赤マント 第37話
美「ハァ……ハァ……」
朝早く、浩一は例の喫茶店に向かって走っていた。
チリン。
店に着いた浩一は急いでドアを開けた。
マ「いらっしゃいませ」
浩一は軽く挨拶すると目的の人物を探した。
その人物は腕を組み深刻な顔をしていた。
美「卯野崎」
卯「美濃部。悪いな朝早くに」
美「それは良い。それより、笠井が亡くなったっていうのは本当か?」
卯「あぁ。部下から連絡が来た。損傷が激しかったが、体格や近くにあいつの保険証が入った財布が落ちてた。家には居なかったし、多分間違いないと思う。後はDNAとか、あいつの歯形とかが分かれば直ぐに身元が割れるはずだ」
美「損傷が激しいって、そんなひどいのか?」
卯「……聞いた話じゃ、丸焦げだったらしい」
美「……」
卯「昨日、笠井は見張っていた警察にバレないように家を出たらしい。しかも、母親にすら何も告げずに」
美「あいつ、何だってそんなことを……」
卯「さぁな。しかし、その結果あいつは死ぬことになった。誰にも知られることなく」
美「……実は、笠井のことで気になることがあるんだ」
卯「気になること?」
美「調査の過程で知ったんだけど、あの付近で最近、放火事件が相次いでるらしいんだ」
卯「放火?」
美「あぁ。燃やされてるのはゴミ捨て場や家の庭木とかで怪我人とかは出てないんだけど」
卯「その放火がどうかしたのか?」
美「目撃者の話では、笠井に似た体格の人物が度々現場付近で目撃されてるらしいんだ」
卯「……笠井ならやりかねないか。あいつのことをもっと調べる必要があるな」
美「……残るは小久貫一真か。あんまりのんびりはしてられないな」
卯「あぁ。早く『赤マント』を止めないと」
美「七咲に連絡してくる」
浩一は席を立った。
卯「絶対に止める。姫愛は絶対に死なせない」
俊介は心に強く誓った。
翼「……うん。分かった。うん。じゃあ」
翼は電話を切った。
電話の相手は浩一だった。
繁が殺されたこと、優太が亡くなった湖に行く予定を早めた方が良いということだった。
翼「……」
翼は机に置かれた紙を手に取った。
『臨時休校のお知らせ』
紙にはそう書かれていた。
須藤大樹が襲われた動画が流れたこと、そして週刊誌にいじめッ子グループの過去が掲載され、その彼らが殺されたことで学校はパニック状態になっていた。
『赤マントはいじめっ子を殺す』『お金持ちは赤マントに殺される』『イケメンは赤マントに呪われる』など、『赤マント』のデマが学校中に出回った。
それによって「学校に行きたくない」と登校を拒否する子が複数出てきた。
それだけでなく、その噂を信じ子供を学校に行かせない親も少なからず出てきたのだ。
馬鹿げた話だが、実際『赤マント』を模倣した通り魔事件が起きたり、『赤マント魔除け』として、赤い物を身に付ける生徒や赤いスプレーで落書きをする生徒も出てきた。
一部の教師も同じように赤い物を身に付けるようになった。
学校は生徒の安全を考え、3日間の休校を決めた。
というのは建前で、実際は一部の過激な生徒・親に対する対策と、噂話が忘れられるまでの時間稼ぎだろう。
どちらにしろ翼には好都合だった。
『赤マント』のことが頭から離れず、仕事に集中できないことが続いていた。
何かと理由を付けて、学校を長期で休もうかと考えていたところだった。
翼「あんまり休むのは気が引けるからな。これで気兼ねなく京都に行ける」
翼は内心ホッとしていた。
ガラッ。
姫「翼君」
翼「姫愛」
姫愛がやって来た。
その表情は心無しか、元気がないように見えた。
翼「大丈夫? 何か疲れてない?」
姫「うん。ちょっと騒ぎがあったけど、直ぐに収まったから」
翼「臨時休校のこと?」
姫「生徒の親の1人が教室に乗り込んできちゃって。『私の子供は悪いことなんてしてない!! なのに何故学校を休ませないといけないの!?』って」
翼「臨時休校ってPTAでも話し合いで決まったことじゃなかった?」
姫「まぁ、そうなんだけど。その親共働きみたいで。子供が休んだらその分お金がかかっちゃうんじゃないかって心配なんだと思う」
翼「まぁ、休校ってなったらじっとはしてないよな子供たちは」
姫「うん」
翼「姫愛は俊介の手伝いをするんだろ?」
姫「うん。何が出来るかは分からないけど」
翼「無理はダメだよ。2人ともお互いの為なら平気で無理するから」
姫「うん、気を付ける。翼君も無理しちゃダメだよ?」
翼「俺は大丈夫。だってやっと2人と本当の友達になれたから。……絶対に失うようなことはしない」
姫「……そっか」
姫愛は翼に微笑んだ。
