毎週ショートショートnote〜見たことがないスポーツ

「栄光の賛歌」


リノは、少し緊張していた。

呼吸を整え、5分後に来る本番に備える。

<指相撲ワールドチャンピオンシップ 決勝>

日本代表のリノは、1回戦、2回戦、準々決勝と勝ち上がり、
準決勝で延長の末、強豪スペインを下し、決勝進出。

決勝の相手は、過去3連覇をしているドイツ。

体格の良さと、筋力で攻めてくる。

リノは、小柄だが、巧みな指使い、特に人差し指の動きは素早い。

(スピード勝負になりそう)

リノは、何パターンかイメージしていた。

指相撲は、相手の指を5秒間抑えフォールすれば勝ちだ。

母親からのメールを見た。

<自分を信じて。
きっと大丈夫>

リノは、何度もそれを見て泣きそうになった。

いよいよ決勝戦。

相手と向かい合い、そして親指をスタンバイする。

(やはり、握りが強め。
先攻のスピードで捉え、逃げ切る)

リノの眼差しは、キリッと相手を見ている。

<Ready set!
Extended move!>

試合が始まった。

相手も速攻。

手首を外へひねると、人差し指を引っ掛け、
抑えこんできた。

(さすが・・、まずい展開)

<Count! 1 2…>

カウントが入る。

今までに感じたことのない力だ。

(この技、アウトサイドスネーク、何とかしなければ)

リノは、冷静に人差し指の第2関節で抑えながら、
親指を抜く。

カウントは4でギリギリ。

ただ、好機を逸した相手にも隙ができた。

(よし、相手のチャンスは自分のチャンス)

監督がかつて言っていた言葉を思い出した。

すかさず、人差し指で抑えながら、手首を内側にひねり、
さらに抑え込む。

この技は、インサイドドラゴン。

日本では、リノしか使えない必殺の技だ。

相手は抜けられない。

カウントが5をコールした。

1分20秒 フォール勝ちだ。

リノは相手とお辞儀をすると、監督の元へと駆け寄る。

「やったぁ!やったぁ〜〜〜!」

お互い肩を叩き合い、グータッチをした。

リノは、満面の笑顔で喜んだ。

(努力は裏切らない。
ありがとうみんな)

リノの瞳からは大粒の涙が絶え間なく溢れた。