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「なぜなぜ分析」、その使い方間違っていませんか?

1.はじめに

 問題発生の原因を深く掘り下げて追究する手法/ツールにはいろいろありますが、「なぜなぜ分析」もそのひとつです。「なぜ?」と繰り返し問い続けることで、根本的な原因(真因)を見つけ出し、適切な対策を立てることを目的としています。

 「『なぜなぜ分析』なんて簡単だよ。『なぜ』を5回繰り返せばいいだけさ。」
なんて思っていませんか?本当に、「根本的な原因」を突き止められていますか?
 一見簡単そうなのですが、それだけに、「間違った使い方」や「間違った理解」をしている人をしばしば見かけます。これでは「根本的な原因」は見つけられません。そして、「効果的な対策」も立てることはできないでしょう。

 ここでは、「なぜなぜ分析」について、「考え方」そして「実践的な使い方」を解説していきたいと思います。


2.なぜなぜ分析って何?

 「なぜなぜ分析」は、問題の原因を深く掘り下げるための手法です。問題が発生した原因を「なぜ?」と繰り返し問い続けることで、根本的な要因(真因)を見つけ出し、適切な対策/再発防止策を立てることを目的としています。
 思いつきで要因を挙げていくのではなく、論理的に漏れなく要因を出しながら、狙いとする対策/再発防止策を導き出す方法なのです。

なぜなぜ分析の活用場面の例
 ・ビジネス・経営:売上低迷の原因分析
 ・製造業:品質トラブルの原因分析
 ・IT業界:システム障害の原因分析
 ・医療:診断ミスの原因分析
 ・教育:学力低下の原因分析
 ・サービス業:クレーム増加の原因分析
 ・日常生活:家計費赤字の原因分析

3.なぜなぜ分析の使い方

(1)なぜなぜ分析の基本ルール


 A.「なぜ?」を5回繰り返す
  必ずしも5回にこだわる必要はありませんが、少なくとも3~5回程度は掘り下げます。
 B.責任追及ではなく、問題解決のために行う
 C.事実に基づいて考える
 D.表面的な理由で終わらせない
 E.原因を特定したら、適切な対策を考える

(2)なぜなぜ分析の進め方


 A.問題/課題の抽出と事象の絞込み
 B.分析対象の理解・把握
 C.前提条件の確認
 D.分析と検証の実施
 E.再発防止策案の立案と評価
 F.再発防止策の実施と効果の確認
 G.総点検と水平展開

(3)なぜなぜ分析に入る前のチェック


 A.原因追求と対策を要する問題/課題の抽出
 B.モノゴトを見極めて絞り込む
 C.分析する事象の表現に気をつける
 D.原因追求すべき対象をしっかり把握する
 E.前提条件を確認する

(4)論理的に、漏れなく、狙い通りに展開するための定石


 A.「事象」や「なぜ」に書く内容は、1つの事実または1つの要因に限る
 B.出だしの「なぜ1」は発生部位・形態に着目し、発生原則(条件)をもとに表現する
 C.逆に読み返しても、順序良く論理がつながるように「なぜ」を展開する
 D.「並列に挙げた『なぜ』が全て発生しなかったとしたら、直前の『なぜ』は発生しないのか」をチェックする
 E.分析の狙いを踏まえた「なぜ」を展開する
 F.誰もが同じイメージできる「なぜ」を表現する
 G.形容詞を使う場合は、比較の対象を明確にする
 H.個人的な話(臨床心理面)には「なぜ」で踏み込まない
 I.再発防止策が見い出せるまで「なぜ」を繰り返す
 J.現場・現物で「なぜ」を検証する

(5)分析の例


 「納期に間に合わなかった」場合

Step1:問題の特定
  •問題:「納期に間に合わなかった」

Step 2:なぜなぜ分析を実施
  (i)なぜ、納期に間に合わなかったのか?
   → 必要な部品が届かなかったから。
  (ii)なぜ、必要な部品が届かなかったのか?
   → 部品の発注が遅れたから。
  (iii)なぜ、部品の発注が遅れたのか?
   → 発注担当者が発注のタイミングを逃したから。
  (iv)なぜ、発注のタイミングを逃したのか?
   → 発注の管理ルールが明確でなかったから。
  (v)なぜ、発注の管理ルールが明確でなかったのか?
   → 発注業務が属人的になっていて、ルールが整備されていなかったから。

Step 3:真因の特定
  この場合、「発注業務が属人的になっていて、ルールが整備されていなかったこと」が根本的な原因(真因)です。
  ただし、Step 2の(i)で、原因が「必要な部品が届かなかったから」以外にも存在する場合は、真因の候補が複数抽出される場合があります。

Step 4:対策の検討
  •発注ルールを文書化/標準化して、誰でも確認できるようにする
  •発注のタイミングを管理するシステムを導入する
  •定期的に発注状況をチェックする仕組みを作る
  など

