独立した違憲立法審査の導入を! ―― 【逐条解説】正統憲法復原・改正草案 第八章 擁憲
正統憲法復原・改正草案第八章の逐条解説です。
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第122条 【擁憲権の帰属】
第122条 一切の法律、条約、判決、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限は、天皇の名において、司法裁判所より独立した、擁憲裁判所がこれを行う。
憲法解釈権の独立
憲法の解釈権は一義的にはあらゆる国家の表現人、即ち、全国民がそれぞれ有するべきです。しかしながら、その中で解釈が大きく分かれた場合、それを統一する機関が必要になってきます。それが擁憲裁判所です。
司法権で良いではないか、という意見が出てくるかもしれませんが、極めて残念なことに統治行為論だの部分社会論だのと言った憲法の適用を避ける判決がこれまで沢山下っており、もはや判決の憲法解釈が正しいかも審査の対象となるべきことは明白であると私は考えます。
第123条 【擁憲裁判所の構成】
第123条 擁憲裁判所は、擁憲院、枢密院、国華院及び州華院並びに総合擁憲審判所及び基礎擁憲審判所によって、構成される。
上院の権能と限界
上院に憲法裁判所的な機能を付与することは、多かれ少なかれかつては多くの国でみられており、モンテスキューの思想がその根源だと思いますが、問題は国華院や州華院はあくまでも「権力無き上院」だということです。もちろん、直接権力を行使しないからこそ憲法判断に向いているわけではあるのですが、それが終審になるとさすがにヤバい、ということで次の124条で擁憲院という終審を定めています。
なお枢密院は戦前から憲法解釈をする役割が与えられていましたが、こちらもやはり終審にすると陛下の顧問団が憲法解釈権を独占する形になってしまいますので、擁憲院が終審ということにしています。
ところで上院が確定的でなくても擁憲裁判所を構成することについては、実は立法権とのバランスから合理的な理由があります。というのも裁判所は、違憲判決に及び腰な理由の一つが、自分たちに立法権がないからだ、という意味のことを(法曹らしいロジックでくるんではいますが)公然と判決文に書くことすらあります。しかし州華院や国華院は自分たちも立法府側の人間ですから、「いや、こんな規定は違憲である」と言いやすいし、しかもそれが三権分立に反するということにもなり得ません。グレーゾーンでも違憲判決が出しやすくなるので、これは確定審でなくてもやはり政治的には効果が大きくなります。
第124条 【擁憲院の組織】
第124条 擁憲院の裁判官は、阿衡が各一人を推薦し、勅任される。
2 擁憲院総裁は、擁憲院の裁判官の互選により選出され、勅任される。
3 擁憲院の裁判官の任期は十二年である。
アメリカ連邦最高裁型の中立保障
5人いる民選の陛下の師範である阿衡が推薦する、しかも阿衡の任期は4年なのに対して擁憲院の裁判官の任期は12年である、ということで、15人の推薦者が異なる裁判官で擁憲院は構成されるということになります。アメリカの連邦最高裁と同様、任命権者の違う裁判官が共存することで結果的に中立性を保つという構図です。
終審に相応しい構成としており、しかも形式的任命者は天皇、実質的任命者も名誉職とは言え「民選」+「陛下の師範」という二重の権威を背負った阿衡、ということで、内閣や帝国議会に遠慮せず、どんどん違憲判決を下してくれることが期待できます(現実には、その期待こそ、内閣や議会が違憲なことをする抑止力となる構図です)。
第125条 【総合擁憲審判所の設置】
第125条 総合擁憲審判所は各州に設置される。総合擁憲審判所の裁判官はその州の観察使が国政監察院の同意を得て任命する。
違憲判決が出やすい構図の構築
総合擁憲審判所の裁判官は、民選の州の首長である観察使が、阿衡に選ばれなかった阿衡補や国需院議員総選挙の落選者から選出されたもので構成される国政監察院(第12章)という事実上の野党勢力の牙城の同意を得て任命することで、一定の民意は踏まえつつもやはり本質的に違憲判決を出すイニシアティブを持ちやすい人物が就任することになります。
第126条 【基礎擁憲審判所】
第126条 基礎擁憲審判所は法律に基づき設置される。その裁判官は設置される州の観察使が総合擁憲審判所の作成する名簿に基づいて任命する。
初審においても一定の独立性を確保
多くの場合において初審(127条)である基礎擁憲裁判所については、総合擁憲裁判所の名簿で任命されるということで、三権からの一定の独立が保障されています。
第127条 【国民の提訴権、擁憲審判所の権能】
