボット「ELIZA」が開発
【限 界】
・ルールが増えると処理が複雑化し、現実の問題に対応できませんでした。
2.2 第2世代(1970年代〜1980年代) - - 知識ベースのAI
【概 要】
第1世代のルールベースの限界を克服するために、知識を蓄積して活用する「エキスパートシステム」が登場しました。
AI研究が一時的に低迷し、「AI冬の時代」とよばれました。
【技術的背景】
・ハードウェア
マイクロプロセッサの普及により計算能力が向上
・ソフトウェア
PrologやOPS5などの知識ベースシステム・推論エンジンが開発されました。
【代表的な研究・成果】
・1972年:エキスパートシステム「MYCIN」(医学診断用AI)
・1980年代:日本の第五世代コンピュータプロジェクト(失敗に終わる)
【限 界】
・知識の追加・更新が手作業であり、拡張性に乏しいものでした。
・膨大なルール管理が必要で、複雑な問題を処理するのには計算量が多すぎました(処理速度が遅い)。
2.3 第3世代(1990年代〜2000年代) - - 機械学習の台頭
【概 要】
AIが「ルールに基づく処理」から「データに基づく学習」へと進化した時代です。
統計的手法を活用した「機械学習(Machine Learning)」が発展しました。
AIの実用化が加速しています。
【技術的背景】
・ハードウェア
パーソナルコンピューター(PC)の普及、並列計算の発展
・ソフトウェア
ニューラルネットワークの再評価、SVM(サポートベクターマシン)の登場
【代表的な研究・成果】
・1997年: IBMの「Deep Blue」がチェスの世界王者を破る
・2000年代:サポートベクターマシン(SVM)や決定木が広く使われる
【限 界】
・大量のデータが必要でしたが、当時はビッグデータの活用が十分ではありませんでした。(データの収集が課題)
・計算リソースが不足しており、大規模なAIモデルは作れませんでした。(当時のCPUでは限界があった)
2.4 第4世代(2010年代〜現在) - - ディープラーニングの時代
【概 要】
機械学習をさらに発展させた「ディープラーニング(深層学習)」が登場し、爆発的に発展、AIの精度が飛躍的に向上しました。
大規模データ(ビッグデータ)の活用により、AIが実用化され、多くの分野で活躍しています。
【技術的背景】
・ハードウェア
GPUの進化により、大規模なニューラルネットワークの学習が可能になりました。
・ソフトウェア
Python、TensorFlow、PyTorchなどのAIフレームワークが登場しました。
【代表的な研究・成果】
・2012年:ImageNetコンペでディープラーニングが圧倒的な成果を出す
・2016年:Google DeepMindの「AlphaGo」が囲碁の世界王者に勝利
・2020年代:ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)が登場
【限 界】
・AIの「説明性」が低く、AIがどのように判断したのか、なぜその答えを出したのかが不明です。(ブラックボックス問題)
・倫理的問題が発生しています。フェイクニュースの生成、プライバシー侵害の懸念など。
3.AIブームの波と進化
AIの進化を「ブーム」の視点から整理してみたいと思います。
3.1 第一次AIブーム(1950年代〜1960年代)—ルールベースのAI
AIの概念は、1950年代に数学者アラン・チューリングが提唱した「チューリングテスト」に遡ります。
AIは、「ルールベース」のシステムで、事前に定めたルールに基づいて問題を解決するものでした。
代表的な技術として「エキスパートシステム」が登場しています。
しかし、ルールが増えると処理が複雑になり、AIの限界が明らかになったため、ブームは終息しました。
3.2 第二次AIブーム(1980年代〜1990年代)—知識ベースとエキスパートシステム
この時期には「エキスパートシステム」が発展しました。
これは専門家の知識をルールとして記録し、AIがそれに基づいて判断を下すというものです。
しかし、ルールの更新や拡張が困難であり、大量のデータを扱うには不向きでした。そのため、AIの発展は再び停滞しました。
3.3 第三次AIブーム(2000年代〜現在)—機械学習とディープラーニング
2000年代以降、AIは「機械学習」や「ディープラーニング」によって飛躍的に進化しました。
これは、AIがデータをもとに自動で学習し、パターンを見つける技術です。
ディープラーニングの発展により、AIは画像認識・音声認識・自然言語処理などで大きな成果を上げるようになりました。
4.AIの現在地
現在は第4世代のディープラーニングが主流で、以下のような分野で活用されています。
(1) ビジネス領域
・チャットボット
カスタマーサポートの自動化など
・データ分析
市場予測、金融取引の最適化など
・自動翻訳
Google翻訳、DeepLなど
(2) 医療領域
・画像診断
CT・MRIの自動解析など
・創薬
AIによる新薬の候補探索など
(3) 日常生活
・音声アシスタント
Siri、Alexa、Google Assistantなど
・自動運転
Tesla、Waymoなどの自動運転技術など
5.AIの未来予想図
今後のAIは、以下のような方向へ発展すると考えられています。
・第5世代(未来) - - 汎用AI(AGI)の時代へ
【概 要】
