迷った朝ほど、型が助けてくれる
『型は自分を助ける味方だ』
型というと、少し堅苦しく聞こえるかもしれません。
でも本当は、迷ったときに自分を助けてくれる、やさしい帰り道のようなものだと思っています。
朝のティーグラウンド、考えすぎる体
土曜日の朝のコースは、どこか特別な空気があります。
まだ霞が残る空の下、芝の緑が朝露に光っている。スパイクが地面を踏む音、仲間のキャディバッグが揺れる音。1番ティーに近づくほど、足元から静かな緊張が上がってきます。
「今日はOBだけは打ちたくない」
そう思った瞬間から、体がじわりと固くなる。右に曲げたくない。池に入れたくない。あれこれ考えるほど、肩が上がって、グリップが強くなっていく。
気づけば、練習場では一度もしなかったような振り方で打っている。
この感覚、ゴルフを始めて間もない方だけでなく、経験者にもある「あるある」だと思います。
ゴルフには、不思議なところがあります。
考えすぎると体は動かない
「気をつけよう」と思えば思うほど、体が言うことを聞かなくなる。
ゴルフには不思議なところがあって、意識を増やすほど動きが複雑になっていく。
「ダウンスイングを内側から」
「インパクトで止めない」
「体重移動を忘れずに」
全部正しいことでも、一度に意識すると、
体はどこへ動けばいいか分からなくなってしまう。
初心者の頃は特にそうです。
覚えることが多すぎて、気づけばティーアップしたボールの前で固まっている。
「もうどうしたらいいのか分からない」という日が、必ず来ます。
私も、崩れると迷子になります
私も崩れだすと、どうすれば立て直せるか分からなくなる日はあります。
あるラウンドで、3番ホールあたりからスイングがバラバラになってきた。「あれ、何が違うんだろう」と考えながら4番、5番と打つうちに、どんどん分からなくなっていく。
そういう時、私が必ず戻る場所があります。
それは、スイングのことを全部忘れて、適当に振る。
それだけで、不思議と戻ってくるのです。
適当には多くの人には当てはまらないかも知れません。
でもなぜ適当かと言うと長年、練習してきたおかげもあり、何も意識していない時の方が、安定している時の型に戻るのです。
日々、修正箇所を直そうと意識して取り組むのですが、意識過剰になったり意識してかみ合わなくなったりしてくるので、無に戻ると長くやっている型に戻るのです。
当然、始めたばかりの方には、その型が無い状態なので日々の練習は必要なのですが、最初は順番にグリップ、アドレス、テイクバックと無意識でも大きくずれないように練習していってほしいのです。
Eさんが「型に戻った」ホール
8ヶ月ほど通ってくださっているEさんのことを思い出します。
ある日のラウンドレッスンで、前半の9ホールがずっと噛み合いませんでした。
「なんか今日おかしいんです。何も変えてないのに」
そう言いながら、Eさんは少し肩を落としていました。
後半の10番ティーに立つ前に、私はこう聞きました。
「Eさん、今日うまくいかない原因で思いつくことはありますか?」
Eさんは少し考えてから言いました。
「練習場では何球も打てるけど、コースは一球だけなので緊張するんですかね」
「それもありますね。でも一番変わっているのは、リズムかもしれません」
そう伝えて、いつものスピード感で素振りを一度してから、そのままアドレスに入ってもらいました。
打った球は、少し右に曲がりました。
でも、フェアウェイの右サイドに落ちました。
Eさんはボールを見届けたあと、ほっとした顔で言いました。
「あ、いつもの球です」
その言葉を聞いた時、私も少し嬉しくなりました。
Eさんは、練習場では10球打てば7〜8球は同じような球が打てる方です。つまり、すでに自分の型はでき始めていました。
ただコースに出ると、「もっといい球を打ちたい」という気持ちが強くなって、テンポが少し速くなっていたんです。
『型は自分を助ける味方だ』
型は、きれいな形だけを指すものではありません。
自分が安心して戻れる動き。
何度も繰り返してきた手順。
大きく崩れないための土台。
最初はそれくらいに考えていいと思います。
グリップでもいい。アドレスでもいい。テークバックの始まり方でもいい。
「ここだけは毎回同じようにする」
そんな一点を持っておくだけで、ゴルフは少し心強くなります。
もちろん、型を作るには練習が必要です。
でもそれは、自分を厳しく縛るためではありません。迷った時に、自分を責めすぎないためです。
崩れた時に戻れる場所がある。
それだけで、コースの景色は少しやさしく見えてきます。す。
今日から一つだけ試してみてください
打つ前に、自分の型を一つだけ確認する。
グリップを整える。
足裏で地面を感じる。
いつもの速さで素振りをする。
全部を直そうとしなくて大丈夫です。
一つだけ戻れたら、その一打はもう十分に意味があります。
昼下がりの練習場、もう一球打ちたくなる感触
午後の練習場。
日差しがやわらかく打席を照らしている。最後の一球、余分なことを考えずにグリップだけ整えて打ったら、気持ちのいい音がした。
ボールがまっすぐ前へ飛んでいくのを目で追いながら、ふと思う。
「あ、戻ってきた」
型に帰れた感触は、スコアとは別に手の中に残ります。
その一球があれば、また来週もクラブを握れる気がする。
あなたには、崩れた時に帰れる「自分の型」がありますか?

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