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忘れられないあの風景|吹奏楽のステージ

私の忘れられない思い出の風景は、吹奏楽の演奏でステージに上がった時の風景だ。
観客席からではなく、演者側からの風景である。

私は、あの風景を一生忘れないだろう。


吹奏楽部との出会い

私が吹奏楽を始めたのは、中学生の時だ。
当時、私が住むエリアは市内の公立中学校の大半が吹奏楽部の強豪という、とんでもないエリアだった。
特に、進学予定であった学区の中学校は、全国大会の常連で、何度も金賞を受賞していたのだ。
 
小6の頃の私は、進学予定の中学校が吹奏楽部の強豪であることは知っていた。
、さらに4歳の頃からエレクトーンを習っており、譜面は読めるし、楽器演奏も好きであった。
 
しかし、「音楽や楽器が好きだから」が私の入部動機ではない。
私の入部動機は「全国大会に行けば、内申点が上がり、高校受験で有利になるから」だ。

私も私で、とんでもなく可愛げのない子供だった。
こんな可愛げのない理由であったのは、私の性格的な気質などが関係していると思うのだが、今回は割愛する。

吹奏楽部に入部

中学校へ進学し、他の部活を見学することもなく、吹奏楽部へ入部した。
マンモス校なので、新入部員は25名くらいいたと思う。
 
強豪なので多少の上下関係はあったが、基本的には同じ「仲間」として扱ってもらえた。
昔は後輩いじめなどもあったそうだが、時代の流れなのか激しいものは無かった。

私の担当楽器

入部すると、まず始めに担当の楽器を決めなければならない。
私の希望の楽器は、サックスかトランペット。
見た目も音も格好よく、部活でやるなら、このどちらかが良いなと思った。

しかし、私が担当になったのはユーフォニアムだ。
第3希望まで出した楽器ではないので、決まった時は正直微妙な心境であった。

「ユーフォニアム」知っている人はどれだけいるだろうか?
基本的にはオーケストラで使用されない楽器なので、吹奏楽に興味がない人は知らないかもしれないマイナーな楽器だ。
ユーフォニアムの特徴と言えば、以下の3点だろうか。

  • チューバの半分くらいのサイズ

  • 中低音域の金管楽器

  • やわらかい音色

最初こそ微妙に感じてしまったが、あまり目立たないけどオールマイティーで、やさしくやわらかい音色にすっかりハマってしまった。

中学校=部活三昧

強豪部であるだけに、本当に日々部活三昧であった。
今は教員の働き方改革などで、どんどん中学生の部活動が減らされてしまい、賛否両論でしばしば話題に上がっている。
しかし、当時は「盆と正月しか休みがない」「3年に引退はない」「365日中300日が部活」という感覚だ。

テスト期間はちょこっと休んでいた気もするので、多少盛ってはいるが、引退したのは3年の3月だったのは事実である。

 練習は地獄

当時は本当に大変だった。
肉体的な体罰こそなかったが、精神的な体罰圧力は物凄いものがあった。

先輩からではない、顧問や外部コーチからの圧だ。

昭和さながら、怒鳴られ、罵られ。
現代だったら大問題になって、指導者陣たちは追放されていただろう。

精神的に堪えかね、「辞めたい」と申し出る部員が出たら、連帯責任。
何が何でも引き止めさせられた。
後輩ができないのは先輩の責任。
合奏中に「辞めちまえ!!」「帰れ!!」と、何度追い出されたことか。
恐怖の個人レッスンに神経をすり減らした。

固い絆

このように書くと、「本当に良い思い出なのか?」と思われそうだが、振り返れば確かに良い思い出なのだ。
話を進める。
 
指導者陣が鬼のように厳しいからこそ、部員の団結力、絆はそうとうに強固なものだった。
どんなに罵倒されても、「絶対見返してやろう!!」「絶対にできるようになる!!」と支えてくれたのは、仲間(部員)だ。
 
友達の少ない私が、だいぶ大人になった今でも続いている関係の多くは吹奏楽部の人だ。
 
確かに、練習はキツく精神的にもかなりえぐられた。
だが、結果はちゃんと出してきた。
日本の頂点を目指すのであれば、生ぬるい努力では達成できないのも事実なのだろう。
固い絆で結ばれた仲間がいたからこそ、やり抜くことができたのだ。

吹奏楽の魅力

吹奏楽の魅力といえば、複数人で1つの曲をつくり上げていくところだろう。
ソロの演奏も素敵だが、幾重にも折り重なった音色の重厚さ、迫力には敵わない魅力が、吹奏楽にはある。

そして吹奏楽の演奏は、静かで繊細な表現からダイナミックで壮大な表現まで無限に奏でられる。
表現の厚みも魅力の1つだ。

決して1人では成し得ない、仲間と心を1つにして、初めて1つの曲になるのだ。

最初こそ、不純な動機で入部したものの、吹奏楽の魅力にハマり、どっぷり世界に浸かっていた。

どんなに練習が過酷で精神的に追い詰められても、ステージでの本番を迎えると、全てが昇華してしまう。
「この本番のために練習をしてきて良かった」
「このメンバーでやってきて良かった」
これに尽きる。

ちなみに、我が母校吹奏楽部のモットーは「心を込めて」だ。
演奏を聴きに来てくださった全ての方へ、「心を込めて」演奏を届けるのが使命であった。

忘れられない風景

私の忘れられない思い出の風景は、吹奏楽の演奏でステージに上がった時の風景だ。

ステージに立つと見える風景は、仲間の横顔、指揮者の顔だ。
照明に照らされたステージ上からは、お客様の顔はほとんど見えない。

「ここまで厳しい練習を重ねてきたんだ。心を込めて演奏しよう。全てを出し切ろう。」

緊張と決意が入り混じった仲間の横顔がよく見える。

演奏中、指揮者はもちろん、仲間のことも見る。
奏者は指揮者を向いているので、座る位置によっては仲間同士のアイコンタクトは不可能だ。

しかし、体の動きを見れば「分かる」。

呼吸、リズム、アインザッツ…
一緒に練習をしてきた仲間だからこそ、言葉がなくても通じるのだ。

演奏が終わり、正面を向いて起立をすれば、お客様たちのシルエットが見える。
指揮者が一礼した後、颯爽と退場する。

この一連の風景を、私は一生忘れない。

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