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爆発30秒前・・

 ようやく春がやって来てくれたのは良いが、朝目覚めた瞬間から、鼻腔と両の眼とがむず痒い。
 頭はボーォッ!とした状態だ、集中力が普段の半分も無い・・。
 しかも、まだ完全には治りきっていない気管支炎の影響もあって、咳と痰とが「げほらげほごほ!!」 

 春は確かに良いのだが、これらの症状には全く困る。
 今朝も今朝とて、都合90分程はこの、しつっこく続く症状に苦しんでから、やっと楽になる事が出来た。

 恰も毎朝の儀式みたいに、咳とくしゃみが重なって、それらが同時に
「ハクショ・げほ!ハクション!げほーん!ごっほ!ハーアックショーン!」と続く・・。
 僕はこれに「団子くしゃみ」と名前を付けた。串に射した咳とクシャミのセットそのものの様だからだ。これが本当に苦しい事ったら無い。

 たださえ短気な僕は、これだけでもイライラしてしまうが、この症状のさ中に薬を飲み飲み、珈琲を淹れながら湯を沸かし、モップで軽く掃除もする。
 が、そんな時に限ってイライラする事がワザと押し寄せる。

 普段なら、絶対に起きない様々な事が立て続けに起きて、僕を悩ませに
襲い掛かって来る。まるで僕をからかうように、ものが勝っ手に落ちるのだ。

 棚から何かが落っこちる「バサッツ!」と言う音がした。
 何だろうと思いながら確かめに行けば、モップの先に着ける「ワイパー」の入った袋がひとつ、床に落ちていた。
 この前痛めた太腿の筋肉だって、まだ治りきらないから、脚だってまだ痛む。
「ア・いたたたた~ッ!!」
 小さなそれを拾うだけで、もうイライラする。

 薬を飲もうとひとつ摘まみ上げれば、こんどはそれが床へ落っこちて 、
コロコロ と転がりながら、どっかに姿を消す。
「きっと四次元へ行ったのだ・・」 こう思いながら、それでもまたイライラしながら、落ちた丸薬の大捜索を始める。
 もう、モップ掛けどころの騒ぎじゃア無い。薬を全部飲まなくちゃア、
あとからもっと大変な事になる・・。

 そんな風に気持ちが揺れている中、台どこで湯が湧いている・・。
 慌てて台どこへと行けば、そこでも何かがきっと落ちる(に決まっている)それにかまわず、湯は勝手な沸騰で音を音を立ている・・。

 もう、僕は「おし!そんなに落ちたけりゃあ!拾ってなんかやらないっ!そのままそこに落ちていろっ!」と、決してそれを拾ってやらぬ決意だけはするが、まさかそのままにして置けやしない・・。また脚が痛む。

 そんなこんなで癇癪を起し、終いには「きーい~っ!」と、叫びたくなるのだが、早朝からそんな大声を上げては近所迷惑だからと、それも堪えている・・。

 春は温かく、光のどけき優しい季節、のはずだろうに・・?
 今は、どっかが違って来たようだ。「のどか」どころか癇癪ばかり起きてイヤである。
 
 人呼んで、僕は「片付け悪魔」である。ただの「魔」では無い。
 台どこだって、いつも整然としたものだ。普段なら、こんなにものが落ちたりはしないのに、こんな時にだけボタ・バサとものが転がり、また落ちるのはどうしてだろう?。
 僕の気分は爆発寸前だ・・。油断はならぬ。

 これから桜を散らしに、また意地悪な冬が来る。ほんとに春がやって来るのは、未だ未だ先のようである。