もう一つの選択肢|片想い文芸部 企画応募
選択肢はあった。確実に。
もし、もう一つの選択肢を選んでいたら…。いや、きっと結果は同じだったのだろう。あの人が主役を演じている演劇部の男子のことが好きだったのは、同窓会のときに人伝手に聞いた。
言われてみれば、演技指導のとき、恋する乙女の目をしてた。ただ、その情報がなければ、そこまで思えなかったことだ。それくらい、僕はあの人についてのことをほとんど何も知らない。3年の内、1年と3年で同じクラスになれたのに。
それでも、と思うのは今の生活への不満とかではない。本当に好きな人に、その気持ちを伝えられなかったこと。仮に「マケイン」になったとしても、ちゃんと自分の気持ちに区切りをつけたかったのだと思う。
そうじゃないと、いつまでも僕は肝心な時に逃げ癖のある自分を受け入れることができない。
凄く単純な選択だった。3年の文化祭実行委員をやるかどうか。
ウチの高校は演劇部が全国3位に入るくらい強豪校で、結果として、ほとんどのクラスの出し物は劇になる。
役回りで派閥同士のケンカになるのもよくある話だ。そんな気合いの入った文化祭実行委員は当然モチベも高い。1年のときは文化祭実行員だった。そして、3年の時もう一度二人で実行委員になるんだと思っていた。
しかし、バスケ部の引退試合が近い。ちなみに言っておくが、僕はバスケ自体は好きだが、部活が楽しいと思ったことは小学生のバスケ部時代からほとんどない。それでも、3年生の引退間近ということで、柄にもなく文化祭実行委員を辞退した。
しかも、委員会決めが終わった後に当人から「灯火くんが、文化祭実行委員に手を挙げると思ってたよ」と苦笑して言われた。もう、ホントにショックだった。
極めつけは、他のクラスのバスケ部の主力メンバーたちは、文化祭実行委員もちゃっかりやっていた…。あまりに衝撃が大きくて、3年の文化祭で自分が何の役回りだったのかさえも覚えていない。
そうか、あの人と一緒にできなかったことがショックだったんじゃない。大して好きじゃないもののために、本当に好きなこと、本当にやりたかったことを犠牲にした自分が許せなかったんだ。
やっぱ、ダメだ。楽しいこともそれなりにあったはずだけど、メンタルが弱るとついついラブコメを見てしまうのは、心のどこかであの時期を取り戻したいと思っているのかもしれない。
やめよう。多分何回やっても、今のパートナーと家庭を築いている(卒業後に出逢っているが、パートナーは同じ高校だった)。
そして、恋愛の駆け引きも、性欲に振り回されずに本当に自分が求めるものも、目の前の人の源泉に向き合うことを大切にすることも学べた。
何度か許してあげれそうになって、またこうしてそのラインを何度も反復横跳びするのだろう。そんなうじうじして、甘酸っぱい、いや、酸っぱさしかないあの時代を、僕はやっぱり嫌いになれそうにない。
今回は、ナルさんんの#片想い文芸部のお題「選択肢」に参加させていただきました!
もうお題を見たら飛びついていました!そして、変にボカしたりせずに、初めてありのままの感情を書けた気がします!
ナルさん、素敵な企画をありがとうございました!!
いいなと思ったら応援しよう!
自主企画コンテスト「灯火杯」の賞金や美術館、書籍や有料購入など、note活動のために使わせていただきます!