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『世界のスパイス、日本のスパイス』:図解で学ぶ!

スパイスは主役とはならないものだけど、主役を素晴らしく引き立てる名脇役。欧州諸国が海外での覇権を競った根底に、スパイスがあったのは事実。株式会社のルーツともいわれる東インド会社は、インドの香辛料をもってくるために作られたという意味もあります。

我が家は鍋料理が多いので、必然的にスパイス(香辛料)を使うことも多くなっております。

桃屋のこれが鍋には一番

読み込んだ本は、30年ほど前に刊行されたこの1冊。
スパイスの不思議な歴史、この機会にぜひご確認ください。

スパイスの知識と料理
(素敵ブックス53マイライフシリーズ特集版)
有元葉子(著)

世界を戦争に巻き込んだスパイス

スパイスの歴史は、人類が地上に誕生したときから始まっていたと考えられています。今日では料理に欠かせない存在ですが、遠い国々との交流がなかった中世以前には、現在とは少し異なる目的で重宝されていました。
しかし、古代から中世にかけて、ヨーロッパと東洋の間で金や銀に匹敵する財宝として取引され、中継地となったアラビアの商人たちが東西を行き交い、取引を独占して巨万の富を得ました。

その後、食用としての利用が盛んになるにつれ、中世ヨーロッパではスパイスを求める動きが一段と強まります。特に肉食中心の食生活において「こしょう」の需要が急増し、最高級の貴重品として取引されるようになりました。ヨーロッパの人々にとって、スパイスを産出する東洋はまさに「宝の島」。その憧れに火をつけたのが、1299年に登場したマルコ・ポーロの『東方見聞録』です。
中国やモルッカ諸島のスパイスに関する記述は、人々に強烈な印象を与え、海の向こうへ進出する夢を駆り立てる原動力となりました。

15世紀末、東洋のスパイスを直接手に入れるため、海の冒険家たちが次々と大洋へと漕ぎ出します。ちなみに有名な冒険家たちは、下記のスパイスを持ち帰っています。

  • コロンブス:アメリカ大陸を発見。のちに唐辛子、オールスパイス、バニラなどの新たなスパイスをヨーロッパにもたらす契機となりました。

  • バスコ・ダ・ガマ:インド航路を開拓。こしょうやシナモンを安価に入手するルートを開き、アラビア商人による独占を打破しました。

  • マゼラン:世界一周の途上で戦死するも、残された部下たちが「香料諸島」と呼ばれたモルッカ諸島を発見。クローブ、シナモン、ナツメッグ、メースを本国スペインに持ち帰ることに成功。

海洋貿易が開拓されると、西欧各国はスパイスの産地を独占しようと争奪戦を開始。これが「スパイス戦争」です。
特に、産地が特定の地域に限定されていた「こしょう」「クローブ」「ナツメッグ」の3種を巡り、ポルトガル、スペイン、イギリス、オランダなどの大国が血まなこになって覇権を争いました。
しかし、この戦争は栽培地の拡大という形で終わりを迎えます。18世紀後半、フランスやイギリスがクローブやナツメッグの苗木をこっそりと持ち出し、自国の植民地や他地域へ移植することに成功。世界中で栽培が行われるようになったため、特定の国による産地の独占は意味を失いました。
量産化が希少価値の喪失につながることは、今も昔も変わりません。

ウェディングケーキのルーツ:アニス

三日月形の小さな種子に甘い香りを秘めたアニス。古代ローマ時代、アニスには消化を助ける効果があると信じられていました。

当時、豪華な宴会や結婚式の祝宴の最後には、招待客の食後の消化を助ける意味を込めて、アニスシード入りのケーキを振る舞う習慣が存在したそうです。
そして、このおもてなしの習慣こそが、現代のウェディングケーキの伝統を生み出す起源となりました。

恋人の浮気を防ぐ魔力:キャラウェイ

ゴルフ用品のメーカー名ともなっているキャラウェイ。クミンとよく似た外観ながら、爽やかな甘みを持ちます。

このスパイスには、かつて人や物を引き留めておく「秘薬的な魔力」があると広く信じられていました。キャラウェイの種子とともに入れておいた品物は、決して盗まれず、万が一盗もうとした者は、その場にくぎづけにされてしまうということも信じられていました。それだけ魅力的な香りだったのでしょう。
それが高じて、キャラウェイの香りは恋人たちの愛情を持続させ、お互いの浮気を防ぐロマンチックな魔力もあるとされ、人々はお守りのように大切に扱っていたそうです。

