給食にハゲ!? 4人の学校の冬支度【島小③#20】/離島の小学校編Season3 20
前回は、文化の日に両親や家族を島へ迎えました。
にぎやかな時間が終わり、家族を乗せた船を見送ると、また島でのいつもの生活が始まります。
11月も後半になり、日が暮れるのがずいぶん早くなってきました。
気がつけば、2004年も残すところあとわずかです。
大きな行事が続いた秋とは少し違って、この頃の日記には、学校での出来事や島での暮らしがいくつも残っていました。
1.島へ帰ってきたKさん
日曜日の朝、8時30分発の1便に乗るため、本土の自宅を出ました。
平日なら朝の渋滞を考えて少し余裕をもって出るのですが、この日は道路も空いていて、思った以上に早く港へ着きました。
連絡船乗り場で待ち合わせていたのは、教育ソフト会社J社の方2人です。
学校に導入されている教育ソフトは、ネットワークを使う部分だけがまだ動いていませんでした。
そのインストールと設定のため、日曜日にもかかわらず島まで来ていただくことになっていました。
話をしているうちに、そのうちの1人、Kさんがこの島の出身だと知りました。
「えっ、この島なんですか。」
まさか仕事で一緒に渡る人が島の出身とは思っていなかったので、驚きました。
学校へ着くと、さっそく作業が始まりました。
パソコンの前で設定を進めてもらい、これまで使えなかったネットワーク部分も無事に動き始めます。
ようやくすべての機能が使えるようになり、画面を見ながらホッとしました。
これから子どもたちとどう使っていくか、いろいろ試してみたくなります。
作業が一段落したところで、Kさんと校長室で話をしました。
自分が毎日過ごしている学校も、Kさんにとっては子どもの頃を過ごした学校です。
飾られた写真を見ながら昔の島や学校の話を聞いていると、そこへ思いがけないお客さんがやって来ました。
「塩作りをされているそうですね。」
県立博物館の学芸員の方でした。
泊まっていた旅館のおばちゃんから学校の塩作りについて聞き、それなら一度見てみようと足を運んでくださったようです。
お昼になると、Kさんのご実家へ招いていただきました。
島へ仕事に来てもらったこちらが、逆にごちそうになってしまいました。
Kさんが育った島で、ご家族と一緒に食卓を囲みながら、ゆっくり昼食をいただきました。
午後、J社のお2人と学芸員の方を3便で見送り、私は学校へ戻って持ってきたPCのセットアップを続けました。
夕方、3便が戻ってくる頃になると、今度は荷車を持ってもう一度港へ向かいます。
校長先生が本土で、塩を炊く小屋を作るための材料を買ってきていたからです。
塩ビの波板や鉄の棒、それにブロックまであり、思った以上の量でした。
学校まで運び終える頃には、すっかり腰が痛くなっていました。
2.今日のみそ汁は、ハゲ
翌日の給食には「秋の味覚給食」という名前がついていました。
地元の食材を使った給食は前年のこの頃から始まっていて、確か昨年は伊勢エビの炊き込みご飯と伊勢エビのみそ汁だったように思います。
今年の1学期には、アワビの入ったカレーもありました。
残念ながらその日は出張か何かで学校にいなかったのですが、私の分をちゃんと取っておいてくれました。
帰ってから無事に食べることができたのを覚えています。
さて、今回の献立は栗ご飯にアオリイカの酢の物、そして地元でとれたガガネのみそ汁。
デザートには柿までついていました。
ところが、その日の漁協にはガガネの水揚げがあまりありませんでした。
「今日はハゲになりました。」
急きょ、みそ汁の魚がハゲ、つまりカワハギに変更です。
ガガネがハゲになっても、島でとれた魚には変わりありません。
栗ご飯を食べ、アオリイカをつまみ、カワハギのみそ汁をいただきました。
海に囲まれた学校だからといって、毎日の給食に島でとれた魚が出てくるわけではありません。
冷凍の魚が献立に入ることもあります。
だから、こうして地元で水揚げされた魚やイカが並ぶ日は、いつもの給食とはちょっと違いました。
