おもちゃ箱 第8話
家族
翌日、奏とかなえ、そして美琴は朝食を食べていた。
か「どう、美味しい?」
かなえの問いに美琴はコクリと頷いた。
か「でしょ!? 奏の入れてくれたコーヒーは美味しいんだぁ」
奏「……何故姉ちゃんが嬉しそうなんだよ」
美琴を見ると、元気はないが昨日とは違いかなえの言葉に頷くようになった。
奏「コーヒーが好きかどうか分からなかったから、薄めにして苦味を抑えてみたんだけど大丈夫?」
美琴は小さく頷いた。
奏は美琴と少し席を離している。
やはりお互いまだ苦手意識があった。
今日はこの後、美琴の母である雪永彩月(ゆきなが さつき)が深堂家に来ることになっている。
昨日かなえが電話した際、彩月はかなり慌てていた。
娘が被害にあったとなれば当然の反応なのだが、「今すぐそちらに向かう」と言われたときは驚いた。
電話越しの彩月を何とか落ち着かせ、今日会うことを了承してもらったのだ。
奏「……何故、何故こんな展開になってるんだ?」
奏たちは今、リビングでババ抜きをしていた。
というのも、彩月が来るまでの間なにもすることがない。
そこでかなえが突然「ババ抜きをしよう!!」と言い出したのだ。
困惑している2人を他所に、かなえはトランプを持ち出し有無を言わさず2人にカードを配った。
がしかし、思った以上にゲームが進まなかった。
ゲームの順番上、美琴が奏のカードを引かなければならないのだが、美琴は怖がってしまいカードを中々引くことができないでいた。
奏と美琴の順番を逆にしてみたら、今度は奏がカードを引くことができなかった。
だが、しばらくすると双方ともぎこちなさはあるが、カードを引くことができるようになった。
か「(2人が仲良くなるようにと思ってやったんだけど、ちょっとは上手くいったかな?)」
時刻はもうすぐ12時を回ろうとしていた。
か「おかしいなぁ。午前中には来るって言ってたんだけどな」
彩月は未だに姿を見せなかった。
すると、美琴がメモに何か書き始めた。
美『もしかしたら道に迷ってるのかもしれません。お母さん方向音痴だから』
奏「方向音痴か。姉ちゃんと一緒だ」
か「余計なこと言わなくていいの。でも困ったなぁ。電話して迎えに行った方がいいかなぁ」
ピンポーン。
かなえが電話しようかどうか迷っていたとき、家のチャイムが鳴った。
か「おっ、来たかな?」
ピンポンピンポーン。
か「は~い。今行きます」
かなえは小走りで玄関に向かいドアを開けた。
か「はい、どちら様……」
?「すいません遅れてしまって!! 雪永美琴の母です!!」
か「あ、えっ」
かなえは彩月の勢いに押されていた。
彩「あの、娘は、娘はどこですか?」
か「あ、あの!! ちょっと落ち着いてください。娘さんはちゃんといますから」
そう言うと、彩月は少しだけ落ち着きを取り戻した。
か「ここじゃなんですから。さぁ、お上がりください」
彩「失礼いたします……」
か「こちらです」
彩月はかなえに言われるまま付いていった。
ガチャ。
ドアを開けると、そこには美琴と驚いた表情をした奏がいた。
彩「美琴!!」
すごい勢いでこちらに駆け寄ってきた。
奏はそれを必死に避けた。
奏「ハァ……ハァ……」
彩「大丈夫!? どこか怪我してない!?」
美琴はそんな母を落ち着かせるように、肩を軽く叩いた。
美『お母さん落ち着いて。私は大丈夫だから』
彩「本当に?」
美琴は首を縦に振った。
彩「……そう」
彩月は安心した表情をしていた。
か「あの……」
かなえはゆっくりと2人に近づいた。
彩「あ、すいません。取り乱してしまって。あの、私、雪永美琴の母の雪永彩月と申します。今回はご迷惑をお掛けして申し訳ございません」
か「いいえ、自宅に誘ったのは私の方ですから、気になさらないでください」
かなえはそう言うと、奏に視線を移した。
か「あの、こっちは弟の奏です。ほら、奏、挨拶」
奏「……どうも。深堂奏です」
彩「……貴方が娘を助けてくださった方ですか?」
奏「いや、助けたといいますか。立場上助けることになったといいますか……」
か「……すいません。弟は女の人が苦手なんです」
彩「え?」
奏「申し訳ありません。なので、あまり不用意に近づかないようにしていただけると……」
奏のその言葉に、周りは妙な雰囲気に包まれた。