(6)なぜなぜ分析の書き方

  なぜなぜ分析の書き方には、いろいろとあります。
  よくあるのが、「なぜ」「なぜ」のかたちを、次のように書く場合です。

【一般的ななぜなぜ分析の書き方】

  他には、
   ・「系統図」で表現する
   ・「マインドマップ」を利用する
   ・「Excel」「Word」「PowerPoint」などのOffceソフトを利用する
   ・プレーンなテキストで書く
    →階層は、空白、Tab、番号付け、などで表現する
  などがありますが、使いやすい方法でよいかと思います。

4.なぜなぜ分析の誤った使い方

 「なぜなぜ分析」は、問題の根本原因を突き止めるのに有効な手法ですが、誤った使い方をすると本来の目的を果たせません。以下の点に注意して実施しましょう。

(1) 責任追及になっている
 【原因】人のミスに焦点を当ててしまい、「なぜ?」の方向が個人攻撃になってしまう。
  【例】「なぜミスが起きた?」→「Aさんの確認不足だった」→「なぜ確認不足だった?」→「Aさんが集中していなかったから」
   ▲これではAさんを責めるだけで、再発防止につながりません。
 【ポイント】目的は人を責めることではなく、根本原因を見つけて改善することです。
  ○「なぜミスが起きたの? → 確認作業のルールが曖昧だったから」
 【解決策】「特定の個人に責任を押し付けるのではなく、組織的な原因を探りましょう。「このミスは他の人でも起こり得るか?」と考え、個人ではなく仕組みの問題にフォーカスするのです。

(2)事実ではなく憶測で進めている
 【原因】「たぶんこうだろう」と思い込みで分析を進める。
  【例】「なぜ売上が落ちた?」→「おそらくお客さんが飽きたから」
   「なぜ遅れたの? → たぶん担当者が忘れていたから」
   ▲思い込みのため、的外れな対策を立てる可能性があります。
 【ポイント】 事実に基づいて分析を進めることが重要です。推測で進めると、本当の原因にたどり着けません。
  ○「なぜ遅れたの? → 担当者に確認したら、発注管理システムのアラートが作動しなかったから」
 【解決策】「現場のデータや実際のヒアリングを元に検証するのがよいでしょう。「データや実際の事象を確認したか?」と問い直し、根拠を明確にするのです。

(3)「なぜ?」を表面的にしか考えていない
 【原因】「とりあえず5回繰り返せばいい」と思い、深く考えない。
  【例】「なぜ納期が遅れた?」→「担当者がミスしたから」→「なぜミスした?」→「注意が足りなかったから」・・・・・
   ▲原因が曖昧で、根本的な解決策につながりません。
 【ポイント】 5回にこだわる必要はありません。問題によっては3回で原因が分かることもあれば、6回以上掘り下げる必要がある場合もあります。本質的な原因を特定できた時点でやめるのです。
 【解決策】「本当にこれが原因なのか?」と問い直し、データや証拠をもとに論理的に掘り下げましょう。

(4)原因を1つに絞り込もうとする
 【原因】「根本原因は1つしかないはず」と決めつけてしまう。
  【例】「なぜクレームが増えた?」→「問い合わせ対応が遅いから」
   ▲実際には「対応の遅さ」以外にも「説明が分かりにくい」「製品の仕様が複雑」など複数の要因がある可能性があるかもしれません。
 【ポイント】 多くの問題は複数の要因が絡み合って発生します。一つの原因だけにこだわると、他の重要な要因を見逃してしまいます。
  ○「Aも原因だが、BとCも影響しているかもしれない」
 【解決策】「本当にこれだけが原因か?」、「他に影響している要因はないか?」と広い視点で分析しましょう。

(5)解決策までを考えていない
 【原因】原因を見つけて、分析が終わった気になる。
  ▲対策が取られず、問題が再発する可能性があります。
 【ポイント】 分析しただけでは意味がありません。
 【解決策】根本原因に対して具体的な改善策を立て、それを実行することで初めて問題が解決します。解決策を考えるまでがワンセットです。

(6)一時的/表面的な対処で終わらせている
 【原因】再発防止策を考えていない。
  【例】「次から気をつけるようにしよう」
 【ポイント】 「気をつける」だけでは同じ問題が繰り返されてしまいます。
 【解決策】ルールの見直しや仕組みの改善を行い、同じミスが起こらないように、再発防止のために仕組みを作るのがよいでしょう。

 これらのポイントを意識することで、効果的に問題解決ができるようになります。

5.堂々巡り/浅い分析の原因と対策

 「なぜ?」を繰り返しても、表面的な原因ばかりが出てきて、根本原因にたどり着けないことがあります。「同じレベル」で堂々巡りをしていたり、深い方向に向かっていなかったりしているのです。

