おもちゃ箱 第20話
決意
奏の働いているカフェに来た秀明は、オルゴールをすぐ鑑識に回し、奏や店長に事情聴取をした後、署に戻って桂子の事件について捜査の洗い出しを行った。
聴取を受けているときの奏は、心ここに非ずという感じだった。
秀明が深堂家に行ってみると、かなえが秀明の元にやって来た。
か「秀明。どうしたの?」
日「かなえ、奏君の様子は?」
か「いや、なんかスゴい元気なかったけど。……奏がどうかしたの?」
日「実は……」
秀明はかなえに今日会ったことを話した。
その後、深堂家で雪永親子を含め、奏、かなえは秀明から事件の概要を聞くことになった。
日「事件の被害者は神田桂子さんと、娘の由梨ちゃん。桂子は母親も含め3人で生活してた。母親は近所で俳句の会に参加していて不在だった」
奏「……」
日「宅配業者の話によると、昼前に自宅の方に宅配物を届けたらしい。男から荷物を預ったらしいけど、その男も今まで同様金を受け取って届けただけだった。もちろん、帽子を被っていて顔は分からない」
か「……」
日「……これを見てくれ」
秀明はそう言って携帯を操作し、画面を見せた。
か「……何これ」
そこには桂子の裸の写真が写っていた。
日「SNSに投稿されてた。削除要請は出したけど、スゴい勢いで拡散されてる」
かなえは奏を見た。
奏は写真を見ずに、何かを考えているようだった。
か「犯人はなんでこんなことを……。彼女によっぽど恨みがあったのかしら」
日「……犯人じゃない」
か「えっ?」
日「SNSに投稿したのは、犯人じゃないんだ。……写真の発信元は、彼女の義理の娘の由梨の携帯だった」
か「ど、どういうこと!?」
日「由梨のSNSには、桂子への不満が書かれてた。『Muddy guy』にも由梨の書き込みがあった。多分だけど、箱が送られたとき由梨の中に堪っていた桂子への不満が爆発したんだと思う。だからSNSに書き込んだ」
か「そんな……」
日「ただ、犯人には予想通りの展開だったみたいだ」
奏「……どういうことですか?」
日「……調べてみたところ、爆発物の残骸から散弾銃の類いが発見されなかったんだ。それに、爆弾は荷物が届いてから10分も経たない内に爆発してる。明らかに今までのとは違う。これって、どっちも殺すつもりだったってことだろ?」
奏「犯人は桂子さんが娘さんと仲が良くないことを知ってた?」
日「……そういうことになるね」
奏「……」
奏は拳を握りしめた。
かなえはそんな奏を静かに見つめていた。
秀明が帰った後、かなえは彩月と静かにコーヒーを飲んでいた。
か「……彩月さん」
彩「あ、はい」
か「さっき、秀明の話聞いてるとき、美琴ちゃんのこと考えてましたよね」
彩「えっ!?」
彩月はかなえにそう問われて驚いた表情をした。
彩「……どうして」
か「これでも精神科医ですから。人の考えを推察するのも私の仕事です」
彩「……」
彩月は下を向いた。
彩「……美琴は、生まれつき声が出せない子に生まれました。私はそんな美琴のために今まで色々とやってきたつもりです。でも……たまに考えるんです。美琴は私のことを恨んでるんじゃないかって」
か「……」
彩「声の出せない子に生んだこと、お節介を焼いてること、父親と離婚したこと……。私のやることひとつひとつがあの子の重荷になってるんじゃないかって」
美琴の父親は美琴が小さい頃に家を出ていった。
美琴の育て方について、彩月と幾度も衝突することがあった。
いつしか、父親は美琴の面倒を見なくなり、彩月はそんな父親に嫌気が差し離婚することにした。
小さかった美琴にとって、それはショックな出来事だったのではないか。
彩月はずっと後悔していた。
か「美琴ちゃん、カウンセリングしてるとき、彩月さんの話を良くするんです」
彩「私の話を?」
か「はい。彩月さんとほぼ同じこと言ってました。『お母さんは私のこと憎んでるんじゃないか』って。『私のせいでお父さんと離婚して自分の時間も持てなくて。いつか捨てられるんじゃないかってたまに怖くなることがある』って」
彩「あの子、そんなこと……」
か「さすが親子ですね」
かなえはそう言って微笑んだ。
彩月はそれを見て目に涙を浮かべた。