第127条 凡て国民は法律、条約、判決、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについて、国その他の公法人を被告として、基礎擁憲審判所に提訴する権利を有する。
2 基礎擁憲審判所の判決については、原告及び被告は、総合擁憲審判所に上訴する権利を有する。
3 総合擁憲審判所は、次の各号の全てに該当する場合において、法律、条約、判決、命令、規則又は処分が憲法に適合することが明白で疑う余地がないことを理由に、その裁判官の総意によって、上訴を禁ずる判決を下すことが出来る。但し、憲法の解釈以外の争点を理由に司法裁判所に上訴する権利は侵されない。
一 原告の主張する憲法の解釈が、過去の司法裁判所及び擁憲裁判所のあらゆる判決及び判決に附して示された裁判官の意見と一致しない、専ら独自の主張であるとき。なお、その判決及び判決に附して示された裁判官の意見には、確定していない若しくはしなかった又は判決に採用されなかった判決及び判決に附して示された裁判官の意見も含むものとする。
二 原告の主張する憲法の解釈が、他の成り立ちうる憲法の解釈に対する学術的な批判を欠いて主張されていることが、合理的な疑いの余地なく明白であるとき。
三 原告の主張する憲法の解釈に重大な誤りの存在することが合理的な疑いの余地なく明白であるとき。
4 前項の場合を除き、総合擁憲審判所の判決については、原告及び被告は、州華院に上訴する権利を有する。
全国民に擁憲裁判所への提訴権を
繰り返しますが、憲法解釈権は本来は国家の全ての表現人(広義の機関)にあるべきです。従って、全国民に一義的には憲法解釈権があり、憲法訴訟はいわば行政訴訟よりも機関訴訟の性格が強いものです。すべての国民には第一審である基礎擁憲審判所に提訴する権限があり、さらに第二審である総合擁憲審判所に上訴する権限までをも認めて、この段階では(中二病患者によるものも含めて)憲法訴訟が頻繁に敢えて起きるように設定しています。
その上で、絶対に無茶苦茶な論理での憲法訴訟をしてくるのが出てきますから、総合擁憲審判所には「上訴禁止」の判決を全会一致で出す権限を認めています。でないと州会の上院でもある州華院が中二病患者の相手でパンクしてしまいます。しかしながら、上訴禁止には厳重な要件があります。特に重要なのが第3項第1号の、どの判例にも該当しない、ということです。「確定していない若しくはしなかった又は判決に採用されなかった判決及び判決に附して示された裁判官の意見」というのは、いわゆる少数意見や補足意見、或いは、上訴されて破棄された判決、そういったものを含めたあらゆる判例を見てみても、原告と同じ論理で主張しているものが全くない、その上で第2号や第3号にも当てはまると全会一致で判断されたら、上訴は認めない、ということです。
言い換えると、当然のことながら、第一審で違憲判決が下って第二審で逆転合憲判決が下ったようなケースだと、上訴禁止の判決は絶対に下せません。それどころか、他の州で類似の訴訟で違憲判決が確定判決では無くても出ていたら、その時点で上訴禁止は出来ません。なのでまさに中二病的な、だれにも相手にしないような主張の場合だけが上訴禁止となる訳です。
第128条 【擁憲委員会】
第128条 国華院及び州華院は擁憲委員会を設ける。擁憲委員会は、各議院の議員の互選によって選出された委員によって構成され、且つ、その委員の過半数が法曹の資格を有することを必要とする。
2 擁憲委員会は、法律の定める場合においては、その議院を代表して判決を下すことが出来る。
上院の中に擁憲専門の委員会を設置
帝国議会の上院である国華院と州会の上院である州華院は、127条における訴訟だとそれぞれ第四審と第三審になるわけですが、一々本会議で裁判をやっていたら収拾がつかないので、擁憲委員会という専門の委員会を設置できる根拠規定を設けています。ただ、129条や130条を見れば分かるように、本会議で判決を下さないといけない場面もあります。
第129条 【雲客の提訴権、州華院の権能】
第129条 凡て雲客の位階を有する国民は、法律、条約、判決、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについて、国その他の公法人を被告として、州華院に提訴する権利を有する。
2 州華院の判決については、原告及び被告は、国華院に上訴する権利を有する。
3 州華院は、次の各号の全てに該当する場合において、法律、条約、判決、命令、規則又は処分が憲法に適合することが明白で疑う余地がないことを理由に、擁憲委員会の総意と州華院全体の出席議員の三分の二以上の賛成によって、上訴を禁ずる判決を下すことが出来る。但し、憲法の解釈以外の争点を理由に司法裁判所に上訴する権利は侵されない。
