おもちゃ箱 第35話

齋川悠紀子

<? side>

客「いやぁ、今日も良かったよ。悠紀子ちゃん」

?「ありがとうございます」

私はお客から金をもらい、ホテルを出た。

外には既に迎えの車が来ていた。

私は迎えの車に乗り、店に戻った。


店「お疲れ様。明日もよろしくね」

?「お疲れ様でした~」

店の外に出ると、心地よい風が吹いてきた。

?「……フゥ~」

私はタバコに火を付け、一服した。

 煙が喉を通っていくのが、仕事の疲れを和らげてくれた。

私は帰り道をゆっくりと歩いた。


私、齋川悠紀子(さいかわ ゆきこ)はデリヘル嬢として働いている。

男は単純だ。

腰を振れば簡単にお金を出してくれる。

……たまにヤバイやつがいるけど。

だからお金にはあまり不自由はしていない。

あまり贅沢はしないし。

 けど、「なぜ私はこんな仕事をしているのだろう」と、不意に虚しくなることがある。

 その度に、自分が悪いのだと言い聞かせ心を奮い立たせた。

そう、自分が悪いのだ。

自分が……。


 私は自宅のマンションに帰ると、来ていた服を脱ぎ捨てベッドに飛び込んだ。

齋「……ダルい」

私の生活サイクルは大体決まっている。

 夕方に起きて、仕事に行って男の相手をして、深夜に帰って、夕方に起きて…。

その繰り返しだ。

齋「……お風呂入ろ」

シャワーで体を洗い流す。

髪を乾かして、軽く料理を作って食べる。

これも同じ。

もう4、5年は同じ生活。

最初の1年は辛かったなぁ。

齋「……いつまでこんな生活が続くのかな」

私は静かに布団に入った。

齋「(明日は何かが変わりますように)」

そう祈りながら。


ピピピピ、ピピピピ……。

私は目覚ましの音で目を覚ました。

時間は16時を回ろうとしていた。

 私はゆっくりと起き上がり、郵便ポストを開けた。

中には手紙が入っていた。

差出人は母からだった。

 手紙には、借金があるからお金を送ってほしい。

そう書かれていた。

私は手紙を破り捨てた。

顔を洗い、仕事場に向かった。


齋「お疲れ様でした~」

今日は昨日より肌寒さを感じた。

私は少し寄り道をすることにした。

近くにある公園。

心が疲れたとき、ここに来ると心が落ち着く。

私はブランコに座り、タバコに火を付けた。

 携帯を開くと、待受画面にニュースが写っていた。

『おもちゃ箱事件、未だに手がかり掴めず。被害者遺族涙の会見』

齋「被害者遺族……」

 私の頭の中には、1人の男の子の顔が浮かんでいた。

深堂奏。

中学生の頃の同級生で、私が虐めていた男。

 そして、心に消えることのない大きな傷を付けてしまった人。

私は中学の頃を思い返していた。

いいなと思ったら応援しよう!