「開けごま!」の由来:セサミシード(ごま)

世界中で親しまれている香ばしいごま。『千夜一夜物語』に登場する有名な呪文「開けごま!」の由来は、ごまのユニークな生態が関係しています。
ごまは完熟すると、種子の入ったさやが突然バネ仕掛けのようにポンと音を立てて割れ、中身を勢いよくはじき出す性質。このさやが開く劇的な瞬間が、固く閉ざされた宝物の洞窟の扉を開けるおまじないの言葉へと連想されたのです。
サントリー社の「セサミン」の語源となっていることからわかるように、ごまには疲労を回復し、若さを保つ成分が入っています。

サッポロ一番塩らーめんについてますね

火あぶりの刑を招いた高貴な色:サフラン

美しい黄金色に染め上げるサフラン。わずか1グラムのサフランを得るために150輪以上の花が必要とされる、極めて高価なスパイスです。
古代ギリシャでは、この黄金色が「ロイヤルカラー」として、至高の尊重を受けたとされます。そのあまりの価値の高さから、中世のヨーロッパでは、サフランの偽造品を販売した者が火あぶりの刑に処せられたという、美しくも苛烈な歴史の記録が残されています。

日本のスパイス

日本のスパイスは、料理に豊かな香りと辛味を添え、素材そのものの風味を高める役割のものが中心です。
青じそ、山椒、柚子、ミョウガなど、顔ぶれも実に多彩で、これらは古くから薬味や香りづけとして、四季折々の日本の食卓を支えてきました。
西洋スパイスのように乾燥させて使うだけでなく、生のまま刻んだり、すりおろしたりして繊細に用いる点に、和の香辛料ならではの特徴があります。

山椒(さんしょう)

山椒は、ミカン科の植物で、古くから健胃や整腸、駆虫などの薬用としても重宝されてきました。

私の推し山椒2つ

成長段階に応じて、ほぼ全ての部位が異なる役割を担う奥深い成り立ち。さわやかに香る若葉は「木の芽」として吸いものの香りづけに、黄色い小花は「花山椒」としてつくだ煮に。未熟な青い果実は「実山椒」に、完熟してはぜた果皮は粉末の「粉山椒」に仕上げられ、うなぎの蒲焼き等に欠かせません。

どこぞやのひつまぶし

山葵(わさび)

寿司の一般化とともに、山葵はもっとも馴染み深い香辛料となりました。
山葵はアブラナ科の植物で、全草に特有の辛味と香りがあり、食欲刺激や消化促進、優れた殺菌作用などの実用的な薬効を伴います。

特に和食の中心といえるお刺身や寿司、そばに不可欠なのが根茎。茎のほうから目の細かいおろし金ですりおろすことで、あのツーンと鼻に抜ける強烈な辛味と爽快な香気が際立ちます。若い葉は「葉わさび」、つぼみをつけた若茎を「花わさび」と呼び、おひたしや漬けものにする使われ方もあります。

ぶりの胡麻和え

柚子の皮(ゆずのかわ)

柚子はミカン科の柑橘類で、酸味が強く特有の甘く強い芳香を放ちます。夏には青く、寒くなると黄色く色づく季節の移ろいも日本らしさを感じさせる特徴があります。
黄色い果皮を薄くそいだものは、吸いものや漬けもの、酢のものの格調高い香りづけとして、古来より重宝されてきました。伝統的な薬味である「七味唐辛子」の調合原料や、青唐辛子と塩を合わせる「柚子こしょう」の素材としても、和の食文化に深く根ざしています。

こんなお手軽なものも

スパイスは日常を美味しく豊かにする魔法の粉

日本のスパイスは、料理全体の味を大きく変えるのではなく、「素材の持ち味を引き立てる」ことに主眼が置かれます。乾燥させて使うだけでなく、生の葉を刻んだり、根茎をすりおろしたりして、その瞬間のフレッシュな香りと瑞々しい刺激を楽しむ繊細な使われ方が主流です。

一方、世界のスパイスは「強い臭みを消し、または新しい風味を劇的に与える」ために、乾燥させたホールやパウダーを加熱調理の段階からしっかりと投入することが特徴。肉食文化や厳しい気候の中で、防腐、保存、食欲増進を果たすための力強いパートナーとしての歴史的役割だったのです。
かつては戦争の火種ともなったスパイス。日本でも海外でもあらゆる食卓に欠かせないものであることに変わりありません。

スパイスの知識と料理
(素敵ブックス53マイライフシリーズ特集版)
有元葉子(著)


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