現在のAIは特定のタスクに特化した
「狭いAI(Narrow AI)」
ですが、今後は人間のように柔軟な知能を持つ
「汎用AI(AGI: Artificial General Intelligence)」
の開発が進むと考えられています。
人間とAIとが共存する社会の実現が予想されます。
【技術的背景(予測)】
・ハードウェア
量子コンピューター、ニューロモルフィックコンピューターの開発
・ソフトウェア
自己学習型AI、強化学習の進化
【期待される未来】
・AIがより多様なタスクをこなせるようになると考えられています。
専門職(医師、弁護士など)のサポートの強化など
・人間とAIの協力が進み、創造的な分野(音楽、芸術、哲学)にも応用されると予想されます。
【課 題】
・AIが人間の仕事をどのように補完・代替するのか
・AIが人間の知能を超えた場合の倫理的リスク(シンギュラリティ問題)
・AIの悪用や暴走を防ぐための法律や倫理基準の整備
6.書籍の紹介
・人工知能が人間を超えるシンギュラリティの衝撃 Kindle版
小池 淳義 (著)
PHP研究所 (2017/6/12)
本書の著者は、日立製作所やトレセンティテクノロジーズなどで、40年の長きにわたり半導体の開発に携わり、「ムーアの法則」をリアルに体現してきた技術者である。
人工知能(AI)が人間を超える日である「シンギュラリティ」。半導体がさらに圧倒的な技術革新を遂げることで、今より膨大な情報を蓄積し、高速で処理していく事ができるようになると、著者は考えている。
本書の前半では、シンギュラリティ社会のイメージを、プロの視点から読み解いている。それを受けて後半では、「AIに負けない人間」になるために、チャレンジすべき行動と思考について、具体的なノウハウを記している。
技術者出身のシリコンバレー系経営者が書いた、異色のオピニオン書。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
・AI vs. 教科書が読めない子どもたち Kindle版
新井 紀子 (著)
東洋経済新報社 (2018/2/2)
東ロボくんは東大には入れなかった。AIの限界ーー。しかし、"彼"はMARCHクラスには楽勝で合格していた!これが意味することとはなにか? AIは何を得意とし、何を苦手とするのか?
AIの限界が示される一方で、これからの危機はむしろ人間側の教育にあることが示され、その行く着く先は最悪の恐慌だという。では、最悪のシナリオを避けるのはどうしたらいいのか? 最終章では教育に関する専門家でもある新井先生の提言が語られる。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
・人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書) Kindle版
松尾 豊 (著) 形式
グーグルやフェイスブックが開発にしのぎを削る人工知能。日本トップクラスの研究者の一人である著者が、最新技術「ディープラーニング」とこれまでの知的格闘を解きほぐし、知能とは何か、人間とは何かを問い直す。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
・最短コースでわかる ディープラーニングの数学 Kindle版
赤石 雅典 (著)
日経BP (2019/4/11)
AIのブラックボックスを開けよう!
ディープラーニングの本質を理解するために必要な「数学」を「最短コース」で学べます!
「ディープラーニング」の動作原理を「本当に」理解できる本です。
本書では、ディープラーニングの理解には欠かせない数学を高校1年生レベルから、やさしく解説します。(微分、ベクトル、行列、確率など)
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
・高校数学からはじめるディープラーニング 初歩からわかる人工知能が働くしくみ (ブルーバックス) Kindle版
金丸隆志 (著)
講談社 (2020/4/16)
本書は、ディープラーニングを支え、ベースとなっている数学に焦点をあて、どのような仕組みで、どのように効いて、なぜ機能するのかの解説をしていきます。「ブラックボックス」と思われがちなディープラーニングの中身を理解していきます。
「ディープラーニングという言葉は聞くが、どんなものなのか分からないので理解したい」「ブラックボックスと言われるディープラーニングの仕組みを知りたい」「ディープラーニングを学びたいけれど、数学の勉強のどこから手を付けていいか分からない」といった読者の興味に応える一冊です。
ディープラーニングの主要な概念の解説もしていきます。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
おわりに
AIの歴史は、ルールベースから機械学習、ディープラーニングへと進化してきました。
現在では、ビジネスや医療、日常生活のあらゆる場面でAIが活用されています。
今後は汎用AIの実現や倫理的課題への対応が求められ、人間とAIが共存する新しい社会が形成されるでしょう。
AIの発展を正しく理解し、賢く活用していくことが、これからの時代を生きるうえで重要になります。
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