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転んでもタダでは起きない! ー 休職をキャリアブレイクと捉えてみた

現在わたしは休職中である。

休職はどうしてもネガティブになりがちだ。私も最初はそうだった。
職場を離れ、日々のルーティンがなくなった瞬間、まるで自分が社会から切り離されてしまったような感覚に陥った。

もちろんネガティブではあるのだが、
「ネガティブなだけでは終わらせない。むしろこれまでの人生を見つめ直し、これからの起点とするチャンス」
という前向きな感情を私は持つことができている。

そう思えるようになったきっかけは、キャリアブレイクという考え方と、それを広める活動をしている『キャリアブレイク研究所』に出会ったからだ。

休職に至るまでの経緯

「一度きりの人生だから、やりたいことに挑戦したい。」
そんな想いで転職活動を決意し、今の職場にたどり着いた。​​しかし、現実は想像とは違っていた。

入社初日、部署の挨拶回りをしていると、私の配属先を告げた途端、相手の表情が一瞬こわばり、そして微妙に歪んだ。

「えっ……」という、言葉にしないけれど、明らかに何かを言いたげな反応を私は感じ取った。

その瞬間、「あっ……」と、私の中で小さな警鐘が鳴った。

その職場には長年君臨する『モンスター上司』がいることを、わたしは身を持って知った。


モンスター上司による日々の理不尽な職場環境の中で、同僚と協力して、何とか改善しようと試みた。しかし、モンスター上司とそれを守る組織には歯が立たず、無残にも敗れた。

次々と仲間は休職し、私もやがてその波に飲み込まれた。

小説であれば「やられたらやり返す、倍返しだ!」と言いたいところだったが、実際は返す力も残っていなかった。
だいたいの現実は小説より奇ではない。現実は冷酷だと思った。


休職中の感情の変化

これまで突っ走ってきた私は、休職という突然のブレーキがかかった直後、心がまるでからっぽの容器のようで、何も感じることができなかった。自分の存在が薄れていくような感覚を抱き、ただ時間だけが流れていった。

しかし、しばらくすると、そのからっぽの容器に、さまざまな感情が入り込んできた。

例えば、朝、子どもを保育園に送り届ける時。
通勤ラッシュの人々が足早に駅へ向かう姿を横目に見ながら、自分はどこへも行かず、何の役割も果たしていないという無力感に襲われる。だからといって「何をしよう?」と考えても、何も思い浮かばない。その瞬間、先ほどの無力感に虚無感が加わる。

午後、自宅のソファに座りながら、ぼんやりと天井を見上げる時。
今その瞬間も忙しく働いているだろう同僚や、かつての自分の姿を、気づいたら思い浮かべる。そして今の自分と比較し、焦り自己嫌悪が入り混じった感情が一気に押し寄せる。そう思いながらも、何も手につかず、ただ時間だけが過ぎていく。

夕方、保育園から帰ってきたわが子が、興奮気味に今日できるようになったことを話してくれる時。
サッカーでゴールを決めたこと、プールで飛び込めるようになったこと、お友達とケンカしたけど最後には仲直りできたこと。
本来なら「すごいね!」と心から喜び、抱きしめるはずなのに、日々前に進むわが子に対して罪悪感が芽生える。

そうして、私のからっぽの容器には、いつしか負の感情が堆積していった。


キャリアブレイク研究所との出会い

そんな時、私は『キャリアブレイク研究所』という存在を知った。

キャリアブレイク研究所は、一時的な離職や休職を「キャリアブレイク」として肯定的に捉え、人生やキャリアを見つめ直す時間とする文化を広めることを目的としている。

創業者の北野貴大氏は、自身のパートナーが1年間の「無職」を選択したことをきっかけに、無職期間を「感性を回復させ、人生を立て直す時間」として捉える「キャリアブレイク」を日本の文化として根付かせることの重要性を感じ、2022年にキャリアブレイク研究所を設立した。

同研究所では、キャリアブレイク経験者が執筆する情報誌「月刊無職」の発行や、キャリアブレイク中の人々が集まり学び合う場「むしょく大学」の運営など、多彩な活動を展開している。

これらを通して、休職者や離職者に対して、現在の状況を前向きに捉え、自分自身を再評価し、次のステップへの土台を築くための支援を提供している。

ネットニュースでキャリアブレイク研究所の記事を見た時、私は心が少し暖かくなるのを感じた。この時、休職してからはじめて、からっぽの容器の中で堆積し凝り固まった負の感情に、小さなほどきめが出来たのだと思う。

私はすぐにキャリアブレイク研究所のHPに飛び、キャリアブレイクの概念を学んだ。

そこでは、キャリアブレイクの始まりから終わりまでを次のように説明している。

キャリアブレイクの始まりは、ポジティブである人もいれば、ネガティブである人もいます。ただ、どんな始まりだったとしても今まで歩んできた中心的な役割を手放す中で解放感を得たり、虚無感を持ったり、大きな気付きを得るといったプロセスには似た部分があります。キャリアブレイク研究所では、そのプロセスを5段階で示しています。

開放期 - 仕事から解放されることで一時的な安心感を得る。
虚無期 - 無職という現実を受け入れ、焦りや罪悪感を感じる。
実は期 - 自分の内側から本当の気持ちが湧き出す。
回復期 - 自分が大切にしたいものが見えてくる。
準備期 - 次のステップへ向けた土台を築く。