一 原告の主張する憲法の解釈が、過去の司法裁判所及び擁憲裁判所のあらゆる判決及び判決に附して示された裁判官の意見と一致しない、専ら独自の主張であるとき。なお、その判決及び判決に附して示された裁判官の意見には、確定していない若しくはしなかった又は判決に採用されなかった判決及び判決に附して示された裁判官の意見も含むものとする。
二 原告の主張する憲法の解釈が、他の成り立ちうる憲法の解釈に対する学術的な批判を欠いて主張されていることが、合理的な疑いの余地なく明白であるとき。
三 原告の主張する憲法の解釈に重大な誤りの存在することが合理的な疑いの余地なく明白であるとき。
実質的な第一審としての州華院
この規定は127条とほぼ同じですが、ただ一般国民が訴えた場合は第三審となるものの、雲客の位階、つまり従五位下以上の位階の国民が訴える場合は第一審となります。現実的には一般国民が訴えた場合も、あまりにもトンデモナイ判決は総合擁憲審判所で上訴禁止となっているでしょうから、州華院が実質的な第一審となります。
州華院も127条の総合擁憲審判所と同じ場合に上訴禁止の判決を下せますが、それを出すには擁憲委員会の全会一致と本会議での三分の二以上の賛成という、厳格な要件が必要になります。これにより本当は違憲なのを政治的都合で州の上院が上訴禁止にすることを防ぎます。
第130条 【国政監察院の提訴権、国華院の権能】
第130条 国際監察院は、法律、条約、判決、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについて、国その他の公法人を被告として、国華院に提訴する権利を有する。
2 国華院の判決については、原告は、枢密院に上訴する権利を有する。
3 国華院は、次の各号の全てに該当する場合において、法律、条約、判決、命令、規則又は処分が憲法に適合することが明白で疑う余地がないことを理由に、擁憲委員会の総意と国華院全体の出席議員の三分の二以上の賛成によって、上訴を禁ずる判決を下すことが出来る。但し、憲法の解釈以外の争点を理由に司法裁判所に上訴する権利は侵されない。
一 原告の主張する憲法の解釈が、過去の司法裁判所及び擁憲裁判所のあらゆる判決及び判決に附して示された裁判官の意見と一致しない、専ら独自の主張であるとき。なお、その判決及び判決に附して示された裁判官の意見には、確定していない若しくはしなかった又は判決に採用されなかった判決及び判決に附して示された裁判官の意見も含むものとする。
二 原告の主張する憲法の解釈が、他の成り立ちうる憲法の解釈に対する学術的な批判を欠いて主張されていることが、合理的な疑いの余地なく明白であるとき。
三 原告の主張する憲法の解釈に重大な誤りの存在することが合理的な疑いの余地なく明白であるとき。
違憲判決を確定させる国華院
帝国議会の上院である国華院は、一般国民にとっては第四審、従五位下以上の国民にとっては第二審、そして、国需院議員総選挙の落選者から選出される国政監察院(第12章)にとっては第一審ですが、被告となる国その他の公法人にとっては、もっと重大な意義を持ちます。というのも、本条は127条や129条とほとんど同じですが、唯一、上訴権が保障されているのは原告のみで被告の上訴権は保障されていないからです。
つまり、国華院で違憲判決が下ると、事実上そこで判決が確定します。国華院は立法府を構成しますから、立法府が違憲と言うとその判決は公定力を持ってしかるべきです。
憲法は権力を縛るためのものですから、違憲判決の確定は合憲判決の確定よりもはるかに容易な構造にしないといけません。そして、国華院が不当に合憲判決を下すことを防ぐために、原告には枢密院への上訴の権限がある、という形になっているのです。
第131条 【枢密院の判決の効力】
第131条 枢密院の判決については、原告及び被告は、擁憲院に上訴する権利を有する。
補助的な審査機関
枢密院は、一般国民にとっては第五審、従五位下以上の国民にとっては第三審、国政監察院にとっては第二審で、かつ、国華院が合憲判決を下したものの原告が上訴してきた場合に判決を下します。
ただ、枢密院自身は本来の役割はあくまでも陛下の諮問機関です。枢密院で判決が確定してしまうと、陛下の諮問機関が立法府の合憲判決を覆せるということになります。そのため枢密院では被告にも上訴の権利があります。
第132条 【擁憲院の終審性】
第132条 擁憲院は擁憲裁判所の終審である。但し、擁憲裁判所の原告及び被告は、擁憲院の判決について、憲法の解釈以外の争点を理由に司法裁判所に上訴する権利は侵されない。
擁憲院が終審と明記
擁憲院は裁判官の全てが別々の阿衡によって任命されている(124条)という独立性の高い機関ですから、憲法訴訟の終審であるに相応しい中立性を期待できます。
