権力分立を徹底!内閣の暴走を許さない ―― 【逐条解説】正統憲法復原・改正草案 第五章 内閣
正統憲法復原・改正草案第五章の逐条解説です。
草案全体はこちらをご覧ください。
第96条 【行政権の帰属】
第96条 行政権は、内閣に属する。
『日本国憲法』の規定を一言一句踏襲
行政権とは何か、という曖昧さまで踏襲してしまいましたが、民社協会等の行政権と執政権を分ける草案も読んでみたものの、そういう変更をすると却って混乱が起きそうなので、『大日本帝国憲法』の復原・改正としてこれでよいのかは議論があるかもしれませんが、本草案では『日本国憲法』の規定を踏襲しました。一応の意義を言うと、正統憲法復原に伴う実務上の混乱を最小限に抑える、とご理解ください。
第97条 【内閣の組織と責任】
第97条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣及び国務副大臣は、国需院議員でなければならない。
3 内閣は、行政権の行使について、帝国議会に対し連帯して責任を負う。
4 国務大臣は法律の定めるところによりその職務を国務副大臣に委任できる。
大臣はすべて国需院議員
大臣は例外なく下院である国需院の議員であるとしました。副大臣も同様です。
また、国務大臣がその職務を副大臣に委任できるようにもしました。
第98条 【国務大臣等の任命】
第98条 国務大臣及び国務副大臣は勅任である。
2 内閣総理大臣は阿衡院の推薦によって任命される。
3 内閣総理大臣以外の国務大臣及び国務副大臣は内閣総理大臣の指名によって任命される。また、内閣総理大臣以外の国務大臣及び国務副大臣は内閣総理大臣からの上奏によって罷免される。
象徴君主の形式のバランスを考慮
第99条で内閣不信任決議の規定があるように、また、第97条で帝国議会との連帯責任が定められているように、本草案でも内閣は実態としては帝国議会の信任がないと存在しえませんが、しかし、『日本国憲法』における国会による指名は採用しませんでした。象徴君主制を取る他国の例を見ても、「事実上、議会の意向を無視して任命できない」だけであって、議会が本当に誰かを指名する制度の国は、あまり多くはありません。
そもそも『日本国憲法』のシステムは、形式的に衆議院と参議院がそれぞれ別々に指名しておきながら、結局衆議院での指名が採用されるという、何のために参議院の指名があったんだ、というシステムになっています。もっとも、何のためかは明白で、国会が指名したという形にするため、つまり、形式的であっても参議院も含めた国会主導にしたいからですが、果たして議会に実質的権限だけでなく形式的権限をも与えることが必要なのか、という話になってきます。
とはいえ、畏れ多くも陛下による勅裁とすると、戦前の政党内閣崩壊みたいなことが起こりうることが容易に想像できてしまいます。内閣不信任決議があるから大丈夫、といっても、陛下が勅裁した政府が内閣不信任決議で倒れようものなら、天皇制廃止論が一気に勢いづいてしまいます。そこで、民選の名誉職的な権威である陛下の「師範」たる阿衡が、国需院の信任を偉そうな人を内閣総理大臣に推薦して、その国需院議員に陛下が組閣の大命を降下する、というシステムにしました。阿衡も即内閣不信任決議となるような首相を推薦はしないので実務上は今と大きく変わりませんが、仮にそんなことが起きても阿衡の責任となるという制度設計です。
第99条 【不信任決議と解散又は総辞職】
第99条 内閣は、国需院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に国需院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
『日本国憲法』の規定を踏襲
衆議院を国需院に改めたこと以外は全く同じです。
第100条 【内閣総理大臣の欠缺による総辞職】
第100条 内閣総理大臣が欠けたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
『日本国憲法』の規定を踏襲
『日本国憲法』からの唯一の変化は、総選挙による総辞職の明文化は、国務大臣がすべて国需院議員だという97条の規定により不要(蛇足)になった、ということです。なので実態は変わりません。
第101条 【総辞職後の職務続行】
第101条 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。
『日本国憲法』の規定を一言一句踏襲
特に変更の必要が無いので仮名遣い以外はそのまま踏襲しています。
第102条 【内閣総理大臣の職務権限】
第102条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般統治及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
念のために「国務」を「統治」に変更
「国務」の拡大解釈を防ぐために「統治」に変更した点以外は『日本国憲法』のままです。実質的変更はありません。
第103条 【内閣の職務権限】
第103条 内閣は、内政、外政、法政、財政及び軍政の事務の外、左の事務を行う。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、枢密院の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算案を作成して帝国議会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
恩赦や栄典は内閣から独立
『日本国憲法』の規定をほぼそのまま踏襲していますが、第1章及び第10章で恩赦や栄典は統治ではなく治教(第10章)であるとして内閣から切り離していますので、そこは削除しています。また条約の承認は議会ではなく枢密院(第6章)となっています。
モンテスキューの三権分立論は、元々外交権を立法や司法から切り離すことが主題でした(もっともこのあたりの『法の精神』の内容は整合的な解釈が難しいものとなっており、論者によってモンテスキューの真意は変わってきますが)。今でも正直、私が政界を見た範疇では国会による承認はかなり形骸化しています。日本の国会議員は事前に決められたシナリオ通りに行動するのはいつものことですが、特に条約ではその傾向が強いため、脱原発派の議員が原発輸出協定に機械的に賛成して、そのことを言行不一致だと非難されるといいうようなことも過去にはありました。正直、日本の国会ではお約束の儀礼的な行為で非難されるのは可哀そうでした。
私はそういう形骸化した儀式を議会ですることを憲法に規定するのはやめた方がよいと考えます。変な条約を通されたら不信任決議をすればよいだけです。また現実問題、条約施行法は議会を通さないといけないので、議会の意向を完全に無視した条約の締結はあり得ません。
第104条 【法律及び政令への署名と連署】
第104条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
『日本国憲法』の規定を一言一句踏襲
特に変更の必要は無いのでそのまま踏襲しました。
なお第5章逐条解説の最後に少し触れると、『日本国憲法』の「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない」は本草案に採用しませんでした。検察権は行政権に属しており、検察が暴走して国務大臣を訴追することは、この規定がなくても指揮権発動で防げます。むしろ大臣の犯罪を事実上訴追できない規定は明文化することは弊害が大きいと考えます。
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