キャリアブレイク研究所 (https://careerbreak-lab.com/about/)
キャリアブレイク研究所のnote記事「無職の5段階」


そして各プロセスにおける心の変化を次のように説明している。

・心の奥にあった本当の声を聞けるようになってくる「実は期」には感性の回復が必要で、そのために開放期と虚無期が重要な役割を果します。

・特に、虚無期に感じる「なにもやる気が起きない」や「罪悪感や焦りを感じる」、そして「無職というなんの肩書きもない自分を味わったり、手放したことを実感する」ことは、実は自分自身を深く見つめ直し、本当に大切なものを再認識するための重要な時間です。

自分なりに解釈すると、
休職や無職といった、これまでのキャリアから離れる期間 (=キャリアブレイク)を選択し、そこで自分にとって本当に大切なものを見つめ直して「自分にとっての最適解」を見つけるための時間と捉えること、だと理解した。

私がそうだったように、休職直後の「なにもやる気が起きない期間」「罪悪感や焦りを感じる期間」は、どうしても顔も心も俯きがちになってしまう。

しかし、「この期間は今後のじぶんの人生に必要な期間なんだ」、というキャリアブレイクの考え方は、そんな俯きがちな自分の顔を支えてくれ、心を前向きにさせてくれる。

「休職期間も、次のステップに進むために土台づくりと捉えて良い」というキャリアブレイク研究所にもらった力強いエールは、私の堆積した負の感情を少しずつ溶かしてくれた。


キャリアブレイクを経て、自分の心に耳を傾けてみる

「休職=キャリアブレイク」という捉え方に前向きになれた私は、自然と、これまでの働き方について考えていた。

これまでひたすら走り続けてきた自分が、突然足を止めた。その結果、自分自身と向き合う時間が増えたことで、心の声にじっくりと耳を傾けることができた。

転職という自分の選択・決断を後悔はしていない。新卒から一貫して同じ業界で毎日、全力疾走してきた。その誇りもある。
これまでは、やりがいのある仕事が好きだし、仕事には全力を注ぎたい、と思っていた。

しかし実は、「忙しく働く=達成感を求めて走り続ける」ことに、自分の価値を見出していた部分があるのではないか(少なくとも、ない、とは言い切れないのではないか)、と思い至った。


そして、決定的だったのは、休職直前のある出来事を思い出したときだ。

これまでは仕事が忙しかった時でも、抱きついてくる子どもが愛おしかった。
けれど、その日は違った。
子どもが無邪気に話しかけてくる声に応えるのが、ただただ億劫で、子どもの顔を見ても「かわいい」という心の奥から湧いてくるはずの愛情がどこにもなかった。
私はその瞬間にゾッとして、休職を決意していた。


今、改めて思うのは、そんな状態になるまで、自分の人生を仕事に捧げる必要はない、ということだ。私は、行き着くところまで行って、やっとそのことに気づいた。

これまでの働き方では、
私はからっぽの容器を、仕事で得られる「達成感」や「周囲から求められる役割」、「他人からの評価」だったりで満たそうとしていた。

しかし実は、その容器には穴が空いていて、仕事から得られるそうしたモノたちで満たそうとしても、決してイッパイにはならなかったのだ。
だから忙しく働くことで自身と自信を満たし、自分の価値を見出そうとしていたのだと思う。

こうした生き方を変えていくために、私は穴の空いた私の容器を直さないといけない。そのためには、「何のために働いているのか? 何のために生きるのか?」という、これまで忙しく働くことにかまけて蔑ろにしていた、私自身の問いに、真剣に向き合わねばならない。

つまり、私はもっと自分の人生を大切にしなければならないのだ
キャリアブレイク研究所はそのことを私に気づかせてくれた。


キャリアブレイクを長期的な自己投資とみなす

人生 (キャリア含め)は一直線ではなく、曲がりくねった道のように進んでいくものだ。だからこそ、その曲がり角で得られる気づきが、人生をさらに豊かにする鍵になるはずだ。

この休職を機に、私は、まずはじぶんの心が動くことに対してもっと軽やかに手を伸ばし、自身の容器に入れていきたい。

それは、すぐに役立つモノを選ぶのではなく、長期的な自己投資と捉えて心が動くモノを少しずつ育てていきたいと思う。その積み重ねが今後の「生きるって楽しい」と思える時間を増やすことに繋がるはずだ。

また、キャリアブレイク研究所が掲げるように、キャリアブレイクという考え方がもっと社会に浸透していってほしい。

休職・離職者というのは、その一瞬だけ見ると戦力ダウンかもしれない。しかし、戻ってきた人間はみな少しずつ将来のために自己投資をしている。そういった人たちが会社(社会)の中で協働するならば、きっと、ふつうに仕事をこなしているだけでは生み出せないような新しい化学反応が期待できるのではないだろうか。
キャリアブレイクにはそのくらい大きなインパクトがあると私は実感している。


私はモンスター上司に倍返しはできなかった。
しかしこのキャリアブレイクを機に「これからの人生の幸福度」を倍にすることはできる。それが今の私の目標だ。


おわり

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