まだ「父さん」と呼ばれたことがない。それでも、私は父親です。
私には、子どもが4人います。
上の3人は、もう成人しています。24歳の長男、23歳の長女、20歳の次女。そして、6歳の娘。
——と言うと、たいてい「えらい年が離れてますね」と言われます。
そうなんです。理由は、シンプルです。
上の3人は、血がつながっていません。
私は、彼らの母親と結婚した「あとから来た父親」だからです。
妻とは、少年野球を通じて出会いました。
当時、私は大学生で、地元の少年野球チームのコーチをしていました。長男と次女は、その教え子です。
つまり私は、最初は「コーチ」だった。
それが、巡り巡って、彼らの「父親」になることになりました。
結婚したのは2018年。そのとき、長男は高校1年、長女は中学2年、次女はまだ小学生でした。
思春期、ど真ん中。
そんな時期に、ある日突然、「この人が新しいお父さんだよ」と言われる。
——受け入れられるわけが、ないですよね。
私が逆の立場でも、無理やと思います。
長男とは、養子縁組もしていません。名義は、今も旧姓のままです。
私は彼から、「父さん」とも「親父」とも、呼ばれたことが一度もありません。
呼ばれるのは、「あの」とか「すいません」とか。
長女と次女は、普段、私を苗字で呼びます。
それも「さん」付けではなく、呼び捨てで。
「〇〇(苗字)、これ取って」みたいに。
他人行儀でもないけど、父親でもない。
なんとも言えん、絶妙な距離感です。
——つまり私は、この3人の誰からも、まだ一度も「父さん」とも「パパ」とも呼ばれたことがないんです。
正直に言えば、それが胸にこたえる夜も、あります。
でも、責める気は一切ありません。
だって、こっちが勝手に、あとから父親になろうとしてるだけやから。
彼らには彼らの時間があって、その途中に私が割り込んだ。その距離は、当然のものなんです。
ただ——ひとつだけ、私が大切にしている事実があります。
上の3人は、6歳の娘の前では、私を「パパ」と呼んでくれる。
普段は私を呼び捨てにする子も、妹といるときは「パパがさ」「パパに聞いてみ」と言ってくれる。
これが、どれだけ嬉しいことか。
自分は「あの」や呼び捨てでしか呼べないのに、妹のために、私を「パパ」として立ててくれている。
不器用やけど、確かにそこにある優しさを、私は勝手に受け取っています。
たぶん、彼らは彼らなりに、この変な家族をちゃんと大事にしてくれてるんです。
そして、いつも間に入ってくれているのが、妻です。
私と子どもたちの間に、さりげなく立って、橋渡しをしてくれる。
その妻に甘えて、私はずっと、直接ぶつかることを避けてきたのかもしれません。
最近、ふと思うんです。
——距離を作っているのは、本当に子どもたちの方なんやろうか。
実は、壁を作っているのは、私の方なんじゃないか。
長男とは、社交辞令かもしれませんが「いつか飲みに行こう」と言い合えるようになりました。
次の帰省のときは、絶対に誘おうと思っています。
でも、長女と次女は——まだ、誘う勇気が出ません。
成人したんやから、本当は2人とも、差しで飲みに行きたい。
なのに、なぜか女の子相手だと、一歩を踏み出せずにいる。
これも結局、私が勝手に作っている壁なのかもしれません。
私は、3人とも名前で呼んでいます。
でも、彼らからは、まだ「父さん」とも「パパ」とも呼ばれていません。
それでも。
いつか、「父さん」と呼ばれてみたい。
「パパ」でもいい。
一度でいい。あの子たちの口から、その一言を聞いてみたい。
そのために、まずは私自身が、妻に頼りきるのをやめて、まっすぐ彼らと向き合わなあかんと思っています。
本音で、ぶつかって。
いつか、名前で呼び合って、笑いながら酒を飲める日まで。
なんでこんなことを書いたのか。
正直に言います。
世の中には、こういうイレギュラーな家族の形があって、その中で不器用にもがいている父親が、ここにいるんだぞ、と。
それを、ただ知ってほしかったんです。
たぶん、同じような立場の人がいる。
血のつながらない子の親になって、どう距離を詰めればいいかわからず、一人で悩んでいる人が。
そういう人に、言いたい。
うまく呼ばれなくても、空回りしても、もがいていい。
壁を作っているのは、案外、自分の方かもしれへんから。
私は、まだ「父さん」と呼ばれたことのない、4児の父です。
それでも、胸を張って言います。
私は、あの子たちの父親です。
そしていつか「父さん」と、あるいは「パパ」と呼ばれるその日まで——あきらめずに、もがき続けます。
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