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同じ怒りを!:『鬼門の村』『卒業生には向かない真実』『ストーンサークルの殺人』

『鬼門の村』
『卒業生には向かない真実』
『ストーンサークルの殺人』
 この3冊に共通するのは、自分のものではないけれど「怒り」を引き受け、晴らすこと。
 私の信条たる「復讐は成されてしまえ」の直接性とは異なるけれど、根っこは同じであると感じて読んでいます。


私の安寧を奪った輩が生きる世界への「怒り」:『鬼門の村』

『鬼門の村』
櫛木理宇(東京創元社)

 主人公は、教授からのバイトを引き受けた男子学生・友部。わざわざ離れた土地の「事故物件」で、その土地のものを飲み食いすることを禁じられながら、実話怪談の原稿を整理するという「曰くがないわけないバイト」をするなかで、この土地に染みついた因縁と、自分を選んだ教授の思惑を理解していく。

 バラバラに見えていた実話怪談に関連性が見えはじめ、それが滞在中の「忌み地」の正体に繋がるのは、予測できた展開です。しかし、それと同時に明かされる教授の思惑と、その「怒り」に同調して最終的な道を選ぶ友部の姿に、私は快哉を叫びました。そこに到達するまでが長かったこともあるし、なにせ櫛木サンの作品なので土地に染みついた因縁がソレ系で鬱々としていたところに、友部のこの判断が書かれて、目の前が開けたような感覚になりました。
 友部と教授には「同じ怒り」があって、もちろん友部が同調したのもその「怒り」です。しかし、それと同時に、自分とは異なるヨリの「怒り」も引き受けて、友部は村よりも世界よりも、その「怒り」を晴らすことを選ぶ。これはある種の希望だと、私は思います。最高です。


女性たちが受けてきた仕打ちへの「怒り」:『卒業生には向かない真実』

『卒業生には向かない真実』
ホリー・ジャクソン(服部京子/訳、創元推理文庫)

 主人公は、自分のごく身近で起きた殺人事件の真相を暴き、同時に周りの人間関係も壊してきた、大学入学を控えた女子学生・ピップ。もうこれ以上「他人の事件」に関わりたくないと思いながらも関わってしまい、巻き添えではなくターゲットになってしまったピップは、しかし犯人を返り討ちにして命拾いをする。すでに警察への不信が高まっていた彼女は、自分の罪を着せるべき相手に気付き、行動を起こす。

 初読のときは、第一部の終わりに呆然とし、そこからの第二部でずっと祈る気持ちで読み進めたことを覚えています。彼女が無事に、奴に罪を着せられますようにと、祈りながら。ピップは、最初は真実を明らかにするために事件を調べはじめ、しかし真実だけでは正義は果たされず、然るべき罰も与えられないと身をもって知ります。
 これはシリーズ3巻目ですが、1巻目はまだしも2巻目の終わりは読後感があまりに重かったです。余談ですが、同じ著者の『夜明けまでに誰かが』は、シリーズ2巻目と同じ読後感になるうえ1冊しかないのでとてもしんどかったです。ある種のイヤミス。
 閑話休題。この作品の何よりのキモは「奴が正当に裁かれないのなら、別の罪を着せてでも罰を与える」という道をピップが選ぶところ。それは正しい道ではないけれど、じゃあその正しさに意味があるのか? と、これまでの物語で「怒り」を抱えていたピップや仲間たち、そして読者たる私は思うわけです。その「怒り」を、言ってしまえば乗算してからぶつけて晴らしてくれたことに、私は快哉を叫びました。最高です。


子どもたちが受けてきた仕打ちへの「怒り」:『ストーンサークルの殺人』

『ストーンサークルの殺人』
M・W・クレイヴン(東野さやか/訳、ハヤカワ文庫)

 主人公は、停職させられていた男性刑事・ポー。かつて部下だった上司、頭が良すぎるゆえに爪弾きにされていた部下、そしてこれまでも組んできた同僚とともに、各地のストーンサークルで行われる連続殺人の捜査をはじめる。調べるほどに被害者が犯してきた罪が明らかになっていく。

 これも、法で裁けない加害者をいかにして罰するか、という話ではあります。なので、どんなに被害者が増えてもいいし、犯人が捕まるにしても殺しきってからになるといいなと思いながら読んでいます。ポーたちが犯人を取り逃がす無能に見えることだけが懸念点。とくにこの1巻目は、ポーと犯人の関係も相まって、ポーは犯人と同じ「怒り」をしっかと引き受けています。だからと言って、わざと犯行を野放しにするわけではないけれど。
 そもそもポーが停職になった理由が、金で逃げた犯人の情報を「うっかり」漏らして、報復する機会をつくったから。それを知ったとき、私は一気にポーへの好感度が高まりました。最高です。


「復讐は成されてしまえ」は、基本的には「だから、復讐する相手を間違うなよ」がセットです。逆恨みは言語道断。でも……『鬼門の村』で友部が世界を見捨てても、それはもう仕方のないことだと思えます。『卒業生には向かない真実』で、奴のものではない罪を着せるのも、『ストーンサークルの殺人』で、果たされた復讐の正当性を証明するだけの操作になっても、それはもう仕方のないことです。
 だって、私も「同じ怒り」を抱えてしまっているのだから。

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