マルチタスク時代の集中力調律術 - - 脳の「再起動」を科学する
もし、午後の耐えがたい睡魔や、夕方のガス欠状態を「1分の習慣」で回避できるとしたらどうでしょう。
「集中力を高めるために、もっと頑張る」というのは、実はガス欠の車でアクセルを踏み込むようなものです。
最新の脳科学が教えてくれるのは、驚くほど「何もしない時間」の重要性でした。根性論を捨てて脳の仕組みに従うだけで、あなたの仕事の仕上がりは劇的に変わるのです。
「集中力」の正体とは
仕事ができる人ほど、実は「休み方」が異様にうまい。そう感じることがよくあります。
四六時中パソコンに向かっているように見えて、実は絶妙なタイミングで視線を外し、脳をニュートラルに戻しているのです。
そもそも私たちが追い求めている「集中力」の正体とは何でしょうか。
それは脳の前頭前野にある「注意資源」という限られたエネルギーを、いかに一点に注ぎ込むかというゲームのようなものです。
ITエンジニアがメモリの空き容量を気にするように、私たちも自分の脳の「空きリソース」を管理しなければなりません。
しかし、現代のビジネス現場は過酷です。
細かい連絡がひっきりなしに届くマルチタスクの環境では、脳内で「コンテキスト・スイッチ」が頻繁に起こります。
タスクを切り替えるたびに脳は膨大なエネルギーを消費し、バッテリーは午前中のうちに赤色灯が灯ってしまうのです。
科学的な「脳の休憩」
ここで重要なのが、科学的な「脳の休憩」です。
意外かもしれませんが、脳にとって最高の休息は、SNSをチェックすることでもニュースを読むことでもありません。
「情報の入力を完全に断つ」
こと。これに尽きます。
何もせずにぼんやりしているとき、脳内では「デフォルト・モード・ネットワーク」という回路が動き出します。
これはコンピュータのバックグラウンドで行われる「インデックス作成」のようなもの。散らばった情報の断片を整理し、思わぬアイデアを結びつけてくれる大切な時間です。
スマホを見るのは、脳にとっては休憩ではなく「別のアプリを立ち上げる重労働」でしかないのです。
いつ休むのが正解なのか
では、いつ休むのが正解なのか。
現場で戦う私たちが直面するのは「1時間の壁」と「食後の魔の時間」でしょう。
作業を始めて1時間ほど経つと、どんなに調子が良くても脳の短期記憶は飽和し始めます。
ここで必要なのは、たった1分の「マイクロブレイク」です。
椅子から立ち上がり、窓の外の遠くを眺める。視覚情報をシャットアウトするために、30秒だけ目を閉じるのもいい。
これだけで、脳のキャッシュはクリアされ、再びクリアな視界で画面に向き合えるようになります。
そして、多くの人が苦しむ昼食後の睡魔。
これには抗うよりも、戦略的な撤退が有効です。15分程度のパワーナップ(仮眠)は、夜の睡眠数時間に匹敵する回復をもたらします。もしオフィスで寝るのが難しければ、PCから完全に離れて5分だけ歩いてみてください。一定のリズムで足を動かすことで「セロトニン」が分泌され、脳が覚醒モードへと切り替わります。
集中力を維持する秘訣
結局のところ、集中力を維持する秘訣は、自分を「24時間稼働のサーバー」だと思い込まないことにあるのです。
私たちは生身の人間であり、波がある。その波を否定せず、潮が引いたときには潔く海から上がる。
普段からできる小さな心がけとして、「書くこと」をおすすめします。
忘れてはいけない細々とした用事をすべて紙に書き出し、脳の外に放り出す。脳のメモリを「覚えていること」に使わず、「考えること」だけに贅沢に使うのです。
おわりに
集中力とは、長く出し続ける力ではありません。
切れたことにいち早く気づき、賢く再起動をかける技術。
明日、もし作業開始から1時間で集中が途切れたら、迷わず席を立ってみてください。
その1分が、残りの7時間を救う投資になるはずですから。
【徒然メモ】 「集中力」の正体と対処法
「集中力」の定義と、脳を最適に休ませるための科学的アプローチを整理しました。
1. 「集中力」の正体とメカニズム
「集中力」とは、特定のタスクに脳のリソース(注意資源)を割り当て、不要な情報を遮断する能力を指します。
【生産性・仕事術】の観点
・シングルタスクへの純化
複数のことを同時に行う(マルチタスク)のではなく、一つの重要課題に意識を固定する状態。
・注意資源の管理
脳のエネルギー(ウィルパワー)は有限であるという前提に立ち、それをいかに無駄遣いせず重要な仕事に配分するかという戦略。
【メンタル・セルフマネジメント】の観点
・心理的フロー状態
没頭して時間の経過を忘れるほど高い集中状態(フロー)へ自分を導くセルフコントロール。
・前頭前野の機能
感情や衝動を抑制し、論理的な思考を維持するための「脳の体力」。
2. 科学的に見た「脳の休憩」とタイミング
脳は常に100%で稼働し続けることはできません。集中力を維持するには、「脳のデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と「セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク(CEN)」の切り替えが鍵となります。
(1) 休憩の科学的な定義
・DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)の活性化
何もせずぼんやりしている時に動く回路。これが情報の整理や創造性を生みます。「画面を見ながら休む」のは脳にとっては休憩ではありません。
・セロトニンの活性化
軽い運動や日光浴により、集中に必要な神経伝達物質を再合成すること。
(2) 最適な休憩のタイミング(3つの手法)
・ポモドーロ・テクニック
25分集中+5分休憩
コード書きやメール処理など、タスクを細分化してリズムを作るのに最適。
・ウルトラディアン・リズム
90分集中+20分休憩
深い思考を要する設計や資料作成など、深い集中が必要なサイクルに適応。
・52分集中+17分休憩
52分+17分
最も生産性が高いと言われる黄金比。長期的かつ持続的なパフォーマンス維持に。
3. IT技術者・一般ビジネスマン向けの具体的アクション
・「視覚」を休ませる
IT技術者は特に、休憩中にスマホを見るのではなく、「遠くを眺める(20-20-20の法則)」や「目を閉じる」ことで視覚情報を遮断するのが最も効果的です。
・マイクロブレイク
30秒〜1分程度、立ち上がって背伸びをするだけでも、脳の血流が改善し、認知機能がリセットされます。
【書籍の紹介】
・BRAIN DRIVEN (ブレインドリブン) パフォーマンスが高まる脳の状態とは Kindle版
青砥瑞人 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日 : 2020/9/25
脳を学ぶ時代、神経科学を応用する時代が始まった!
弁護士、医者、大企業CEO、アスリートなど
現場で活躍する人が学んでいる
「脳の中で何が起こっているのか(WHAT)」を解き明かし「なぜそうなるのか(WHY)」について知識を深めれば、「パフォーマンスを高める方法(HOW)」を自ら創り出せる。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
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