3.白い旗が上がった
その頃、4年生の2人は体操の練習を続けていました。
2人にとって、小体連主催の対外体育行事に参加するのは初めてです。
夏の水泳検定会も10月の陸上記録会も5年生以上が対象だったため、これまで島の外で行われる体育行事へ参加する機会がありませんでした。
しかし、十分な練習時間があったわけではありません。
特に心配だったのが鉄棒です。
練習を始めた頃には、膝をかけてぶら下がっていることさえ難しい状態でした。
それでも、2人はよく練習しました。
昨日できなかったことが今日は少しできるようになり、もう少し練習すると形になってきます。
マットも跳び箱も鉄棒も、練習するたびに少しずつ上達していきました。
そして迎えた市の体操検定会。
市内の3人の体育主任が演技を見て、紅白の旗を上げて判定します。
検定を受けられるチャンスは2回です。
まずはマット。
2人の演技が終わり、判定を待ちます。
白い旗が上がりました。
合格です。
続く跳び箱も、決められた種目を1回で合格しました。

特に鉄棒は、練習を始めた頃の姿を思うと、本当によくここまできたと思います。
最初は膝をかけてぶら下がっていることさえ難しかったのですから、短い練習期間の中でよく頑張りました。
全部が終わってから、2人に声をかけました。
「よう頑張ったなあ。」
体操の練習にずいぶん時間を使い、こちらも忙しい毎日でした。
それでも、練習するたびにできることを増やしていった2人の姿を思い返すと、連れてきてよかったと思いました。
2人にとって初めての対外体育行事は、私にとっても忘れられない検定会になりました。
4.今夜はアオリイカ入り
学校での忙しさとは違って、宿舎へ帰れば1人の生活です。
ある晩、冷蔵庫を開けるとキャベツが残っていました。
「お好み焼きでも作るか。」
そう思って冷凍庫を開けると、自分で釣って冷凍しておいたアオリイカがあります。
これを入れれば、なかなか豪華なお好み焼きになりそうです。
ところが、いざ作ろうとして気づきました。
「ソースがない。」
青のりもありません。
時計を見ると、組合が閉まる17時30分まで、もうそれほど時間がありません。
慌てて宿舎を出て、お好み焼きソースと青のりを買いに行きました。
無事に手に入れて宿舎へ戻ると、今度こそ調理開始です。
キャベツを刻み、自分で釣ったアオリイカもたっぷり入れて焼きました。
せっかくなので、ご飯を炊いてみそ汁もつけます。

「これは、アオリイカ入りのお好み焼き定食やなあ。」
できあがったメニューに思わず独り言がこぼれました。
一口食べてみると、これがなかなかおいしい。
自分で釣ったイカだから余計にそう感じたのかもしれません。
少し前まで港で餌木を投げ、「釣れた!」と喜んでいたアオリイカが、今度は宿舎のお好み焼きに入っています。
さて、冷凍庫にはあと何杯残っていたでしょうか。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回に続く。
前回の話👇
◆本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)👇👇
約25年前の2002年、船が生活のすべてを左右する離島の小学校に赴任しました。
予定通りにいかないことが当たり前の中で、学校と暮らしが地続きの毎日を過ごしていました。
そんな環境の中でも、子どもたちに自信をもたせたいと考え、総合的な学習の時間に取り組んでいました。
このシリーズでは、当時の日記をもとに、島での仕事の大変さと、その中にあるささやかな温かさを綴っていきます。
3年目2004年度の、Season3のお話です。
※本文中の地名・固有名詞は一部仮名としています。
離島の小学校編Season3👇
離島の小学校編Season1👇👇
離島の小学校編Season2👇👇👇
いいなと思ったら応援しよう!
応援いただいたお気持ちは、子どもたちの学びを物語として発信し続ける力となり、教育の現場で役立つヒントへとつなげていきます。