(1)堂々巡り/浅い分析の原因

A.「なぜ?」が単なる言い換えになっている
 【原因】「なぜ?」と問いかけても、同じことを別の言葉で言い換えているだけ
  【例】
   •「なぜ売上が落ちた?」→「お客さんが減ったから」
   •「なぜお客さんが減った?」→「売上が減ったから」
  ▲本質的に何も深掘りできていません。
 【解決策】「本当に新しい視点の答えになっているか?」と確認し、別の角度から考えてみましょう。

B.問題を適切に分解できていない
 【原因】問題の全体像が整理されておらず、「なぜ?」を問う方向がバラバラ
  【例】「なぜ納期が遅れた?」→「作業が遅れたから」→「なぜ作業が遅れた?」→「時間がかかったから」
   ▲「作業が遅れた」と「時間がかかった」はほぼ同じ意味で、深掘りになっていません。
 【解決策】問題を適切に分解し、「どの部分が遅れたのか?」を具体的に分析しましょう。

C.本当の原因にたどり着く前に「解決策」を考えてしまう
 【原因】「なぜ?」を繰り返す前に「とりあえずこうすればいい」と結論を出してしまう
  【例】「なぜ品質トラブルが起きた?」→「作業ミスがあった」→「では、チェックを増やそう」
   ▲本当の原因が分かる前に対策を決めてしまうと、問題の再発を防げません。
 【解決策】「この対策で本当に問題は解決するのか?」と再考し、原因の深掘りを続けましょう。

(2)堂々巡り/浅い分析を防止する方法

A「なぜ?」だけでなく「どうすれば?」も考える
 •「なぜ?」を繰り返すだけでなく、「どうすれば解決できる?」という視点を入れると、具体的な改善策につながりやすくなります。

B.フレームワークを活用する
 •「特性要因図(フィッシュボーンダイアグラム)」を使うと、原因を体系的に整理できます。
 •「MECE(漏れなくダブりなく)」の考え方を取り入れると、偏りなく分析できます。

C.第三者の視点を入れる
 •一人で考えると堂々巡りや浅い分析となりやすいものです。チームで議論すると新しい視点が得られるかもしれません。

D「5回」にこだわらず、適切なタイミングで止める
 •「この原因に対策を打てば、問題が本当に解決しそうか?」と考え、必要以上に掘り下げすぎないようにしましょう。

6.書籍の紹介

(1)問題解決力がみるみる身につく実践なぜなぜ分析
 小倉仁志【箸】
 日経ビジネス人文庫/日経BPM(2013/02)
 問題の本質は「なぜ?」を適切に繰り返すことで見えてくる。物事を論理的にとらえ、ミスやトラブルの原因を的確に追究したいビジネス人必読。「なぜ?」の問いに答えていくだけの、誰にでもできる究極の問題解決手法をわかりやすく解説。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

(2)なぜなぜ分析実践編
 小倉仁志【著】
 日経BP社(2014/01)
 「なぜ?」を繰り返してトラブルの原因を掘り下げる「なぜなぜ分析」はヒューマンエラー撲滅に威力を発揮する。営業・事務などのホワイトカラーが役立てられるよう、分析のノウハウをわかりやすく解説。筆者の解説の特徴は、「言葉遣いに慎重を期し、抜け・漏れや、論理的飛躍を見抜く」ことへの強いこだわり。本書は言葉遣いのレベルから丁寧に問題の掘り下げ方を解説していく。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

(3)SI・ソフトウェア事業のなぜなぜ分析 問題点が素早くわかり効果的にカイゼンする
 黒岩雅彦【著】
 日科技連出版社(2014/03)
 本書では、ものづくりの上流工程に適用可能で、問題解決までの時間を大幅に短縮できるなぜなぜ分析、「品質保証型なぜなぜ分析」を使って、一人ひとりが成果を出せる組織創り、風土創りを実現するノウハウを解説。失敗プロジェクトの問題点を克服するための「振り返り型なぜなぜ分析」も紹介。付録として、なぜなぜ分析記入シートも掲載。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

 こちらの記事もご覧ください。

問題分析の極意・概要編 - - 思考と分析の道具箱

7.まとめ

 「なぜなぜ分析」は、問題の根本原因を見つけ出すための強力なツールです。
 一見簡単そうなのですが、使い方を間違うと、想定した結果が出せないこともあります。

 「なぜなぜ分析」がうまくいかない原因として、
  (1) 責任追及になっている
  (2)事実ではなく憶測で進めている
  (3)「なぜ?」を表面的にしか考えていない
  (4)原因を1つに絞り込もうとする
  (5)解決策までを考えていない
  (6)一時的/表面的な対処で終わらせている
などが考えられます。

  「なぜなぜ分析」を正しく使って、本質的な問題解決につなげていきましょう。


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