おもちゃ箱 第30話

過去  ~再会~

雅晴は絶句した。

 それと同時に、どこか予想していた部分もあった。

 犯罪を犯した自分を彼女が待っていてくれるはずがない。

 工場長にすべて話したのは、自分のことが許せなかったからだ。

そう思っていたところがあった。

 だから、亜依子が他の男と結婚したとしても、彼女を攻める気にはならなかった。

篠「(彼女が幸せになることを祈ろう)」

そう思った。

 だが、雅晴はそう簡単に亜依子への愛を割りきることが出来なかった。

ふとしたとき、彼女のことを思いだし、胸が締め付けられるような気持ちになった。

 そんな気持ちを抱えて半年、雅晴は我慢できなくなって、再び亜依子の様子を見るようになった。

雅晴は亜依子を見て、ある疑問を持った。

篠「(何であんなに悲しそうな顔をしてるんだ)」

 亜依子は時々、悲しそうな顔をするときがあった。

雅晴にはその理由が分からなかった。

 雅晴はその理由を知るために、亜依子に会う決心をした。

 旦那といるときはマズイと思い、亜依子が1人になる瞬間を待った。


翌日、雅晴は亜依子の後をつけた。

 亜依子は現在、大学に通いながら法律の勉強をしていた。

篠「(教師の次に、弁護士になりたいって言ってたもんなぁ)」

雅晴は亜依子が大学から出てくるのを待った。

篠「……来た」

数時間後、亜依子が出てきた。

雅晴は亜依子の後をつけた。

大学の周辺では周りに見られる可能性がある。

 雅晴は人通りの少ないところまで待つことにした。


しばらく歩くと、人通りが少なくなってきた。

篠「(……よし、今なら)」

 雅晴は声をかけようと、亜依子の元へと少し足を早めた。

篠「亜依子」

雅晴の心臓はドクドクと音を早めた。

亜依子は振り返った。

 久しぶりに近くで亜依子の顔を見た雅晴は、さらに緊張した。

 何を言われるのだろうかと、気が気ではなかった。

嶋「……雅晴、さん?」


こうして、数年ぶりに2人は再会した。


過去~再びの恋~

亜依子はとても驚いた表情をしていた。

それはそうだ。

逮捕された元カレが目の前に現れたのだから。

篠「(きっと嫌われてるんだろうなぁ。それはそうか。あんなことしたんだから)」

 雅晴は、亜依子に突き放されるのを覚悟していた。


だが、亜依子の反応は予想外のものだった。

嶋「雅晴さん!!」

亜依子は雅晴のもとへ走り、勢いよく抱きついた。

突然の行動に雅晴は困惑した。

篠「あ、え……」

嶋「会いたかった。ずっと、ずっと……」

亜依子はそう言って泣いていた。

篠「……」

雅晴はゆっくりと亜依子を抱きしめた。

その夜、亜依子と雅晴はたくさん話をした。


 亜依子は、家を出た後パートをしながら働いていた。

 そこで偶然にも今の旦那と出会い、彼の方から結婚を申し込んだそうだ。

嶋「本当は結婚もお付き合いもするつもりはなかったの。けど、1日でも早く雅晴さんとのことを忘れたかった。じゃないと辛くて耐えられなかったから」

篠「そうだったのか。……辛い思いをさせてごめんな」

嶋「ううん。気にしないで。貴方はこうして会いに来てくれた。私はそれだけで嬉しい」

亜依子は雅晴に寄り添った。

篠「でも、大丈夫かい? こんな時間までいて。旦那さんに怒られるんじゃ……」

嶋「大丈夫。あの人、私にはあまり興味がないみたいだから」

篠「え?」

嶋「最初はちゃんと愛してくれたわ。今だって夢のために大学に通わせてくれてる。けどそれだけ。ご飯を作っても、化粧しても、髪型を変えても、部屋の模様を変えても、「うん」とか「そう」とか、そんなことばかり。彼は結局、家事や掃除をしてくれる家政婦がほしかっただけなのよ」

篠「……」

雅晴は何も言うことが出来なかった。


嶋「……ねぇ」

亜依子は雅晴の目を真っ直ぐ見た。

嶋「私たち、もう一度やり直さない?」

篠「え?」

嶋「私、今の旦那とは離婚しようと思う。前から考えてたの。だから、私たちもう一度やり直しましょう?」

篠「……でも、俺は犯罪者だ。こんな俺と一緒にいたら、君をまた傷つけることになってしまう」

嶋「あれは私のためにやったことでしょう? 警察でも裁判でも嘘ついたのは私のため。違う?」

篠「……」

嶋「私はそれが嬉しかった。そして、また私に会いに来てくれた。それだけで私には十分なの」

亜依子は雅晴に抱きついた。

嶋「私には貴方が全てなの」

篠「……亜依子!!」

雅晴は強く抱きしめた。

 亜依子はそれに答えるように抱き締める力を強めた。


 その日、2人は近くのホテルでベッドを共にした。

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