調子がいい夜ほど、見えない癖が顔を出す
『見えない癖ほど先に直す』
自分ではいつも通りのつもりでも、体は少しずつ違う動きをしていることがあります。
だからこそ、気づけた瞬間が大切なのかもしれません。
練習場のあの感覚
夜の練習場には、不思議な魔力があります。
乾いたインパクト音。
ネットに当たるボールの鈍い音。
機械がボールを送り出す、かすかな振動。
蛍光灯の明かりの下で、打席に立つ人たちは、それぞれ自分だけの世界に入っている。
そんな夜、こんな経験はありませんか。
最初の10球、20球と打っていくうちに、少しずつ当たりが良くなってくる。
「あ、今日は調子いいかも」
そう思った瞬間から、なぜか少しずつ何かが変わりはじめる。
次の一球で、もっといい当たりを出したくなる。
もっと飛ばしたくなる。
もっと気持ちよく振りたくなる。
その気持ちは、悪いものではありません。
「もっと」が来た瞬間
私自身も、何度もその「もっと」に乗せられてきました。
いい当たりが出ると、もう一球いい球を打ちたくなる。
さっきより飛ばしたくなる。
隣の人の音まで少し気になってくる。
すると、最初はゆったりしていたテイクバックが、少し速くなる。
クラブを上げる前の呼吸が浅くなる。
打つ前から、体が少し前のめりになる。
そして気づけば、さっきまでのやわらかいリズムがどこかへ消えている。
「さっきの当たり、どこ行ったんやろ」
そんな夜を、私は何度も経験してきました。
生徒さんのHさんの話
先日のレッスンでも、Hさんという40代の方が同じようなことを話してくれました。
「先生、最初は調子よかったんです。でも途中からどんどん崩れていって、何が起きたのかわからないんです」
一緒にスイング動画を見てみると、最初の数球はとても丁寧でした。
構えも落ち着いている。
テイクバックもゆったりしている。
打つ前の間もちゃんとある。
でも、当たりが良くなってきた20球目あたりから、少しずつリズムが変わっていました。
「ここ、見えますか。いい当たりが出たあとから、少し振り急いでいます」
そう伝えると、Hさんは画面を見ながら驚いたように言いました。
「ほんとだ。全然気づいてませんでした」
良くなった瞬間が、崩れの始まりになっていたんです。
見えない癖が一番やっかい
ゴルフには、自分では見えにくい癖があります。
本人はいつも通りのつもりでも、動画で見るとまったく違う動きをしていることがある。
テイクバックが速くなっている。
打つ前の間がなくなっている。
ボールに早く当てにいっている。
でも打っている本人は、それに気づいていない。
ここが、ゴルフの難しいところであり、面白いところでもあります。
速く振っているつもりが、いつの間にか「早く当てにいく動き」になっている。
練習場で見ていると、ここで崩れていく方はとても多いです。
今日から一つだけ試してほしいこと
だからこそ、今日から一つだけ試してほしいことがあります。
スマホで、後ろから10球だけ撮ってみてください。
全部を直そうとしなくて大丈夫です。
グリップにアドレスの基本部分は、しっかりおさえておいて、次に見てほしいのは、リズムです。
最初の一球と、当たりが良くなったあとの一球。
その2つを比べてみる。
クラブを上げる速さは変わっていないか。
打つ前の呼吸は浅くなっていないか。
ボールに急いで向かっていないか。
それだけで、自分では見えなかった癖が見えてくることがあります。
気づけた瞬間、もう半分変わり始めています。
急いで数をこなすより、一球ずつ丁寧に向き合うほうが、体はちゃんと覚えてくれます。
派手な変化でなくていい。
今日の丁寧な一球が、明日のやさしいスイングにつながっていきます。
夜の練習場を出るとき
練習を終えて、荷物をまとめる。
最初の20球はよかったこと。
「もっと」が来てから少し崩れたこと。
途中で一度、深呼吸してリズムを戻せたこと。
そんな小さな気づきが、次の練習への糸口になります。
振り急がなくていい。
積み重ねていけばいい。
夜の練習場を出ると、少し冷えた空気が頬に触れる。
駐車場で車のドアを開けながら、
「また来よう」
と思えたなら、今日は十分です。
あなたは練習中に「もっと」が来たとき、どうやってリズムを取り戻していますか?

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