基本は、苦しい日にこそ頼りになる
『難しい日ほど基本が頼りになる』
基本て言われても、身に付けるのが大変そうだと思われるかもしれません。
でも基本は、難しいことを増やすためではなく、迷った時に戻るためにあります。
完璧な形よりも、「いつもの感覚」に帰れることが、コースでは大きな助けになります。
今日のコースは難しいことで有名なゴルフ場
コースが難しいと、つい特別なことをしようとしてしまう。
でも、そんな日こそ派手さはいらない。
「いつもどおり」に戻ることが、いちばんの立て直しになることがあります。
状況が厳しいほど、シンプルに戻す勇気が大切。
基本は裏切らない。
今日は「当たり前のこと」を丁寧にやってみよう。
コースに出ると、何かが変わっていく
梅雨の合間、久しぶりの晴れ間を縫うようにコースへ出た。
フェアウェイの緑は朝露に光り、靴底にはじんわりと湿った感触が伝わってくる。
遠くでカラスが一声鳴いて、あとはカートの走る音だけ。
「今日は絶対うまくやりたい」
そう思っていた。
ところが、1番ホールのティーショットを打った瞬間から、何かが少しずつずれていった。
グリーンは奥に傾いていて、ラフは深い。
ピンも、なぜか今日は意地悪な場所に切ってある。
こういう日って、ありますよね。
難しいコースに来ると、人はなぜか「いつもと違う何か」をしたくなります。
特別なことをしようとするほど、崩れていった
バックスピンを効かせようとしたり。
コースの曲がりに合わせて、球を曲げようとしたり。
「あのバンカーを越えられるんじゃないか」と、誰かに言われて狙ってみたり。
結果は、だいたい苦しくなる。
左へ引っかけ、右へプッシュアウト。
焦れば焦るほど、体がばらばらになっていく。
グリップを握る手に、じわりと力が入る。
ラフの草が脚に触れるたびに、気持ちまで少しざらついていく。
私自身も、同じ失敗を何度もしてきた
若いころは、難しい状況ほど「何か特別なことをしなければ」と思っていました。
山越えを狙って無理なドライバーを打ったり、風が強いからと急に低い球を打とうとしたり。
今思えば、挑戦と無謀をごちゃ混ぜにしていたのかもしれません。
その違いに気づくまで、ずいぶん時間がかかりました。
あの生徒さんの言葉が、今も残っている
先日、一緒にラウンドしたKさんのことを思い出します。
Kさんは50代。ゴルフ歴は2年ほど。
その日は少し難しいコースでした。
7番ホール、池越えのパー3。
ピンは奥で、グリーンは下り傾斜。
Kさんは少し緊張した顔で言いました。
「先生、今日は特別にロフトを立てて打ってみます」
私は、「特別な技が必要な場面ではないので、いつも通りでもいいと思いますよ」と伝えました。
でもKさんは少し迷ったあと、
「一度チャレンジしてみます」と静かにアドレスに入りました。
打った球は低く飛び出しました。
悪いショットではありませんでした。
ただ、グリーンには少し届かなかった。
その一打だけなら、そこまで大きな失敗ではありません。
でも問題は、そのあとでした。
Kさんは次のホールから、少しずついつものリズムを失っていきました。
構えが長くなる。
グリップを何度も握り直す。
打つ前に、考えることが増えていく。
ラウンド後、Kさんはぽつりと言いました。
「急に打ち方を変えたら、いつもの感じがわからなくなりました」
その言葉が、今も残っています。
「いつもどおり」の中に、あなたの本当の力がある
『難しい日ほど基本が頼りになる』
この言葉の意味を、私はこう感じています。
もちろん、意図的に低い球を打ったり、曲げる球を練習しているなら、本番で試すことも大切です。
挑戦すること自体は、悪いことではありません。
ただ、まだ体に染みついていない打ち方を、難しい場面で急に使うと、今まで積み上げてきた感覚まで消えてしまうことがあります。
基本というのは、派手な技ではありません。
いつものアドレス。
いつものグリップの感触。
いつものテイクバックのリズム。
何度も練習してきた、自分に戻れる場所です。
難しいコースが求めているのは、奇跡の一打ではなく、大きく崩れない一打なのかもしれません。
シンプルに戻す勇気。
それは、「今の自分で十分戦える」と信じる勇気でもあります。
今日から一つだけ試してみてください
コースでうまくいかない瞬間が来たら、これだけ試してみてください。
打つ前に小さく、
「いつもの練習場と同じ感触で打とう」
と声に出してみる。
声に出すと、体は少し落ち着きます。
難しいピン位置も、深いラフも、いったん横に置く。
目の前にいつものマットがあって、いつものリズムで振る。
そう思うだけで、ふっと力が抜けることがあります。
今日のラウンドが終わったあと
ラウンドが終わるころ、夕方の光が芝の上を斜めに走っていました。
Kさんが言いました。
「コースで試すなら、もっと練習してからでしたね」
その表情は、悔しそうでもあり、少し晴れやかでもありました。
難しいコースでは、いつも通りに回っているつもりでも、スコアがいつもより悪くなることがあります。
でも、一番多く練習してきたことは、大きく崩れないための支えになります。
いろんなことを試そうとしすぎると、いつもの自分が消えて苦しくなる。
基本は裏切らない。
それはゴルフだけではなく、何かを積み上げようとするすべての人に言えることかもしれません。
あなたは最後に「いつもどおり」に戻れた瞬間、どんな気持ちになりましたか?

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