「権力無き上院」とは言え、立法府を構成する国華院の判決を覆すにはそれなりの論拠が要ります。擁憲院の場合、繰り返しになりますが、それは民選且つ陛下の師範という、民主的にも君主政体的にも二重に権威のある阿衡から、それもバラバラに任命されて多様な価値観を反映しているという、構成にあります。それにより遠慮なく違憲判決を出してもらうことを期待できます。
第133条 【有位者の違法行為における罪刑法定主義の例外】
第133条 国政監察院及び公民大会は、位階を有する者が、法律に違反にすることにより、国民の正当な権利を侵害し又は公共の福祉若しくは公共の秩序に反したときは、その行為が犯罪に該当するかに関わらず、擁憲裁判所の国華院に起訴をすることが出来る。ただしこの場合において、国政監察院においては出席した国政監察官の五分の三以上の賛成による議決が、公民大会においては出席した公民大会の議員の三分の二以上の賛成による議決が、それぞれなければ起訴をすることはできない。
2 この裁判において、国華院は、擁憲委員会の総意で有罪と判断され、且つ、全体の出席議員の五分の三以上の賛成による議決があった場合のみ、有罪の判決を下すことが出来る。
3 この裁判において、国華院は、有罪の被告人に対して、次の各号の一に該当する事項につき一階のみ官当の判決を下すことができ、その他の刑罰を科すことはできない。但し、各号の一について、被告人が受けた刑罰及びあらゆる制裁を考慮してもなお、公共の福祉及び公共の秩序の観点より特に必要があると認められるときは、国華院の出席議員の三分の二以上の賛成による議決があった場合に限り、五階以下の官当の判決を下すことが出来る。
一 謀反
二 謀大逆
三 謀叛
四 悪逆
五 不道
六 大不敬
七 不孝
八 不義
九 公共の福祉に著しく反する行為を行うことによるその位階を有する者に対して国民が当然に抱く期待又は信頼に対する重大な背信
十 公共の秩序に著しく反する行為を行うことによるその位階を有する者に対して国民が当然に抱く期待又は信頼に対する重大な背信
4 この裁判においては被告人のみが上訴する権利を有する。
「犯罪でない違法行為」も位階剥奪の根拠に
これは、国需院議員総選挙の落選者から選出されるいわば野党勢力の牙城である国政監察院(第12章)と帝国議会の下院である国需院や州会の下院である州需院の議員らが主力を占めるいわば多数派の民意の名誉職的議会である公民大会(第4章)とが、官吏や吏員を対象に、位階を有しておきながら違法なことをした人を起訴してその位階の降格や剥奪を求めることが出来る、という規定です。
これは刑罰ではなく官当、つまり位階の降格や剥奪を求めるものですので、厳密には罪刑法定主義とは別枠の行政処分でも良い、それでも罪刑法定主義には理屈の上では反しない、現に位階では無いですが(戦後生前叙位は「停止」されているので)勲章では行政処分で剥奪が行われています。しかし、モンテスキューも言っている通り君主政体のバネは名誉ですから、その名誉の中枢を占める位階の降格や剥奪には慎重である必要があります。なので憲法で厳重に規定をしているのです。
これは擁憲裁判所へ行われる裁判ですので、被告人は枢密院に上訴が出来ますし、枢密院の判決にも不服があれば擁憲院が終審として判決をします。なぜ司法ではなく擁憲の役割になるのか、というと、理念上と実務上の二つの理由があります。理念上は、これは単なる形式的な違法行為ではなく、八虐や公共の福祉・公共の秩序に著しく反する場合といった要件を満たしている場合に官当をするわけですが、こうした概念はいわば不文憲法を構成するからです。位階は『大宝律令』の頃から現代まで若干の改正のみで一貫して使われており、それ自体がもはや不文憲法の一部です。しかも公共の福祉や公共の秩序の解釈はまさに憲法解釈の中枢です。実務上は、こういうのはどうしても政治的評価が入り込んでしまい、司法府が及び腰になりやすいからです。しかしここで及び腰になると奈良時代から続く位階制度への「国民が当然に抱く期待又は信頼」という重大な法益が害されてしまうので、擁憲裁判所が適切なのです。
第134条 【擁憲裁判所による再審】
第134条 日本国民は、法律の定めるところにより、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、擁憲裁判所に対して再審の提訴を行うことが出来る。
憲法にも再審制度を明記
司法裁判所による再審制度も法律で整備すべきですが、それだけでなく、司法府からは独立して擁憲裁判所が再審を行えるように規定しました。
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