おもちゃ箱 第40話
覚悟
3日後、奏はある場所に来ていた。
そこは公園だった。
あの齋川悠紀子が良く来ていたという公園。
彼女のつけていた日記にそう書いてあったと秀明から聞かされた奏は、この場所を訪れていた。
幸い、公園には誰もおらず辺りは静けさに包まれていた。
彼女の両親は、彼女の遺骨を受け取ることを拒否していた。
そこで奏は彼女の遺骨を少し貰い、この場所に撒くことにした。
彼女の思い出のひとつであるこの場所に。
奏は遺骨の入った小瓶を取り出し、蓋を開けると空に向かって振り撒いた。
遺骨はあっという間に空に舞い、やがて風に飛ばされ見えなくなった。
奏は静かに手を合わせた。
奏「……」
奏にとって、悠紀子は自分を苛めていた人物。
許すことのできない存在。
だが、だからこそ奏はこの方法を選んだ。
自分自身が変わりたいと思ったからだ。
過去の自分と向き合いたい。
死んだ悠紀子がそうだったように。
そのための決意として、悠紀子を弔うことにしたのだ。
奏「……よし」
奏はしっかりとした足取りで公園を後にした。
奏「もしもし?」
絵『奏先輩。どうかしました?』
奏「実はちょっとお願いがあるんだ」
絵『お願いですか?』
奏「2日後、また鹿児島に行こうと思うんだ」
絵『鹿児島に?』
奏「あぁ。今度は嶋野亜依子さんについて詳しく調べようかと思って」
絵『けど、彼女は今東京にいますし、結婚してからは立ち寄っていないんじゃ……』
奏「今の状況は分からなくても、篠塚さんと付き合ってた頃のことは色々と分かるかもしれない。可能性は低いかもしれないけど。それで、良かったら一緒に付いてきてほしいんだ。記者の君が一緒なら上手く話が聞けると思うから」
絵「……分かりました。ちょっとスケジュール調整しないといけないですけど、多分大丈夫です」
奏「ありがとう」
奏は電話を切って、また新たな番号にかけた。
黒『もしもし、どうした?』
奏「秀平、明後日暇?」
黒『講義も特にないし、予定もないけど……』
奏「実は、鹿児島に行こうと思ってるんだ。絵里加と一緒に。それでさ。秀平も一緒にどうかなぁと思って」
黒『俺も?』
奏「あぁ。犯人が俺の過去を知った上で齋川悠紀子を殺したんだとしたら、なにか意味があるんだと思う。早く事件を解決するためにも、皆の力を借りたい。特に、親友のお前には」
黒『……分かった。一緒に行くよ』
奏「ありがとう。時間はまた連絡するよ」
奏は電話を切った。
奏「さて、あとは……」
奏「ただいま~」
奏がリビングに入ると、美琴が真剣な顔で何かをしているようだった。
奏「……えっと、何をしてるの?」
雪『何もすることがなかったのでパズルしてました。ごめんなさい、勝手に使ってしまって』
奏「いや、途中で諦めたものだから大丈夫だけど……。良く見つけ出したね」
雪『かなえさんが持ってきてくれました』
奏「そう……(姉ちゃん、覚えてたんだ。押し入れに仕舞ってたこと)」
それは昔、奏が買ったジグソーパズルだった。
ピースが多く奏は1日で諦めてしまい、それは押し入れに仕舞われていた。
奏「あ、そうだ。君に話があるんだ」
雪「?」
奏「実は2日後、鹿児島に行くことになってるんだ。捜査のために。秀平や絵里加も一緒なんだけど。……良かったら一緒に行かない?」
雪「!!」
奏「犯人は多分、俺の過去を知ってる。そして、俺に何か伝えようとしてる。その為に齋川悠紀子を殺した。……このままだと、俺の大事な人間がまた殺されてしまうかもしれない。それだけは防ぎたい。その為には皆の力が必要なんだ。君の力も」
雪『でも、私何をしたら……』
奏「傍にいてくれるだけでいいよ。それだけで充分支えになってくれてるから」
雪「……」
奏の目は真っ直ぐ美琴を見つめていた。
その目は決意に満ちていた。
雪「……コクッ」
美琴は頷いた。
それは承諾を意味していた。
奏はそんな美琴に微笑んだ。
2日後、奏たちは真相にたどり着けるのだろうか。
