赤マント 第5話
翼「……」
翼は携帯を見ながら深刻な顔をしていた。
翼が見ていたのは、相川美沙希が殺害されたというネットのニュースだった。
翼「相川美沙希……」
翼は美沙希とはあまり喋ったことはない。
しかし、学校では有名な人物だった。
彼女は利樹と同じいじめっこグループの一人で、先生から良く目をつけられていた。
翼「自宅でメッタ刺し……」
翼は携帯を握る手に力が入った。
翼「(何だ……この妙な胸騒ぎは)」
ガララッ。
翼が考え事をしていると保健室のドアが開いた。
音「……」
入ってきたのは玲穏だった。
翼は携帯を仕舞った。
翼「音無か。教室出てきたのか」
玲穏は今日は珍しく教室に行ったようだった。
音「……煩すぎて耐えられなかった」
翼「ハハハ……」
玲穏は自然な足取りでベッドに向かった。
音「……ねぇ先生」
翼「ん?」
音「赤マントって知ってる?」
ピクッ。
翼「……知ってるけど、それがどうかした?」
音「教室じゃその話で持ちきりだったよ。昨日の事件もその赤マントの仕業なんじゃないかって」
翼「……迷信だよ、そんなの」
翼は玲穏の顔を見ずにそう言った。
翼「……私は信じてるよ」
翼は玲穏の顔を見た。
玲穏は翼の目を見ることなくベッドに横になった。
翼「(そういうの信じないタイプかと思ってたけど……)」
翼は少し驚いていた。
そして、信じてると言った玲穏の表情が少し悲しそうに見えたことが気になっていた。
玲穏は横向きになると目を閉じた。
翼はそんな玲穏の姿を静かに見つめていた。
影
女1「姫ちゃんまたね~!!」
女3「バイバ~イ」
姫「気を付けて帰るんだよ~」
放課後、姫愛は廊下を歩きながら帰る生徒に声をかけていた。
姫愛が向かっていたのは図書室。
姫「ええっと。……あった」
姫愛は次の授業のために本を借りに来ていた。
放課後は基本図書室は開いていない。
しかし、教師である姫愛は鍵を借りれば入ることができる。
まぁ、基本は開いている時間に入らないといけないのだが……。
姫愛は席に座り本の中身を開いた。
誰もいないため、ページをめくる音やペンを走らせる音が部屋に響いている。
姫愛は時々顎に手を置き考える素振りをしながら、スラスラとノートにペンを走らせていた。
バサッ。
姫「……ん?」
後ろから音が聞こえた。
姫愛は後ろを振り向く。
だが、部屋には誰もいない。
姫「……気のせいかな?」
姫愛は本に目を戻した。
バサッ。
姫愛の後ろ姿を見つめる姿があった。
その人物は仮面をつけ、赤いマントを羽織っていた。
姫愛はその存在に気付くことはなかった。
過去と不安
男1「なぁ、今度はカラオケ行かねぇ?」
男2「良いねぇ!!」
女1「合コンの2次会と言ったらカラオケでしょ!!」
女2「さんせ~い!!」
須「……わりぃ。俺パス」
女3「えぇ~!!」
男1「ノリ悪いぞ大樹!!」
須「ゴメン。また今度な」
彼、須藤大樹(すどう だいき)はそう言って帰っていった。
大樹は自作の服を売り生活をしている。
SNS等ではそれなりに人気があり、テレビに出演したこともある。
イケメンであることもあり、こうやって合コンに誘われることも少なくない。
しかし、今大樹はそんな気分ではなかった。
須「……」
SNSを見ると、赤マントの話題がちらほらと出ていた。
須「(利樹に続いて美沙希まで死ぬなんて……)」
大樹は赤マントの被害に遭った人たちと知り合いだった。
大樹も利樹や美沙希たちと同じ、いじめっこグループの1人だった。
中学時代はつるんで悪さの限りを尽くしていた。
そんなグループの仲間が立て続けに亡くなった。
須「(もしかしたら俺のところにも……)」
大樹は不安に駆られた。
須藤は家に帰ると服を脱ぎ風呂に入った。
シャワーを浴びながら、大樹は昔のことを思い出していた。
大樹は学校の中では人気だった。
クールで顔が良く、クラスの中では常に中立的な立場にあった。
いじめグループに入り悪さはしていたが、利樹たちとは違いあまりそういう悪さでは目立たなかった。
いや、大樹の中では利樹たちのようにそういうことに興味を持てなかった。
大樹は学校の中で常に退屈していた。
いじめも、学校生活も。
どれも興味をそそられなかった。
いじめグループに入ったのも、何か楽しいことが見つけられるのではないかと思ったからだ。
だが、そんなものは見つからなかった。
高校を卒業すると、グループの仲間たちとは連絡すら取らなくなった。
今誰がどうしているかも知らない。
いや、興味がなかった。
ニュースを見るまであの時のことを忘れていた。
須「……」
キュッ。
大樹は風呂から上がると鏡の前で立ち止まった。
鏡に映る自分の顔は何故か醜く見えた。
須「……」
パリンッ!!
大樹は鏡を殴った。
鏡は割れ、大樹の拳は血に濡れていた。
大樹は暫くその場から動かなかった。
