「営業マンの寿命は63歳」という都市伝説と、ある所長の改革
「当社の営業マンの寿命は63歳である」そんな都市伝説があった。
しかも、誰もそれを笑って否定しようとはしなかった。
なぜなら、全員の日常があまりにも不健康極まりなかったからだ。
宴会では、乾杯のビール以降は日本酒を飲み続けるのが当たり前
飲み会が始まれば、解散は午前3時が当たり前
飲んだ後の締めはラーメンが当たり前
土日は展示会。運が悪いと「1ヶ月無休」が当たり前
売上目標の必達は当たり前
子供の行事には参加しないのが当たり前
熱があっても気合で出社するのが当たり前
休前日の飲み会後は、徹夜麻雀が当たり前
考え事をしているフリで煙草を吸うのが当たり前
こんな生活を続けていれば、体を壊すのも当たり前だ。
酷い例になると、60歳の定年退職祝いをしたわずか3ヶ月後に、訃報が届くこともあった。
「これではいけない」と立ち上がったのが、他営業所から異動してきたN所長だった。
彼はまず、営業所に「ランニングチーム」を設立した。
「このチームに入ると評価が上がる」という噂も後押しし、気がつけば全員がメンバーに名を連ねていた。そして、N所長のもとで新たなルールが課された。
お酒を飲んでいいのは、ランニング後の懇親の時だけ
全員で禁煙を誓約
土日の展示会は完全交代制にして助け合う
麻雀は禁止(N所長自身もやらない)
全員の健康診断結果を所長へ提出
高血圧のメンバーには「ラーメン禁止令」
ある月の会議で、N所長は健康診断結果の年度推移グラフを提示した。
そこに描かれていたのは、V字回復のごとく急激に改善された数値だった。
さらに、そのグラフを営業所の「売上実績グラフ」に重ね合わせると、驚くことに、二つの線はピタリと重なったのだ。
「健康は、会社の業績を良くする」
まだ世の中に「健康経営」という言葉が浸透していなかった時代。
N所長が示してくれたのは、社員の命と組織の成果を同時に守る、本物のリーダーシップだった。
ただ、平均寿命は延びたのだろうか、正確なデータは無い。
相変わらず、定年後に直ぐに亡くなる方が多い気がするのだが。
