手紙
女「私はここまでしか送ってあげられないから、気を付けて帰るんだよ」
子供「うん」
女「ほら、これを持って行きな。夜道に明かり無しじゃ歩けまい」
子供「ありがとう」
女「誰かに呼び止められても立ち止まるんじゃないよ。優しい声で呼ばれても決して振り返るんじゃないよ」
子供「分かった」
女「それから無事に家に帰り着いても私の事を話しちゃいけないよ」
子供「どうして?」
女「そりゃあ私に会ったなんて言ったら大騒ぎになるからさ」
子供「どうして大騒ぎになるの?」
女「そりゃそうだろう。私の葬式の帰りに私に送ってもらったなんて言ったら皆んな驚くに決まってるだろう」
子供「叔母さん、死んだの?」
女「ああ、死んだんだよ。だからお前に会うのもこれが最後さ。達者でな」
これは私が幼い頃、叔母の葬儀の帰りの山道で母親とはぐれ一人で家路を辿った時の話です。叔母と別れてからすぐに心配して探しに来た家族と会うことができました。
私はその事を誰にも話しませんでしたが、今ではそれも笑い話です。
あれから数十年の時が過ぎ私も父母と叔母の待つ天国へとやって来たからです。七十を過ぎてここへ来た私ですが父母と叔母からはいまだに子供扱いされています。三十代で早世した父は私よりずいぶん若い姿をしているのに。とにかく小学校の恩師にも再会できたし、今はここでの毎日を楽しみながらあなた達の事を見守っています。今からこの手紙を霊界ポストに投函して来ます。きっと夢でこのメッセージは届くはずです。もう悲しむのはやめて幸せな未来を築いて下さい。
愛する妻と子供たち、そしてたくさんの孫たちへ
