「仕事が趣味です」と公言する人は宇宙人説 - - 深夜のオフィスに灯る、謎の生命体
キーボードを叩く音だけが響く深夜のオフィス。そんな場所で、疲れ果てるどころか、なぜか瞳に活力が宿っていく人々がいます。
彼らは自らを「仕事が趣味」と称しますが、その実態は、私たちの知る「労働者」の定義を軽々と超えてしまっているようです。
もし、あなたの周りに「仕事が趣味」と公言する人物がいたら、接し方には細心の注意が必要ですよ。
彼らの熱量に焼き尽くされるか、それともそのエンジンを借りて成層圏まで飛び出すか。宇宙人たちの生態を知ることは、現代のビジネスという名のサバイバルにおいて、強力な武器になるはずです。
深夜に覚醒する青白い顔の住人たち
IT業界には、明らかに周囲と同期していない時計を持った人々がいます。特にSE(システムエンジニア)の世界では、その傾向が顕著です。
彼らにとって、プログラムのバグを追いかけることは、私たちが休日にジグソーパズルを完成させたり、推理小説の犯人を突き止めたりするのと、本質的に同じ喜びなのです。
周囲が「早く帰って寝なよ」と親切心で声をかけても、彼らの耳には届きません。なぜなら、彼らは今、宇宙の真理に近い、美しく論理的な構造物と対話している最中だからです。
その集中力は、地球のコンプライアンスや労働基準法という概念を、軽々と飛び越えてしまいます。
報酬系が書き換えられた脳
一般的なビジネスマンにとって、給与は「耐えた時間の対価」かもしれません。しかし、仕事が趣味になってしまった宇宙人たちにとって、給与は「ゲームを継続するためのコイン」に過ぎません。
例えば、新しいプログラミング言語を覚えることは、彼らにとって「武器のアップグレード」と同じです。
休日に自腹で技術書を買い込み、誰に頼まれたわけでもないのに自宅でサーバーを構築する。その姿は、釣りに熱中して高価な竿を買い揃える太公望と何ら変わりません。
ただ一つ、彼らの趣味がたまたま「市場価値の高いスキル」と一致してしまった。その幸福な、あるいは不幸な一致が、彼らをさらに仕事という名の深淵へと引きずり込んでいくのです。
地球社会との交信不全という悲劇
しかし、宇宙人として生きるのには苦労も伴います。
彼らの最大の悲劇は、自分の情熱が、善良な地球人たちに「圧」として伝わってしまうことでしょう。
「この前の修正、面白かったからついでに機能追加しておいたよ!」という宇宙人の善意は、プロジェクト管理に奔走するPM(プロジェクトマネージャー)にとっては、予定外のスコープ変更という名の恐怖体験でしかありません。
また、彼らが深夜に放つ「進捗報告のSlack」は、標準的な睡眠を愛する人々にとって、静かな夜を切り裂く警報音になります。
彼らは悪気なく、自分の「遊び」に他人を巻き込もうとします。それが、地球のオフィスで時に摩擦を生んでしまう。彼らの孤独は、誰よりも仕事を愛しているのに、その愛し方が少しだけ過剰であるがゆえに生じるものなのです。
地球で生き抜くための「擬態」という知恵
もし、あなたにこの「宇宙人」の自覚があるのなら、少しだけ地球のルールに合わせる「擬態」を覚える必要があるかもしれません。
例えば、「仕事が楽しくて止まらない」という本音を隠して、「いやあ、納期が厳しくて・・・」と、適度に疲れたフリをしてみる。
あるいは、技術の話ばかりするのではなく、天気や食べ物の話といった「地球人の言語」を、あえて意識的に使ってみる。
そうすることで、周囲は安心してあなたを「少し熱心な同僚」として受け入れてくれるようになります。
情熱は、時に毒にもなります。自分の高濃度な酸素をそのまま他人に吸わせてはいけない。フィルターを通して、薄めて提供すること。それが、この星で長く遊び続けるためのコツです。
窓の向こうの光に、救いを見て
窓の外を見れば、都会のビル群には、ポツポツと明かりが残っています。その中にはきっと、帰り道を忘れたわけではなく、ただ「面白すぎて帰りたくない」宇宙人たちが潜んでいるのでしょう。
