赤マント 第23話
共通点
滝藤虎道。
中学時代、翼たちの担任の先生をしていた。
生徒からは「虎ちゃん」と呼ばれ、人当たりも良く周りからの評判も良かった。
しかし、それは一部の生徒、それも問題児に至ってのことだった。
他の生徒からは「忖度先生」「えこひいき先生」と呼ばれていた。
宿題を忘れたり、授業についていけない生徒に対し、激しい罵詈雑言を浴びせたり、時には暴力を振るうこともあった。
しかし、問題行動を起こした生徒に対しては「子供のやることだ」と笑って許していた。
保護者からのクレームを軽くあしらい、校長や教頭には問題が起きても報告をしないことが多々あった。
特に学校に多額の寄付を行っているもの、お金持ちには甘かった。
小久貫一真が率いるいじめっ子グループには何も言わなかった。
小久貫一真の父、小久貫宗一郎は学校に多額の寄付を行っていた。
さらに一真が問題を起こすと、圧力をかけその事実を隠蔽した。
そのため、他の教師も彼らに逆らうことはなかった。
一真たちはそれを良いことに悪行の限りを尽くしていた。
しかし、優太が失踪したことで、彼らの人生は変わっていった。
一真は学校を退学し、繁は卒業後職に就くが一年で辞めることが多く、現在は引きこもっているらしい。
殺された人たちも順風満帆な生活を送っているとは言えなかったようだ。
虎道に至っては散々なものだったようだ。
噂によれば、翼たちが卒業後に彼の教員としての態度が問題視され、彼の行った隠蔽が次々と明らかになった。
彼は新学期を迎えることなく教師をクビになった。
それからは仕事を転々としていたらしい。
成功したのは大樹だけだったようだ。
翼「先生が亡くなったのっていつなの?」
美「え~っと、確か1年前だったって言ってたような……」
翼「1年前…。上坂拓実が仕事を辞めたのも1年前だ」
美「もし2人が繋がってるんだとしたらその上坂と黒瀬ってどういう関係なんだろうな」
翼「う~ん……」
翼は頭を悩ませた。
『ハハハッ!! 参ったか、悪党め!!』
ふと、翼の耳に声が入ってきた。
翼は声のした方に顔を向けた。
声の正体はテレビだった。
どこか海外のスーパーヒーローを真似たような男が高らかに笑っていた。
『ありがとうスッパーマン!! 助かったわ!!』
『ありがとう~!!』
そのヒーローは赤いマントをばたつかせポーズを取っていた。
美「マスター。何あれ?」
マ「良くは存じませんが一部のファンの間で人気のアニメだそうです。あのお客様もその1人だそうで、放送がある日は毎回こちらで」
美「へぇ~……」
翼「思い出した………」
美「え?」
翼「拓実、俺にスーパーマンのキーホルダーを見せてくれたんだ。『弟からプレゼントされたんだ』って。それを思い出した時、何かモヤモヤしたものがあったんだけど、やっと理由が分かった」
美「?」
翼「おんなじもの持ってたんだ。黒瀬優太が」
美「キーホルダー?」
翼「うん」
美「でもキーホルダーなんて、誰でもおんなじもん持ってんじゃないか?」
翼「いや、確か限定品で持ってる人は少ないって小久貫が言ってた。それで、あいつ黒瀬から奪い取ってた記憶がある」
翼「記憶力すげぇな。……ん? でもちょっと待て。小久貫が奪い取ったやつを何で上坂が持ってるんだ?」
翼「もし黒瀬と拓実が兄弟なら、2人でペアで買った可能性もある」
美「う~ん。可能性としては弱いな。もっと確たる物証がないと」
翼「……だよね」
美「上坂ってどんなやつだったんだ?」
翼「俺より2つ上なんだけどさ。まるで同い年と話してるみたいに直ぐに仲良くなったんだ。いつも笑顔で、生徒や先生から好かれてた。一緒に飲みに行った時は俺が退屈しないようにずっと話してくれて。『こんな良いやつが世の中にいるんだなぁ』って、スゴい嬉しかった。俊介と姫愛以外の初めての友達」
美「へぇ。会ってみたいもんだな」
浩一はコーヒーを一口啜ると机に置いた。
美「警察って上坂のことどのくらい調べてるんだろうな」
翼「さぁ? 俊介からは何も聞いてないけど……」
美「もし犯人だと思われてるなら、とっくに見つかってるか、ある程度の聞き込みもすんで網を張ってる筈。指名手配されていても可笑しくはない。……警察は本当に上坂を探してんのか?」
翼「今は疑われてないってこと?」
美「それか何かの目的で泳がしてるか……。まぁ、どっちにしろまだ安全とは言いづらいな。とりあえず、こっちでも上坂のこと調べてみるよ。警察よりも情報網多いからな。案外直ぐに見つけられるかもしれないぜ?」
翼「でも、10年前の調査はもう……」
美「まだ全部調べ終わったわけじゃないからな。その延長だと思ってくれれば良いよ。代金弾んでなんて言うつもりもないし。何より俺も知りたいからな。同級生が死んだ理由」
翼「……ありがとう」
美「あ、そう言えば言い忘れてたことがあった」
翼「?」
美「実は俺が調査する前に、警察とか住民に黒瀬のことを聞きに来たやつがいたんだ。しかも2人」
翼「え?」
美「2人とも丁寧なことに名刺を差し出したみたいでな。皆名前と顔を覚えてたよ。写真見せたら直ぐに「コイツらだ!!」って」
浩一は写真を数枚取り出した。
美「訪ねてきたのはこの2人だった」
翼「!? この2人って……」
美「訪ねてきた日は別々だったみたいだけど、目的はおんなじみたいだな」
翼「……」
翼は写真を見て驚いた。
翼「……やっぱり、話を聞かないとダメだ」
翼は強く決意した。
