雨、弾む
梅雨どきは、リトマス紙だ。
子どもたちは、濡れることを厭わない。そのくせ、帰宅するや否や「濡れたから」と着替える。
ただでさえ、室内干しは干せる量に限りがある。サーキュレーターや扇風機を総動員しても、乾くペースは晴れの日には遠く及ばない。
洗濯が自分の"持ち家事"になり、天気予報を気にする頻度が増えた。部屋干し用の柔軟剤、おしゃれ着用洗剤の残量をチェックすることも忘れない。
濡れた靴。拭かれないランドセル。やたらと先端ばかりが壊れる傘。
物を大切にしない行動にイライラが募る。
一つ一つのことが自分の目にどう映るか。メンタル状況を自覚するのに適した時期なのだ。
メンタルダウンで休職・復職してから数年経過した頃、少しずつ見えてくる景色が変わってきた。
びちょびちょのくつ下だと思っていたものは、泥を予洗いされたくつ下だった。子どもたちから、ダウンやフリースを洗うタイミングを聞かれていた。
イヤな想像や心配事がとめどなく膨らむ夜、僕が好んで聞いていたのは、雨音やせせらぎのBGM。
ベランダの外に突然敷かれた除草シートが、植物を愛する妻の気持ちも覆ってしまったような気がして、布団からカーテン越しに否定的な目を向けた。6月はこんな目になってばかりいる気がする。
ふと、音が聞こえた。それは、ずっと聞こえていたはずのものだった。
シートに弾かれる音。葉に弾む音は、大きさや形状によって異なるように聞こえる。ベランダの手すりに跳ね返る。アスファルトの水たまり。
聞こえる。視える。音が。
感情のコンディションが悪くなると、気づけなくなる。イヤな部分しか見えなくなって、心の器から溢れる。
でも、音も気遣いも感情も、ずっとそこにあったんだ。
6月の雨が、少しあたたかく感じた。
了(721文字)
凛花さんの『月刊tote』6月号、”6月×暮らしのエッセイ”企画に参加させていただきました!
プロフィール
・灯火(ともしび)
適応障害から復職したベンチャー会社員&パラレルワーカー。メンタルヘルスやアート分野を発信中。

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