彼らの生き方は、確かに世間一般の「正しさ」からは少しズレているかもしれません。でも、人生の長い時間を占める労働を、義務ではなく快楽として捉え直した彼らは、ある意味で最も自由な存在だと言えないでしょうか。
もし、あなたの隣にそんな宇宙人がいたら、どうか冷たい目で見ないであげてください。
彼らはただ、この複雑な地球というシステムを、一生懸命にハックしようとしている旅人なのですから。
【徒然メモ】仕事と趣味の境界線が消失した状態の分類
「仕事が趣味」という状態は、端から見れば「猛烈なワーカホリック」に見えますが、本人の内面では全く異なる力学が働いています。特に論理と効率を重んじるIT技術者や、日々数字や成果に追われるビジネスマンにとって、この境地は「最強の生存戦略」とも言えます。
仕事と趣味の境界線が消失した状態を、いくつかの視点で分類してみます。
1. 報酬系のパラダイムシフト(モチベーションの源泉)
仕事が趣味である人にとって、給与や昇進は「副産物」や「スコア」に過ぎません。
・プロセスの悦楽
成果を出すことよりも、コードを組む、戦略を練る、交渉のロジックを組み立てるという「作業そのもの」に没頭し、ドーパミンが放出されている。
・自腹を切れるかという指標
「もし明日、会社が倒産しても、自分でお金を払ってでもこの探求を続けるか?」という問いに迷わず頷ける状態。
・課題解決のゲーム化
難解なバグや複雑なプロジェクトの調整を、RPGの裏ボスを倒すような感覚で楽しんでいる。
2. 認知的リソースの常時開放(思考のプロトコル)
オンとオフを切り替えるのではなく、常にバックグラウンドで仕事が「起動」している状態です。
・公私のシームレス化
週末の美術館巡りやキャンプの火起こしから、プロジェクトのヒントを無意識に抽出してしまう。
・「やらされ仕事」の絶滅
どんな雑務であっても、そこに自分のこだわりや「美学」を注入して、自分事のプロジェクトへと書き換えてしまう。
・圧倒的なインプット効率
趣味の読書が結果的にビジネススキルに直結するため、努力を努力と感じないまま他者を突き放す学習スピードを持つ。
3. 社会的アイデンティティの融合(自己定義)
「何をしている人か」と「どんな人か」が完全に一致している状態です。
・「私=仕事」の肯定
ワークライフバランスを「仕事と生活の対立」ではなく、「豊かさの循環」として捉えている。
・サードプレイスの消失
職場が単なる労働の場ではなく、最も自己表現ができる「遊び場(Playground)」に変質している。
・利己的な利他行
自分の好奇心を満たすために全力で動いた結果が、組織の利益や顧客の幸福に繋がっているという理想的な「独りよがり」。
4. リスクと副作用(斜めからの懸念点)
「仕事が趣味」という価値観が持つ、危うい側面についても触れておく必要があります。
・燃え尽きへの不感症
精神的な疲労を「楽しさ」で上書きしてしまうため、肉体の限界に気づくのが遅れるリスク。
・共感性の乖離
「仕事=苦役」と考えている同僚や部下に対して、無意識に自分の熱量を強要し、ハラスメントの加害者になりかねない危うさ。
・引退後の実存的危機
万が一、その仕事(趣味)を奪われた際に、自分を構成する要素が何も残らない「アイデンティティの空洞化」。
【関連記事】
☆IT現場の生態系
☆プロマネの生きる道
☆プロジェクトマネジメントの小径
関連書籍の紹介
・情熱プログラマー ソフトウェア開発者の幸せな生き方 [プリント・レプリカ] Kindle版
ChadFowler (著), でびあんぐる (著, 翻訳)
出版社 : オーム社
発売日 : 2010/2/25
プログラマが素晴らしいキャリアを築くための実践的な考え方と方法を説く
本書は、等身大のプログラマの一人がキャリア開発の重要性を説き、そのための心構えなどを示したもの。「プログラマはビジネス視点を持って意識的なキャリア開発をすべき」という視点から、その実践方法を著者独特の生き生きとした共感できる語り口で伝える。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!