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「大丈夫」その使い方は大丈夫? - - 言葉の遊悠エッセイ

 突然ですが、あなたは「大丈夫」という言葉を1日に何回くらい使いますか?

 「今日のランチ、中華で大丈夫?」
 「明日、8時集合で大丈夫です」
 「いやー、この程度の怪我なら大丈夫!」

 もはや空気のように、意識することなく口にしているのではないでしょうか。

 この言葉、私たち日本人にとってあまりに身近すぎて、その奥深さに気づかずにいることが多いように感じます。


 ここで「問題」です。

【ケース1】
 コンビニで弁当を買ったら、レジで「お箸は大丈夫ですか」と言われました。
 「大丈夫です」と答えると
 A.箸はもらえるのでしょうか?
 B.箸はもらえないのでしょうか?

【ケース2】
 職場でお昼になりました。忙しそうに仕事をしている「社員A」に、「昼食に行くけど、一緒に行くかい?」と声をかけました。「社員A」は「大丈夫です」と答えました。
 A.「社員A」は一緒に昼食に行かないのでしょうか?
 B.「社員A」は一緒に昼食に行くのでしょうか?

 解答と解説は、後半で・・・


 考えてみれば、「大丈夫」という言葉ほど、カメレオンのように姿を変えるものはありません。
 肯定の返事、許可、安堵の表明、拒否の婉曲表現、そして時には、無言のプレッシャーにもなりえます。

 例えば、飲み会で「もう一杯いかがですか?」と聞かれた時、「大丈夫です」と答えるとします。
 これは「結構です」という丁重な拒否ですね。

 これがもし、体調を心配して「無理してない?大丈夫?」と聞かれた時に「大丈夫です!」と答えたら、それは「心配しないで、問題ありません」というメッセージ。

 さらには、

 「あれ?この書類、これで大丈夫だっけ?」
 「大丈夫。これで完璧だよ!」
 この「大丈夫」は、「これで合っている」という肯定の意味。

 「この書類、明日までに提出で大丈夫ですか?」
 「いえ、大丈夫ではありません。今日中にお願いします」
 この場合は「○○でよいですか?」という確認の意味合い。

 「大丈夫」は八面六臂の活躍を見せます。

 ところで、「大丈夫」と言う言葉のルーツはどこにあるのでしょうか?

 実はこの言葉、仏教用語に由来すると言われています。
 「大丈夫」と書いて、「だいじょうぶ」と読む。
 その原点には「大」いなる「丈」夫な男子、つまり立派な男子という意味がありました。
 仏の教えを求める偉大な修行僧を指す言葉だったのです。

 それが転じて、心身ともに強く、しっかりしている様子を表すようになり、さらには物事がきちんと整っている様や、心配ないことを意味するようになりました。

 歴史をたどると、明治時代にはすでに現代のような「問題ない」という意味合いで使われていたと言う記録も残っているそうです。

 しかし、戦後、特に高度経済成長期を経て、「大丈夫」はさらに進化を遂げます。
 「とりあえず、これでいこう」という、どこか曖昧なニュアンスを帯びるようになったのです。

 最近は、さらに面白い現象が起きています。

 若者たちの間では、「大丈夫」が単体で使われるだけではなく、「だいじょぶ」や「じょぶ」と縮めて使われることもあるようです。

 「じょぶ?」と聞かれて「じょぶ!」と返す。
 これはもはや、一種の暗号のようですね。

 そして未来を想像すると、さらに興味深い進化を遂げるかもしれません。

 例えば、AIが進化して、感情を読み取るようになった時。
 AI「○○さん、今日の体調は大丈夫ですか?」
 私「大丈夫・・・」
 AI「いや、大丈夫じゃありませんね。心拍数が平常時より20%上昇しています。ゆっくり休んでください」

 このように、言葉の裏に隠された本音を暴かれる日が来るかもしれません。

 言葉とは生き物です。

 時代とともに形を変え、意味を変え、新たな役割を担っていきます。

 「大丈夫」もまた、そうして逞しく生きてきた言葉の一つ。その多機能さゆえに便利である一方、時に相手に誤解を与えてしまう危険性もはらんでいます。


 ここで前半の「問題」の解答と解説です。

【ケース1】
 コンビニで弁当を買ったら、レジで「お箸は大丈夫ですか」と言われた場合に「大丈夫です」と答えるのは、
 「お箸は(無くても)大丈夫です」
と言う意味にとらえて、「B.箸はもらえない」が正解です。(多分)

【ケース2】
 職場の昼に、忙しそうに仕事をしている「社員A」に、「昼食に行くけど、一緒に行くかい?」と声をかけた時に、「社員A」が答えた「大丈夫です」の意味は・・・
 A.「(昼食には行かなくて)大丈夫です(、お構いなく)」の意味であれば、「社員A」は一緒に昼食に行かないでしょう。
 B.「(仕事はキリが良いので、昼食に行っても)大丈夫です」の意味であれば、「社員A」は一緒に昼食に行くでしょう。
 このケースの場合は、「社員A」に真意を再度確かめてみないと、本当のところはわからないかもしれません・・・

 本当に大丈夫なのか、ちょっと立ち止まって考えてみる。

 時には、曖昧な「大丈夫」ではなく、「はい、お願いします」や「いえ、結構です」と、明確な言葉を選ぶことも大切です。

 私たちの言葉ひとつひとつが、相手との間に橋をかけ、信頼を築く大切な道具なのです。

 さて、あなたは「正しくコミニケーション」が取れていますか?


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