ある人が教えてくれた後悔しない人生と死との向き合い方
ドバイへ旅立つ直前、日本で最後にした仕事。
それは今も、そしてこれからも永遠に完成することはありません。
あのとき私はその作品の完成を心待ちにしていました。
しかしその作品は世に出ることなく、未完成のまま世を去った一人の天才クリエイターがいました。
今敏監督との出会い
当時クリエイターを紹介するNHKの番組で初めて私は今敏監督と出会いました。
『東京ゴッドファーザーズ』や『パプリカ』で世界的に知られるアニメーション監督です。
収録後、飲みに連れて行ってくださった今さんは「もし僕が仕事を依頼するなら彼女に頼みますね」と笑いながら言ってくださいました。
「あなたが浮かんだ」依頼の理由
しばらくして、今さんの新作のあるシーンの依頼をいただきました。
私の過去の作品に似た場面があり、私を思い出してくださったとのことでした。
打ち合わせで監督は「このパートを作ろうとしたとき、あなたが浮かんだんだ。仕事を依頼するならあなたにするって言ったでしょ」と笑いました。
突然の別れ
やがてドバイ行きが決まり、出発前にスタジオを訪れたのですが今監督の姿はありませんでした。
「今さんは? 忙しいんですか?」と聞くと「…まぁ、そうですね」と歯切れの悪い返事。
当時はあまり深く考えませんでした。今思えばすでに体調を崩されていたのでしょう。
何も知らないまま依頼された素材を納品し、私はドバイへ飛び立ちました。
しばらくして私は今さんの訃報を知りました。
冗談かと思ったほど突然の別れでした。
遺書に刻まれた教訓
その後、監督の遺書とも言われるブログ記事を読み、心に残った一節があるので紹介します。
幸せそのものも大事だけれど、幸せを感じる力を育ててもらったことに感謝してもしきれません。
幸せな環境にいてもそれを感じる力がなければ意味がない。
この言葉に気づかされて以来少し辛いと感じたとき、自分の「幸せを感じる力」が鈍っていないか立ち止まって考えるようになりました。

まとめ
誰にでもいつかお別れはやってきます。それは突然予告なく訪れるかもしれません。
数ヶ月前、私は父を亡くしました。
海外で暮らす私ですが、父が旅立つ2ヶ月前に1ヶ月間一緒に過ごすことができました。
今思えばそれは父からの最後の贈り物だったのかもしれません。
今監督が教えてくれた「幸せを感じる力」。
父との最後の時間を通して、私はその言葉の本当の意味を理解できたような気がします。
だからこそ、会いたい人には会えるときに会い、伝えられるときに伝え、できるときに全力でやっておく。
先のことなんて誰にもわからないから、今この瞬間を精一杯生きるしかないのです。
あの未完の映画と父との最後の時間が私にそのことを教えてくれました。
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